
2025年10月6日の東京株式市場における日経平均株価は、一時2100円超の上げ幅となり、4万7800円台に到達。取引時間中の最高値を更新した。これは、自由民主党の新総裁に積極財政派の高市早苗氏が選出されたことによる期待感の表れと言われている。
そんな高市総裁誕生が及ぼす国内金融市場への影響に関する考察リポートが三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川 雅浩 氏から届いたので概要をお伝えする。
高市氏は物価高対策で、中小企業支援や診療報酬引き上げ、ガソリン・軽油値下げなどを優先
自民党の総裁選挙は10月4日に投開票が行なわれ、高市早苗前経済安全保障相が第29代総裁に選出された。高市氏は同日午後6時から記者会見を行ない、自身の政策について基本方針を述べた。
今回のレポートでは、「物価高対策」、「財政政策」、「金融政策」、「野党との連携」に関する高市氏の発言のポイントを整理し、国内金融市場への影響について考ええみたい。
物価高対策では、中小企業・小規模事業者、農林水産業への手当てとして、地方向けの交付金を活用するとし、上積みの可能性も言及した。
また、診療報酬や介護報酬を補正予算で早期に引き上げる考えを示し、ガソリン税と軽油引取税の旧暫定税率は廃止。適用までは補助金を活用すると述べた。
このほか、給付付き税額控除は実施に時間がかかる、消費税減税は選択肢として放棄しないとし、すぐにできる対策を優先すると発言している。
■財政はワイズスペンディングの方針、金融政策は政府が責任を持つとして日銀を一定程度けん制
財政政策では、財政健全化が必要ないといったことは一度もないと述べ、純債務残高の対GDP比を徐々に引き下げていく考えを示した。
ただし、今は多くの人々が物価高で困っているため、ここはしっかりと手当てすると明言し、物価高対策を優先させる方針を表明。また、投資によって需要が生まれ、税収が増える「ワイズスペンディング(賢い支出)」が自分自身の方針であると説明した。
金融政策では、財政政策も金融政策も責任を持つのは政府であると指摘し、日本経済は今、ギリギリのところにあるとの見解を示した。
また、コストプッシュ型のインフレを放置し、デフレではなくなったと安心するのは早く、賃金上昇で需要が増え、緩やかにモノの値段が上がるディマンドプル型のインフレがベストであると主張。そして、その状況になるまで、日銀と密にコミュニケーションをとると述べ、日銀を一定程度けん制した。
■市場は株高、円安、国債利回り曲線スティープ化へ、持続性は野党との連携進展などを要注視
野党との連携では、考え方の合う政党と連立ができたらうれしいと述べ、具体的な項目として、憲法の改正、外交政策、安全保障政策、財政政策を挙げた。
野党のなかで、連立の相手先としてよく名前の挙がるのは、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党だ。前述の項目に関する各党の方針をみる限り(図表1)、日本維新の会と国民民主党が、連立の交渉相手になる可能性が高いように思われる。

高市氏の発言を受け、国内金融市場では、財政支出期待による株高、早期利上げ観測の後退による円安、そして国債利回り曲線のスティープ(急勾配)化という、いったん大きな反応が予想される。
ただ、これらの動きの持続性については、野党との連携の進展度合いや、実際の経済対策の規模を見極める必要があり、この先の政治日程が特に重要になってくると考えている(図表2)。

構成/清水眞希