
物価の高騰や円安といった様々な影響を受け、最新スマホの販売価格は年々上昇している。そんな中、盛り上がりを見せているのが、中古スマホ市場。2024年度の国内中古スマホ販売台数は、前年比17.7%増の321.4万台となっており、6年連続で過去最高を記録。2029年度には、400万台の突破も予想されている。
全国規模で中古スマホ事業を展開するゲオモバイルは、メディア向けのプレスツアーを開催。ゲオモバイルの成長過程や中古スマホ市場のトレンド、実際に中古スマホを流通させるまでのプロセスが公開された。
ビデオレンタル業で有名なゲオが中古スマホ事業に参入したわけ
ゲオグループといえば、ビデオレンタル業と真っ先に思い当たる人は多いはず。実際、会社のスタートはビデオレンタル業から1986年にスタートしているが、現在はゲームやスマホ、家電といった幅広いメディアショップとして展開される「ゲオ」に加え、衣料品や家具を取り扱う「セカンドストリート」、高級腕時計やラグジュアリーブランドバック、ジュエリーなどを専門的に取り扱う「OKURA」など、幅広くリユース業を手掛け、グループ全体で、国内外合わせ、2000店舗を展開する。
中古スマホの買い取りや販売、回線契約を行うゲオモバイルは、2002年に「そうご電器」という会社を子会社化したことから始まる。そうご電器は、北海道を中心に展開されていた家電量販店で、携帯電話の契約代理業務も請け負っていた。
これをきっかけとして携帯電話への取り組みを開始。当時は代理店事業を引き継いているため、新品端末のみを取り扱っていたという。そうご電器の店舗をゲオブランドの店舗へと転換していくことで、徐々に知名度を広げていった。
2005年には、ゲオの船艦店出会った春日井インター店に携帯電話ショップを導入。当時はレンタル事業がまだまだ主流、というより絶好調だったこともあり、社内でも煙たがれるようなこともあったとのことだ。
2008年には、日本でもiPhone 3GSが発売され、徐々に携帯電話市場が変わっていく。SIMカードが普及していき、中古スマホ市場も勢いを増していったという。徐々に携帯電話取り扱い店舗を増やし、2014年には日本3大電気街の1つである愛知県名古屋市大須に「Smart&Collection」を開店。月500万円の売り上げ目標を、開店後わずか3日で達成した。好調を維持したまま、2015年にはゲオモバイルとしての展開を開始している。
中古スマホの強みについて、ゲオストア代表取締役社長の濱野敏郎氏は、1台1台が高価でありながら、コンパクトである点、ある程度安定した買い替えサイクルがある点をあげている。時代の潮流ともマッチし、ゲオモバイルは現時点で800店舗を突破し、1000店舗を次なる目標に据える。
ゲオモバイルが持つ4つの強み
盛り上がりを見せる中古スマホ市場においても、800店舗を展開するゲオモバイルは、業界を牽引する存在といえる。ゲオモバイル販売促進部ゼネラルマネジャーの藤巻亮氏は、ゲオモバイルの4つの強みについて解説してくれた。
■資格認定制度を通して成長する人材
ゲオモバイルは、店舗スタッフの育成に力を入れており、藤巻氏いわく、「ゲオモバイル最大の強みは人」だという。
ゲオモバイルには、端末や料金プランに関する知識、接客のスキルを認定する、2段階性の資格試験が用意されている。1段階目の「モバイルアドバイザー」を通して、スマホの基本知識、料金プランの案内、せっかくといった幅広いスキルを習得し、複雑な知識、専門的な質問にも対応できるスキルを身につけることで、「モバイルスペシャリスト」の資格が得られる。試験内容は、最新端末の登場や、料金プランの変更といったタイミングで、逐一アップデートされていくとのこと。
資格保有者は、2024年3月時点で1200人、2025年7月時点では2087人にまで拡大し、2026年3月には、2300人の資格取得を目標としている。
専門的な知識が求められるのに加え、資格取得のためには、実際の接客を想定したロールプレイングに合格する必要がある。現時点では、資格保有者の大体6割がモバイルアドバイザー、残り4割がモバイルスペシャリストといったバランスになっているとのことだ。
■端末購入からデータ移行、回線開通までをワンストップでサポート
中古スマホの買取、販売だけでなく、UQ mobileやワイモバイルの回線契約まで、ゲオモバイルがワンストップでサポートできるのも、強みの1つだ。ユーザーは、端末を選び、SIMの契約、初期設定、旧端末からのデータ移行までを、その場でサポートを受けながら実行できる。
データ移行は、先に触れた有識者たちがサポートをしながら対応する。新しい端末を選び、実際に使えるようにするフェーズまでを、すべてサポートしてくれる安心感が、ユーザーの支持を集めているという。
■全国展開された店舗から集まる圧倒的な品揃え
ゲオモバイルは、現時点で全国に800店舗を構える。これにより、機種だけでなく、本体カラーや端末の状態など、豊富な端末の選択肢が用意できる。
一部店舗では、店舗内でデータの消去、クリーニングが行えるため、買い取った端末を、そのまま店頭に並べることができる。加えて、全国の店舗で買い取った端末を、独自の流通網で回収、整備し、全国の店舗に配送することも可能だ。
ほかの中古スマホ店では、買い取ってもらえないケースもある、画面割れや本体破損、バッテリーの膨張といった、故障している端末も積極的に買い取っているという。故障した端末は、店頭に並べるのではなく、修理後に再度販売する事業者へと売却したり、分解してパーツを別事業者へと売却するなどして、端末循環の一助にしている。
■徹底した個人情報と品質の管理
買い取った端末は、ゲオモバイルがデータの消去、本体のクリーニングを行う。データの消去は、「Blancco」のデータ消去ソリューションを利用する。専用ツールを使い、確実にデータを削除することで、情報漏洩といったリスクを低減している。
実際にデータを消去する様子も見学できた。端末を専用ツールへと接続すると、自動的にアプリがダウンロードされ、ボタンやディスプレイ表示、タッチ感度といった項目のテストを行うことができる。端末状態のチェック作業は、バックグラウンドで動いているものに加え、スタッフが簡単に手作業で行う部分もあるようだが、いずれも案内に従っていくだけで完結し、複雑な操作が求められることはなさそうだ。
なお、端末にユーザーのデータが残っていたり、iPhoneでいうアクティベーションロックがかかった状態のものは、買い取りができなくなるとのこと。FeliCaに残る情報なども、ユーザー側で削除する必要がある。
現代のユーザーが中古スマホに求めることとは?
先に触れた通り、国内中古スマホ市場は6年連続で過去最高を記録しており、2024年度の販売台数は321.4万台にも上る。法人需要や、海外旅行者の購入増加も、市場拡大の後押しをしているという。
ゲオモバイルの調査によると、消費者のトレンド、価値観が大きく変わってきており、「自分軸」で端末を選ぶ時代になっているという。
アンケート回答者のうち7割以上が、新品スマホの価格として「8万円以上」だと高いと感じるという。また、購入する端末を選ぶ基準として、「最新機種」であることを挙げる消費者は、わずか4.8%にとどまる。
調査結果の注目ポイントは3点。1つに、最新機種が自分にとっての最善ではないという価値観が浸透していること。もう1つに、自分にとっての最適解が重視されていること。最後に、オーバースペックの最新機能よりも、サイズや実用的な機能など、ちょうどいい機能を求める傾向が強いということだ。
実際にスマホの買取数、販売数ランキングを見ると、ホームボタンのあるiPhone SE(第3世代)や、必要十分な性能を持つiPhone 13といった機種が人気。最新機種を購入するという選択は、かえって古いといわれる時代が来ているのかもしれない。
取材・文/佐藤文彦