小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

厚揚げがメインの「トーフカレー」?海外で進化する日本のカレーライス最前線

2025.10.09

かつて日本の輸出品といえば自動車やAV機器などの「工業製品」ばかり。だが現在ではラーメンなどの「食べもの」やアニメなどの「ポップカルチャー」も海外で人気を博している。

では世界各国では実際にどんな日本文化がトレンドとなっているのか。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターたちの集まり「海外書き人クラブ」が、居住国や旅先で出会った「日本文化」を紹介する。

基本形は「具なしルー」の「カツカレー」

オーストラリアで売られる日本風カレーは「カツカレー」が基本

海外で日本風のカレーライス(以下、「ジャパニーズカレー」と称する)がブームになっているということを知っている人も多いだろう。今回はオーストラリアからその「最前線」という「最新情報」をお伝えしたい。

その前にまずはオーストラリアのジャパニーズカレーの「基本形」をおさらいしておこう。最大の特徴は「ルー(スープ)」には肉・野菜も含め具材がほとんど、またはまったく入っていないこと。つまり「具がゴロゴロ」な日本の「家庭のカレーライス」とはまったく異なる。ただ日本最大級のカレーライスチェーン店である「カレーハウスCoCo壱番屋」のカツカレー系と同じスタイルといえる。

そしてもう一つの特徴はほとんどの場合、揚げ物がつく「カツカレー」である点。つまりジャガイモ、ニンジン、タマネギなどがたっぷり入った「日本の家庭のカレーライス」に比べて、「野菜度」は極めて低い。というかほぼゼロ。

ところが「日本食=ヘルシー」神話で、この「野菜なしカツカレー」を健康的な食べ物と思い込んでいる、または思い込もうとしているオーストラリア人も多い。この「日本食ならなんでもヘルシー理論」は、「居酒屋ブーム」の記事(https://dime.jp/genre/2025127/)でも書いたが人気お笑いコンビ「サンドウィッチマン」の「カロリーゼロ理論」に通じるものがある。

容器に関していうと独立した店舗ではカレー皿だが、フードコートなどでは使い捨ての紙製の丼が用いられることも多い。よって「カツカレー」というよりも「カツカレー丼」に近い見た目になる。

こちらは使い捨てではない平皿タイプだがいわゆる「カレー皿」とはちょっと違う。本来は皿の右端にはキャベツとニンジンのスライスが盛られるが、客本人の希望で「ライスをダブル」になっている。

辛さの調整に関しても日本とは異なる。日本では「2倍」とか「3倍」とか注文して店のほうが調理して提供してくれるが、オーストラリアでは七味唐辛子がフードコートの商品受け取りカウンターまたは店舗のテーブルに置かれていて、客が自分で好きなだけかけるというスタイルが一般的だ。

丼風の使い捨て紙容器と「七味で辛さ調整」もオーストラリアの「ジャパニーズカレー」の特徴だ。

「ベジタリアン向け」の「トーフカレー」とは?

「野菜なしカツカレー」が基本だが、その中でも数種類のバリエーションがある店がほとんどだ。

日本で何の断りもなしに「カツカレー」と言われれば「トンカツ」、特に「ロースカツ」を頭に浮かべる人が多いだろう。もちろんオーストラリアにも「ポークカツカレー」という名称で存在する。

だがそれよりも人気なのが「チキンカツカレー」。これまた「ポークよりもチキンのほうがカロリーが低くてヘルシー」という理由からだと思われる。「チキンカツカレー」と「唐揚げカレー」の両方を提供している店もある。

さてオーストラリアではどんなレストランでも「ベジタリアン」向けのメニューも用意していることが多い。実際にベジタリアンの人も多いし、「今日は菜食にしたい」というリクエストにもこたえるためだ。

今回のテーマであるジャパニーズカレーでもベジタリアン向けのメニューが用意されていることがある。それは「トーフカレー」だ。その名称からして「えっ? 冷ややっこを乗せたカレーライス?」とビックリする人もいるかもしれないが、要は「厚揚げカレー」である。

トンカツやチキンカツ、唐揚げとは一味違うが、確かに揚げ物。しかも主な原材料は大豆のベジタリアンメニュー。ベジタリアン向けの揚げ物カレーにするならまさにうってつけ! ……と思われるかもしれないが、個人的に挑戦した経験ではオススメはしない。厚揚げとはいえ「トーフとカレー」。「合わないそう」というのはご想像いただけるだろう。

この「ベジタリアン向けカツカレー」に関しては、トンカツそっくりの「プラントベース(植物性)のカツ」などを用いるなど、まだまだ改善の余地はあると言えそうだ。

「焼きカレー」風や「ちょっとカレー」も登場!

「厚揚げカレー」以外にも進化系メニューはいくつかみられる。その一つがカレーライスの上にチーズを乗せて上からバーナーで炙ったもの。「チージィーカレーグラタン」と呼ばれたりする。「チージィー」とはこの場合「チーズっぽい」とか「チーズたっぷりの」くらいの意味だ。

使い捨ての平たい紙皿で提供される「チージィーカレーグラタン」。

私は最初にこの料理に出会ったとき、「この見た目のどこがグラタン?」と疑問に思ったが、それはこちらの勉強不足。フランスでは必ずしも「オーブンに入れて焼く」必要はなく、「焼いて焦げ目がついた料理」であればすべて「グラタン」と称することができるらしい。

「チージィーカレーグラタン」という名称だが、日本の「カレーグラタン」とも「チーズカレー」ともやはり違う。一番近いのは「焼きカレー」だろうが、そちらが「オーブンで焼く」ことが多いのに対して、オーストラリアで見たものは「バーナーで表面を炙る」だけのものがほとんどだ。

もう1つの進化系というか最近のトレンドは「ちょっとカレー」。「唐揚げ定食」や「トンカツ定食」などにカレーのルーが別皿でついたものだ。そのルーの量もかなりのもので「ちょっと」と範疇を明らかに超えている。

「ちょっとカレー」がついた唐揚げ定食。

これは「目からうろこ」であった。「唐揚げカレー」であれば食べるのはずっと「唐揚げカレー」。だがカレーが別皿に乗った「唐揚げカレー+ちょっとカレー」なら、まずは「唐揚げとごはん」味わったあと、「カレーとごはん」に移行し、最後は「唐揚げカレーとごはん」で締めるという「味変」を楽しめるのだ!

「箸を使えるぞアピール」も激減

食べ方にも変化が生じている。というよりも正常に戻ったといったほうがいいかもしれない。

というのは今から10年前くらいまではカレーライスを「箸」で食べるオーストラリア人がかなりいた。「なぜわざわざ箸で?」と日本人なら思うが、彼らは「私は箸をうまく使えるぞアピール」がしたかったのだ。つまり知ったかぶりである。……失礼、カレーだけに辛口になってしまった。

ところが近年この「私はカレーライスだって箸で食べられるぞアピール」がめっきり見られなくなった。その大きな理由が日本を訪れたことがあるオーストラリア人の数が急増したからだろう。

最近では普通にスプーンで食べる人がほとんどだ。

そう、ジャパニーズカレーライスの本場のジャパンで「えっ? カレーライスってスプーンで食べるものなの?」と多くの人たちが衝撃の事実を知ったのだ。

ルーの味は日本と同じでも、ちょっと違うところもあるオーストラリアの「ジャパニーズカレー」。日本の国民食の一つであるカレーライスが世界でどのように進化するのか、アツく見守りたい。

文/柳沢有紀夫
写真/Taiga オーストラリアを拠点に活動するIT系なんでも屋。時計と旅と猫が好き。世界115ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員。

Author
世界約115ヵ国350名の会員を擁する現地在住日本人ライター集団「海外書き人クラブ」の創設者兼お世話係。『値段から世界が見える』(朝日新書)などのお堅い本から、『日本語でどづぞ』(中経の文庫)などのお笑いまで著書多数。オーストラリア在住

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2025年9月16日(火) 発売

DIME最新号は、「あなたの知らない ポケポケの秘密」。開発の舞台裏やヒットの軌跡、今からでも楽しめる効果的な遊び方まで、知ればもっとポケポケが楽しくなる“ポケポケ現象”の秘密を徹底解明!特別付録は、BIGサイズの超限定「フォルクスワーゲンBUZZトート」!

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第6091713号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。