
2025年10月4日に行われた自民党総裁選挙で、高市早苗氏が新総裁に選出されたことを受け、週明けの東京市場では株価が上昇。取引時間内での最高値を更新した。
ちなみに戦後の歴代首相で在任中に最も日経平均株価の騰落率が高かったのは、佐藤栄作氏(第61代〜第63代)の207.1%。その在任期間は2798日(1964年11月〜1972年7月)で、これは安倍晋三氏(第2次、第96代〜第98代)の2822日に続く歴代2位となっている。一方、安倍氏は騰落率では132.9%で歴代3位にランクされている。
では高市新総裁の下、政局と市場はどう動くのか。三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩 氏による分析リポートが到着しているので概要をお伝えする。
高市氏の総裁選勝利と記者会見での発言を受け、6日の国内市場で高市トレードが広がる展開
10月6日の国内市場では、高市早苗自民党新総裁の誕生を受けて株高と円安が進行するなど、いわゆる「高市トレード」の様相が強まった。
日経平均株価は一時4万8150円04銭まで上昇し、ドル円レートは日本時間午後2時半頃に、1ドル=150円40銭台をつけた。また、日本国債の利回りは、2年から5年にかけて低下が目立った一方、7年以降、超長期では上昇し、利回り曲線はスティープ(急勾配)化した。
10月4日に投開票が行われた自民党の総裁選挙では、小泉進次郎農林水産相が優勢とみられていたため、高市氏の勝利は市場でサプライズと受けとめられた模様だ。
また、高市氏は総裁選後の記者会見で、物価高対策に力を注ぎたい、ディマンドプル型のインフレとなるまで日銀とのコミュニケーションを密にとっていく、などの考えを表明したこともあり、これらが高市トレードに弾みをつけたとも考えられる。
■株式市場では高市氏の政策に沿うAI・半導体関連、国防関連、原発関連などに注目が集まる
株式市場では、高市氏が掲げる政策に沿った銘柄に注目する動きがみられる。改めて高市氏の政策を確認すると、「経済安全保障の強化と関連産業の育成」を掲げており、経済安全保障に不可欠な成長分野として、AI(人工知能)や半導体などを挙げている。
このほか、「「防衛力」と「外交力」の強化」、「エネルギー・資源安全保障の強化」、「サイバーセキュリティ対策の強化」、「健康医療安全保障の構築」なども主要政策となっている。
これらの政策を踏まえた場合、国内の株式市場では、経済安全保障に不可欠な成長分野として挙げられた、AI・半導体関連には物色が広がりやすいと考えられる(図表1)。

また、防衛力の強化に関しては、重工や防衛システムなどの国防関連、エネルギー・資源安全保障の強化に関しては、原子力発電関連や核融合発電関連が意識されやすく、サイバーセキュリティ関連、介護・医療関連も市場の話題だ。
■株価には過熱感、目先は高市氏が自公連立を維持し野党との連携を上手く進められるかが焦点
日経平均は本日も続伸し、寄り付き後、ほどなく4万8527円33銭の高値をつけた。節目の4万6000円、4万7000円、4万8000円を一気に突破したことで、相場の過熱感をみる「RSI(相対力指数)」は直近で約78%と、買われ過ぎとされる70%水準を超えている(図表2)。

日経平均は、4万8000円台に乗せたことで、目先は上昇一服も予想されるが、高市氏の政策への期待が維持される限り、大きな崩れは避けられる公算が大きいのではないか。
高市氏が物価高対策を実行するにあたっては、年内に2025年度の補正予算を国会で成立させ、2026年予算を閣議決定する必要があるが、足元の日経平均急騰は、これらがスムーズに進むことを前提とした動きのようにも見受けられる。
なお、公明党は高市氏の保守的な政策などに懸念を示しているとの報道もあり、高市氏が自公連立を維持し、野党との連携を上手く進めることができるかが、この先の1つの焦点になるであろう。
構成/清水眞希