
ある日のことである。筆者が自宅(静岡市の公営住宅)の前で何気なく撮影した1枚の写真に、すっかり感動してしまった。
これはiPhone 16eで撮影したもので、時間帯は夕暮れ時、日没寸前の頃合いである。照明をつけなければ足元も見えづらい状況だが、それでも——いや、それを逆手に「エモい」感じの1枚を撮ってくれたのだ!
全体の調光を団地の棟の照明と合わせた画で、右手には沈みゆく夕日が最後の光を放っている。オンデバイスAIによる補正は当然あるだろうが、それを加味しても「自分の手でこんな写真を撮影できるのか!?」と胸を躍らせずにはいられない。
「16シリーズの廉価版」は、しかしながらそのカメラは「廉価版」という言葉で片付けられないほどのパフォーマンスを発揮する。
まるで昼間のような明るさに自動補正
貧乏人の筆者は、生まれながらにして一軒家とは縁がない。
今も住まいは公営住宅で、しかも相当に年季を重ねている建物。このあたりに虚勢を張っても仕方ないから、素直にカミングアウトしている。ただ、それは決して悪いことではなく、公営団地の敷地というのは結構広い。その中を(誤解されることを覚悟の上で書けば)自由に歩き回りつつ、様々な実験ができるのだ。
それは写真撮影の場合、被写体に困ることはないという意味である。
なお、下の写真は「駐輪場のバイクにピントを合わせるか」「空にピントを合わせるか」で、ここまで明るさが変わってくるという例である。
iPhoneの場合(というより、大抵のスマホカメラはそうだが)、ピント合わせの対象物に合わせて明るさも自動調整する。が、それにしてもここまで大胆に補正してくれるのかiPhone 16e……。まるで昼間のような明るさじゃないか!
これを一眼レフカメラ、ましてやフィルムカメラでやろうと思ったら、撮影者に技能と知識が必要だ。
もちろん、技能と知識が必要だからこそフィルムカメラは今でも芸術志向の写真撮影に用いられる。が、大抵の人は「ISO感度」とか「F値」などという用語は知らないはずだし、それを手動で設定してなおかつ失敗の許されない一発勝負……という博打のような撮影に興味を持つことはないだろう。
だいいち、フィルムカメラ撮影を趣味にしている筆者ですら、時折「一眼レフカメラで撮るの面倒くせぇなぁ」と思ってしまう瞬間がある。そんな時には、やはりスマホの出番だ。
こんな美しい街に住んでたのか!?
日を改めて、こちらは日没寸前の静岡市中心部。
いよいよ夜に突入しようという静岡の街並みを、iPhone 16eで撮ってみようという算段である。
これは全国的に有名な郵便ポストだが、やはり全体的に明るく撮れている。が、そうでありつつもこの1枚がちゃんと「日没間近の光景」に仕上がっている点にも注目するべきだ。「程よい暗さが残っている」と表現するべきか。
センサーサイズがより大きいiPhone 16 Proで撮影すればもっと明るくなるそうだが、夕暮れ時を撮影するというのであればこのくらいがちょうどいいのでは?と感じてしまう。
下の写真は、さらに時が進んでいよいよ夜を迎えようとする静岡市内の景色である。
静岡市内は規模としては決して大きくはないが、それでも日本の都市部にあるべきものがほぼ全て存在する。それなりにチューンされていそうな車が停車している場面もよく見かける。iPhone 16eのカメラは、その様子を伝えるには十分過ぎるくらいの表現力と判断してもいいだろう。
上の写真は、今回の撮影のベストショットと筆者が判断している1枚である。
もうそろそろ闇に包まれようとしている空と、それに先駆けて地上を照らすセブンイレブンの明かり、赤信号、車のライトが程よいバランスで表現されている。どこか幻想的な雰囲気すら醸し出す光景だ。自分はこんな美しい街を住まいにしているのか——。
イーストマン・コダックが開拓した道
この記事の執筆を始める少し前に、イーストマン・コダックが再び経営危機を迎えているという報道を目にした。
イーストマン・コダックの創業者ジョージ・イーストマンは、1854年生まれの人物である。イーストマンが20代の頃の写真と言えば、撮影直前にガラス板に薬剤を塗布してようやく準備ができるという代物で、カメラマンは常時薬剤を携帯していなければならなかった。イーストマンはそのような手間をショートカットできる写真乾板を発明し、さらに誰でも操作できるロールフィルム式カメラを低価格で発売した。これはカメラそのものよりも、フィルムの販売と現像で利益を得るビジネスモデルである。「カメラはプロのカメラマンのもの」だったのが、イーストマンの手により「一家に1台あるもの」となったのだ。
Appleは、かつてのイーストマン・コダックが開拓した道をそのまま進んでいるのではないだろうか。
それまでプロかハイアマチュアでなければ撮影できなかったような写真を、小学生でも手軽に撮れてしまう時代。iPhoneの画面の向こうから、我々は「すぐ目の前にある未来」を見通すことができる。
取材・文/澤田真一
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