
レノボ傘下のモトローラ・モビリティ・ジャパンは、新たな縦折りスマホ「motorola razr 60」シリーズの日本展開を発表。スタンダードモデルのmotorola razr 60は10月10日、上位モデルのmotorola razr 60 ultraは2025年12月に発売となる。
従来より採用があったドコモ、ソフトバンクは、それぞれ標準モデルを「motorola razr 60d(ドコモ版)」、「motorola razr 60s」として発売する。加えて、数年ぶりの取り扱いとなるKDDIでは、上位モデルのmotorola razr ultraが発売される。
世界の折りたたみスマホ市場を牽引するモトローラが好調のわけ
モトローラは、世界の折りたたみスマホを牽引するメーカーだ。折りたたみスマホNo.1の地位を獲得しており、グローバルでは8四半期連続での成長を達成。2025年度第1世半期の収益は、前年同期比で14%増、出荷台数は6%増と、成熟しつつあるスマホ市場においても、好調を維持している。
特にアジアパシフィック地域での成長が著しく、日本では収益ベースで前年比371%増、納品台数は423%増、出荷台数は580%増となる。これは、モトローラと同じレノボグループ傘下となったFCNTの数字が加算されているための飛躍ではあるが、モトローラ単体で見ても、数字は伸びているとのことだ。
グローバルでは、スワロフスキーとのコラボアイテムを展開するなど、ライフスタイルブランドとしてのアピールをするなど、折りたたみスマホの利点であるコンパクトさ、ファッショナブルなイメージを強く打ち出す戦略を取る。日本においては、特に知名度の低い若年層に向けたブランド認知度向上のため、目黒蓮氏をブランドアンバサダーに据え、積極的なアピールを続けている。
収益や出荷台数の伸び率の中、注目なのが、25%がiPhoneからの乗り換えという点だろう。長くiPhoneを使ってきたユーザーが、「飽きてきた」といった理由から、Androidスマホへの乗り換えを検討する中、折りたたみというアップルにないプロダクトをチョイスする傾向があるように見える。
iOS、Android OSのどちらも成熟し、コアな設定をしない、日常的な使い方であれば、どちらでもストレスになりにくい点も要因だろうが、成長率、ブランド認知度普及のためのアプローチなど、端末以外の要素においても、モトローラは注目するべきメーカーだ。
「マルチAIプラットフォーム」として動作する独自AIのmoto ai
各社が積極的に取り組むAI機能として、モトローラは自社AIを「moto ai」として搭載する。ユニークなのが、独自の機能に加えて、GeminiやPerplexity、Copilotといった各AIとシームレスに繋がり、適材適所で活躍させる「マルチAIプラットフォーム」という取り組みだ。
軸となるmoto aiでは、新機能として、見逃した多数の通知やToDoを要約して表示できる「とりまリスト」、音声の録音時にほぼリアルタイムに書き起こしを行い、翻訳や要約までしてくれる「おまとメモ」、気になるWebサイトなどを後から見返しやすくするために保存し、好きなタイミングで呼び出せる「お気に入リマインダー」、Amazon Musicのプレイリストを、「ドライブでテンションが上がる曲」といったアバウトな指示から作成する「プレイリストスタジオ」といった機能を搭載する。
他社AI機能としては、グーグルのGemini Liveが利用できるほか、moto aiの動線からPerplexity、Copilot Visionの起動も可能。活用できるAI機能へは、アクセスしやすい動線を引きながら、さらにスマホを便利にするための機能を、独自AI機能として盛り込んでいく格好だ。
アウトディスプレイでもほぼ全てのアプリが使えるmotorola razrの魅力
縦折りスマホの中でも、motorola razrシリーズが愛される所以に、アウトディスプレイでほぼ全てのアプリが動かせるというメリットがある。同じく日本で展開されるGalaxy Z Flipの場合は、アウトディスプレイで対応外のアプリを使うため、別のアプリを一度インストール、設定する必要があるが、motorola razrシリーズにはこの煩わしさがない。
縦折りスマホの魅力は、コンパクトに持ち運べるデザイン性だが、使うたびに画面を開かなければいけないとなると、「ただスマホを畳んでいるだけ」になってしまう。つまり、アウトディスプレイでどれだけの作業が行えるのかが、縦折りスマホの命題でもある。
motorola razr 60は3.6インチ、motorola razr 60 ultraは4インチのアウトディスプレイを備える。一般的なスマホのディスプレイと比べると、小さく、正方形に近い形になるため、どんなアプリでも快適とはいえないが、決済用のQRコードを表示する、通知や天気をチェックするといった、サクッと行いたい動作を、小さい画面のまま行えるのは便利だ。
また、先に触れたmoto aiの機能が、アウトディスプレイでも使えるのも、大きなメリットだ。小さいディスプレイは、どうしても文字入力といった動作が行いにくいといったデメリットもあるが、AI機能を組み合わせていくことで、今後さらに使いやすくなっていく期待感がある。
折りたたみモデルながら防塵性能も有する充実したスペック
では、スペック面も簡単に確認していこう。motorola razr 60は、SoCにDimensity 7400Xを採用。メモリはSMフリー版が12GB、ドコモ版、ソフトバンク版は8GBとなる。ディスプレイは、アウトディスプレイは3.6インチ、メインディスプレイが6.9インチだ。
バッテリーは4500mAhで、ワイヤレスチャージにも対応。防塵防水性能は、IP48に準拠している。折りたたみスマホとして、防塵性能を有するモデルはまだまだ数が少なく、砂や埃に強い安心感があるのは、普段使いにおいてありがたいポイントだ。
カメラはメインカメラが5000万画素、超広角/マクロカメラが1300万画素となる。もちろん、おサイフケータイ機能も搭載する。
SIMフリー版、ドコモ版はPerplexity Proが3ヶ月無料、ソフトバンク版は6ヶ月無料で利用できる特典がつく。細かな話ではあるが、ドコモ版は、5Gバンドのn79に対応し、竹とサトウキビで作られた箱に梱包される。
motorola razr 60 ultraは、アウトディスプレイが4インチ、メインディスプレイが7インチと大型化しながら、本体サイズは標準モデルとほぼ同じになる。メインディスプレイは最大165Hzリフレッシュレート、4500ニトのピーク輝度にも対応する。
アウトカメラは5000万画素メイン、5000万画素超広角の2眼構成、インカメラも5000万画素。SoCにはSnapdragon 8 Eliteが採用され、メモリは16GBとなる。こちらも、IP48の防塵防水性能、おサイフケータイ機能を搭載する。
取材・文/佐藤文彦