
北アルプスの麓、白馬村で9月に開催された「白馬クラシック国際」トレイルラン。
登山経験者でも息をのむようなゲレンデの直登やアップダウンが待ち受けるこの大会が用意するのは、50km、29km、12kmそれぞれソロ・ペア、そして6kmファミリーキッズというバラエティに富んだ種目。
トレランはドがつくほどの初心者である筆者は、29kmソロに挑むことにした。
受付を済ませた朝から胸はドキドキ。相棒に選んだのは、ガーミン『FORERUNNER 970』。
心拍計を覗くと、まだ走っていないのに普段より高め。緊張が数値に現れていた。スタートラインに立ち、地元中学生の吹奏楽部が奏でる音楽を聴きながら、まずは集団の流れに身を任せることにした。
頼れる相棒、ガーミン『FORERUNNER 970』とは?
ここで少し、今回の相棒について紹介したい。ガーミン『FORERUNNER 970』 は、同社のランナー向けGPSウォッチのフラッグシップモデル。価格は12万1800円。
軽量ボディと高精細なAMOLEDディスプレイを備え、マラソンやトレイルといった長距離レースを想定した機能が満載されている。
・最長約20時間稼働のGPSモード
・山岳地帯でも精度の高い位置情報
・スタミナ予測やコースナビゲーション機能で山道も安心して走れる
などの特徴を持ち、本気のランナーをターゲットにしながら、数字で体調を把握したい市民ランナーにとっても安心感を与えてくれる存在だ。
序章で早くも呼吸乱れる・・・。ペースガイドを覗き込む冷静さが大事
3km地点。まだ全体の1割しか満たない距離に「29km」という数字の重みを実感する。だが、FORERUNNER 970の「ペースガイド」「心拍数」を確認し、慌てず早歩きに切り替える。
傾斜のある山道を勢いよく駆け抜けるランナーもいたが、自分は無理せず心拍ゾーンを維持するという指針を持った。最初のエイドではアミノバイタルの濃さに少し戸惑いながらも、ガブガブと補給。徐々に緊張がほぐれていった。
6kmを越えるとコースはスキー場へ。リフトの下をひたすら登らされる。上からは観光客が颯爽と通り過ぎる。
彼らの視線が「大変そうだね」と言わんばかりに突き刺さる・・・。
二つ目の山の恐怖。すれ違うランナーに励まされて
20km手前。二つ目の山の直登が現れる。「こっからまた登るのか…」と気が重くなる。だが、ここで頼りになったのが「ナビゲーション機能」だ。コースデータを事前にウォッチに入れていたため、どこで折り返し、どこにエイドがあるのかが把握できる。
エイドステーションでは「今までで一番美味しい」と思えるおにぎりに出会い、冷たい水を頭から浴びる。これもまた、数字では計測できない、最高のリフレッシュだった。
FORERUNNER 970の「高度グラフ」を見れば、今どこまで登ったかが一目でわかる。ゴールの高度との差を確認すると「あとどれくらい登るのか」という気持ちの整理がつき、孤独な登りにも納得感が生まれた。
22km地点。直登が延々と続き、心は折れかける。だが折り返しで下ってくるランナーたちが「頑張れ!」と声をかけてくれる。見知らぬ誰かの声援に、不思議と足がまた動き出す。
FORERUNNER 970が示す「心拍ゾーン」は安定している。体は限界に近いと感じても、数値はまだ「走れるぞ!」と告げてくる。外からの声援と手元のデータが、孤独な戦いを続ける私を支えてくれたと思う。
最後の下りと、足ガタガタのゴール
25kmを過ぎ、下りに差し掛かる。だが「下りは楽」という予想は甘かった。使う筋肉が違い、前ももが悲鳴を上げる。
もう走れない。よちよち歩きになってしまう。FORERUNNER 970を見ると、「え?ペースゼロ!?」
そんな、必死に歩いている人間に、ゼロ認定は容赦がなさすぎる!笑
だが、この手元のスパルタっぷりが最後、心に火を付けたのも事実。残り2.7km。ペース0上等、今はただゴールを目指すのみだ。
ゴール直前、声援のシャワーに包まれる。足はガタガタ、体力は尽き果てていたが、FINISHゲートをくぐった瞬間、ウォッチの「完走タイム」が画面に現れる。その数字を見た瞬間、胸の奥からこみ上げるものがあった。
「え、結局31km近く走ってたの?!」
29kmという数字に不安を抱きながらスタートしたレース。だがゴール後、FORERUNNER 970のログを見て思わず笑ってしまった。実際に走った距離は31km弱。ルート変更の影響で、知らぬ間に30km超えに挑戦していたのだ。
不安が笑いに変わる瞬間。これもまた、データが残るからこそ得られる体験だった。
トレイルランは孤独だ。でも、手元に信頼できる味方がついていれば、その孤独は挑戦の醍醐味へと変わる。次にどんな〝予想外の距離〟であっても、FORERUNNER 970と一緒なら、きっと走り抜けられるはずだ。
文/手塚祥太