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実は本音がバレている?AIが「言葉の裏側」を見抜ける理由

2025.10.10

政治家や有名人の〝失言〟が時折話題になることがあるが、そうした言説は思わず出た〝本音〟と解釈されることが多いだろう。

そもそも知らない言葉を口にすることはできないわけであり、〝失言〟として出てきてしまった言葉は、その良し悪しに関わらず普段から当人の頭の中でいつでも浮かび上がる、いわば〝スタメン〟となっている言葉であろうことは想像に難くない。

抑圧している〝本音〟が出る「フロイト的失言」とは?

精神分析学の祖、ジークムント・フロイト(1856-1939)は、失言は単なる偶然の間違いではなく、個人の意識が瞬間的に散漫になった時に現れる抑圧された思考や感情の表現であると説明し、そうした失言のことは「フロイト的失言」と呼ばれるようになった。まさに思わず出た〝本音〟のことである。

身近な人物の能力や容姿に嫉妬することもあるかもしれないし、逆に自分が嫉妬されることがあるかもしれない。いずれにしても普段はお互いにそんなそぶりを見せることはないのだが、そうであるからこそ嫉妬の感情を表現する〝本音〟の言葉は抑圧されており、握り締めたゴムボールのように反発力を強めている。

だからこそ何かのきっかけで意識的な抑圧が解かれた時、勢いよく〝本音〟が飛び出してしまうことがあるといえそうだ。

普段は抑圧している言葉でなくとも、よく使う〝スタメン〟の言葉や言い回しはその当人の人となりををよくあらわしていることは間違いないだろう。ストレートな〝本音〟ではなくとも、その言葉遣いからもじゅうぶんにその当人の〝本音〟に迫れると考えてもおかしくはない。

言葉は〝脳の窓〟である

「私たちの思考、感情、そして行動は言語に反映されるのです」と、米ワシントン大学の心理学者、ジョシュ・オルトマンズ氏は語り、言葉は〝脳の窓〟であり、どんな言葉を選んでどんな風に話しているのかは、当人の性格と精神状態について多くを物語っていると説明する。

そしてこの分野でAIが重要な役割を担うことが見込まれているのだ。

オルトマンズ氏をはじめとする国際的な研究チームが今年7月に「Advances in Methods and Practices in Psychological Science」で発表した研究では、心理学者が言語に隠された手がかりを発見するのを支援するための大規模言語モデル(LLM)を使ったAIツールの開発の可能性が示唆されている。

言語はさまざまな方法で心理状態を伝えることができる。深い会話であっても、XやFacebookへの気軽な投稿であっても、言葉の選択は大きな意味を持っている。オルトマンズ氏はキャリアの初期に、ソーシャルメディアの投稿における言葉の選択が、経験への開放性、神経症傾向、協調性、誠実性、外向性といった「ビッグファイブ」と呼ばれる性格特性をどのように反映しているかを研究した。

話し方も重要なヒントとなっていて、オルトマンズ氏によればゆっくり話すのはうつ病の症状の傾向である可能性があり、早口すぎるのは不安障害と関連している可能性があるということだ。また話す速度だけでなく、音量、トーン、ピッチも手がかりとなり得る。

会話の中に埋もれている潜在的な情報が膨大にあるため、心理学者たちは長らくコンピューターによる音声分析の活用を模索し、20年以上前に「Linguistic Inquiry and Word Count」というソフトウェアを開発した。これは言葉に基づいてさまざまな心理的側面をスコアリングできるプログラムで、時とともに少しずつ改良されてきたのだが、AIの登場によって飛躍的な向上が達成できる可能性が高まったとオルトマンズ氏は説明する。

バイアスの問題への対処

AIの活用によって、従来のコンピュータモデルよりもはるかに高速で、徹底的かつ正確なツールが開発できる可能性が高いということだが、オルトマンズ氏はAIにもリスクがあると警告した。

AIはインターネット上の情報に基づいて学習することが多いため、バイアスがかかっている可能性があり、こうしたバイアスに対処しなければ、特定の文化における話し方の違いが、精神疾患の兆候として誤って分類される可能性は今のところ排除できないという。

このようなバイアスの問題を回避するには、AIモデルを多様な患者集団で訓練する必要があり、オルトマンズ氏はセントルイスの多様性を代表する1600人以上の成人を対象とした継続的な調査である「SPAN研究」を通じて、長年にわたって収集された数百時間におよぶインタビューを分析している。

「AIモデルが各グループを公平に扱うようにするために、白人と黒人の参加者の話し方のパターンを調べることに特に興味があります」(オルトマンズ氏)

AIに〝本音〟を簡単に知られてしまう時代へ

オルトマンズ氏はほかにもいくつかの重要な疑問が今後浮上してくると認識している。書き言葉における言葉の選択が話し言葉における言葉の選択とどのように異なるのか、あるいは人の心理を真に理解するにはどれだけの量の言葉が必要なのかなどについてはまだ明確ではない。

「私たちには多くのアイデアがあり、やるべきことがたくさんあります」と彼は述べ、AI分野における革新のスピードを考えると、早く答えが見つけられるのではないかと期待している。

「企業はすでにAI心理評価ツールを病院や臨床医に販売していますが、それらがどれほど効果的に機能するのか、またどれほど徹底的に評価されているのかは私には分かりません。この種の技術は心理学分野にとって大きな進歩となる可能性がありますが、慎重に行う必要があります。賢くならなければなりません」(オルトマンズ氏)

文章や話からその人物の正確な人格特性を暴き出すAIの登場は近いのだろうか。AIに〝本音〟を簡単に知られてしまうのは少し怖いようにも思えるが、セラピーへの応用なども考えられることから、AIを活用した心理学研究の進展に期待すべきなのだろう。

※研究論文
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/25152459251343582

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北海道生まれ東京育ち。学業ドロップアウト後、小説家を志しつつ広告代理店営業マン、任期制陸上自衛官、家電販売員などを経て経て出版業界へ。アスキーなどで編集者として勤務した後、フリーライターとして活動。科学から心理学まで幅広いテーマを執筆。ネット上の研究論文を読むのが趣味。大型自動二輪免許を持っている。 X: @nakata66shinji

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