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365日24時間入場無料!東北の小さな動物園が全国的に愛されている理由

2025.10.12

山形県河北町に県内唯一の小さな動物園がある。しかも町役場の真横に。

先日、NHKの「ドキュメント72時間」でも紹介され話題になった「河北町児童動物園」だ。

約70年にわたり町が運営してきた小さな動物園

365日24時間入場無料で楽しめる動物園では、ポニーやサル、クジャク、ウサギなど約30種、約130の動物が元気な姿を見せているが、その約半数は事故などで怪我をして救護された動物たち。

約70年にわたり、町が運営してきた小さな動物園ながら、今年8月までの5ヶ月の累計来園者数は約3万3600人。町の人口のおよそ2倍。

また、昨年末までに実施した動物園のリニューアルに伴うクラウドファンディングでは目標金額700万円を大幅に上回る6600万円を達成した。

田舎の小さな動物園、しかも民間ではない町営の動物園が全国的に愛されている理由はなんなのか?今回、人気の秘密を探るべく、河北町役場商工観光課の阿部久喜さん、学芸員の阿部敏計さんに話を聞いた。

阿部久喜さん(左) 阿部敏計さん

――動物園の始まりは昭和28年だったそうですが、開園のきっかけは?

町役場 阿部さん「当時この場所には保育所があり、そこの所長さんが子熊を救護して、園内で飼い始めたことが始まりです。以来、保護動物が増えていき、現在は怪我をした動物の保護を行う、山形県の「野生鳥獣救護所」にも指定されています」

野生鳥獣救護所とは傷ついた野生動物がいた場合、それを救護し、応急処置やリハビリテーションを経て自然に返すことを目的とした施設のこと。

町役場 阿部さん「たとえば、壁にぶつかって怪我をしたり、交通事故にあって動けなくなったり、生存争いに負けて負傷したり、様々な原因で傷を負った動物たちがここには運ばれてきます」

「軽い怪我であれば治った段階で自然に戻しますが、片羽を失って飛べない鳥や小さい頃から保護している猿などは野生に戻るのは困難なので、ここで終生飼育しているんです」

毎年10~20件の連絡があり、飼育員5人で様々な動物を救護、お世話をしているという。

救護した動物に加え、購入したモルモットやウサギ、ハリネズミなども園内で子供たちを喜ばせているが、お二人の推しメンを教えていただいた。

町役場 阿部さん「私はポニーのらさくらですね。10年以上ここで暮らしていますが、すごくおてんばな女の子なんです。つい先日、飼育員さんたちが体をシャンプーしてあげたのに終わった瞬間、土の上でゴロゴロ寝転びまくって台無しにしてしまって笑。そんなところもカワイイ。ニンジンを出すと歯を剥き出しにしながら近寄ってくるお顔もキュートです」

「あとは、先日、卵がかえって4羽生まれたばかりのクジャクですね。山形は朝晩の気温差が大きいのでなかなか孵化することがなかったんですが、今年は夜も暑かったせいか自然にクジャクの赤ちゃんが誕生してくれました」

学芸員 阿部さん「私は、東北の動物園ではここでしか見られないオニオオハシもオススメなんですが、長年ここにいる動物たちを見てきた者としては、シカのマザーですかね」

「とにかく人に寄ってくるんです。基本的にシカって人に近づいたりしないんですが、人が大好きみたいで人懐っこい。そこが可愛いんですよね」

ちなみに、東北ではここでしか見られないオニオオハシとは今年4月のリニューアルに合わせてお迎えしたキツツキの仲間。ブラジルなど南米の熱帯雨林に生息し、カラフルで大きなくちばしが特徴だ。

学芸員 阿部さん「リニューアルを機に東北の動物園にいない動物を目玉にしたいと思い、迎え入れました。弊園には鳥の飼育に慣れている飼育員がいること、また、華やかでカラフルな動物を目玉にしたいと思ったのも迎え入れた理由です」

今年4月のリニューアル後、入園者数も増えたと言うが、その人気をさらに後押ししたのはNHK「ドキュメント72時間」での密着だった。

民間ではない町営動物園の魅力と強みとは?

今年7月、NHK「ドキュメント72時間」で紹介された河北町児童動物園。3日間にわたり、24時間無料の動物園とそこを訪れる人との物語が大きな話題となった。

町役場 阿部さん「放送を機に入園者も増えました。今まではお子さんや家族連れが多かったんですが、加えて高齢者施設で暮らす方々や年配のご夫婦など幅広い年齢層の方がお見えになるようになりました」

入園者増はたしかにありがたい話。だが、河北町児童動物園は入場無料で24時間開園している。気になるのは運営費やセキュリティ面だが。

町役場 阿部さん「たしかに去年あたりから野菜の値段が上がっているので、動物たちのエサ代にも影響が出てきていますね。一番お金がかかるのがエサ代なので」

「少しでも節約するために、2日に1回はスーパーを周って惣菜を作る際に残った食材を分けてもらったり、ご近所の方に規格外の捨てるしかない野菜や果物を分けて頂いたりしています」

「草食動物はそれでもいいんですが、フクロウやトビなど肉食の猛禽類のエサについては購入するしかないんです。この子たちが我が動物園では一番お金がかかってますね」

それでも、町営だからこその意地と強みがある。

町役場 阿部さん「民間であれば当然採算を考えるとは思うんですが、70年前からこの地で親しまれてきたこともあり、今のところは入園料は考えていません」

「無料だからこそ、幼稚園の遠足などで地域の方々に気軽に楽しんでもらえてますし、千葉や神奈川から車で来られる方もいらっしゃいます。私たちの動物園は地理的にも河北町の中心。気軽に立ち寄れるここを拠点に町全体を楽しんでもらって、賑わいが生まれるような場所になってほしいんです」

そして、もう一つの特長は24時間年中無休。いわゆる都市公園だけに、園にはゲートがない。いつでもどこからでも入れるため、深夜の動物たちが楽しめる点も魅力だ。

町役場 阿部さん「飼育員さんやスタッフは夕方5時で業務終了するので、案内する人はいませんが夜の時間帯でも自由に入って動物たちを見ることは可能です。もちろん、監視カメラも設置しているので動物たちの管理も万全です」

「特に夜行性の動物、アナグマやタヌキ、フクロウなどは日中見られないぐらい活発に動き回っていることも多いと思うので、また違った楽しみ方もできるかと思います」

ふらっと立ち寄れる動物園から町の活性化を目指す

一般的な動物園とは違い、河北町児童動物園で暮らす動物たちの約半数が救護された動物ばかり。そのため、気を遣う部分も多いという。

学芸員 阿部さん「ニホンザルは4匹いるんですが、この動物園で唯一の特定動物(危険動物)なので、常に注意して見守っていますね。中には50年ぐらいこの地で生活している長老みたいなおサルさんもいるので大事にお世話しています」

少数精鋭で切り盛りしている町の動物園が、今後目指していくものとは?

町役場 阿部さん「動物たちが暮らしている檻が昭和始めにできたものがほとんどなので、全部作り直したい気持ちはありますが、なかなか難しいかなと笑。あとは、隣接する役場の駐車場で様々な団体がイベントを開催してくれて、動物園以外の部分で集客してくださっているのでそれをもっと展開していきたいと思っています」

最後に、町が運営する動物園がなぜここまで愛されているのか?魅力を聞いた。

町役場 阿部さん「たとえば、学校帰りにふらっと立ち寄れる場所だったり、仕事のために役場に来た人がなんとなく時間をつぶせたり、そんな動物園てなかなかないと思うんです。それが、子供や孫世代にもずっとつながっていて、途切れることなく町の中心で癒しを与えている、そこが魅力なのかと。わが町になくてはならない場所です」

学芸員 阿部さん「やはり、身近な動物園という点ですかね。私は宮城県の八木山動物公園に長く勤めていましたが、通勤や散歩ルートに動物園があるのは初めてだったんです」

「動物園に行く時は家族で、『よし行くぞ!』って感じで、前日から盛り上がって行くような場所だったと思うんですが、ここは違う。ふとした時にそばにいてくれる動物園という感じがします。それも、河北町という町や町民に支えられているからこそ。アットホームな雰囲気が一番の魅力だと思いますね」

現在、河北町児童動物園では、クラウドファンディング型ふるさと納税を実施中。

動物たちがより幸せに暮らしていけるよう、「救護動物の応急処置のための医薬材料費」「飼育に使用する消耗品やエサ代」「施設の修繕や維持管理」などに寄付金を活用するという。気になる方はぜひチェックしてほしい。

ふるなびクラウドファンディング
ふるさとチョイスGCF

取材協力
河北町児童動物園
河北町児童動物園 公式X @kahoku_zoo

文/太田ポーシャ

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