
ボランティア活動で簡単なチラシとポスターを作製することになった。できれば美しいデザインで多くの人に見てもらえるものにしたい。せっかくなら、作った後も画像ツールを使いこなして、プレゼン資料のビジュアルもアップさせたい。そこで無料の画像ツールCanva(キャンバ)の基礎中の基礎を紹介しよう。
使いこなし術その1:Googleアカウントに紐づけできる
今回、画像ツールとして選択したのがCanva(キャンバ)である。無料の画像ツールで、動画やWeb、名刺など多彩な機能をもつ点が魅力的だ。さらに以前、知り合いの小学生の子どもが使っていたと聞いて、「子どもでもできるんだから」と選択したが、実はCanvaを使った子どものための教育プログラムが人気らしい。子どもだけでなく、大人でも初心者が使うのにはとても便利な仕組みがたくさん組み込まれていた。それは最初のアカウントの登録からも証明されている。
Canvaを使うには、最初にアカウントを取得する必要がある。Googleのアカウントを持っている人はメールアドレスやパスワードの設定をせず、Canvaに直接紐づけすることができる。Canvaには共同デザインツールがあるが、Googleアカウントで関係者全員でファイルの共有をしておけば、招待者の意見を聞きながら作成できるのは便利な機能だろう。
また、今回は画面だけでは不安だったので、Canva公式クリエイターのベーコンさんの新刊「基本とプロのコツが両方学べるCanvaデザイン」(SBクリエイティブ発刊、定価2420円)を参考にしたが、全ページカラーで写真やイラストが豊富に掲載されていて、とても参考になった。特に初心者はこうした信頼できる指南書があると安心して作業が進められるのでおすすめである。
使いこなし術その2:豊富なテンプレートから作成できる
チラシやポスターを作製する時、Canvaでは豊富なテンプレートが作成の手伝いをしてくれる。カテゴリー別に検索できるので、自分の使用目的や作成意図を入力しよう。ビジネスシーンで使いたい場合は「ビジネス」と入力するだけで「ドキュメント」、「プレゼンテーション」、「ホワイトボード」といった提案をしてくれる。
さらに「ブランドキット」では画像としてドキュメントやプレゼンテーションを統一したデザインが可能になる。写真や色など、統一感が出るため、表現したい内容をより強い印象で相手に伝えることが可能となっている。
すでにテンプレートとして完成のイメージが存在しているのは、作成者にとってはストレスフリーで、テキストの位置や大きさなど、余計な悩みが少ないのも良かった。新刊書ではCanva公式クリエイターのベーコンさんが、テンプレートの実例を「シンプルなデザイン」、「インパクトのあるデザイン」、「スタイリッシュなデザイン」、「ナチュラルなデザイン」、「かわいいデザイン」、「かっこいいデザイン」「ビジネスデザイン」とデザインごとに分類した見本を紹介しているので、とても分かりやすかった。
Canvaの特徴はこうしたテンプレートの多さと素材の多様性にあり、デザインに詳しくない人でも、満足できる仕上がりが可能となる。選ぶだけで美しいデザインが完成する、操作性の良さも魅力の一つだろう。
500万点以上もある豊富なテンプレートの中で、どれが一番良いのか、わからなくなってしまった時は1)自分が入れたい文字数が近いもの、2)使いたい画像や写真の枚数が近いもの、この2つを選ぶと失敗が少ないとベーコンさんはアドバイスしてくれた。
使いこなし術その3:色の提案などデザインを美しく作成できる
テンプレートに沿って写真やイラストを入れ、次に文字を入力する時、写真やイラストに使われている色に合った文字の色を、Canvaが提案してくれる。デザインに詳しくない人でも、写真に合った色を選択できるので、チラシやポスター全体の統一感が出る仕組みになっている。
特にデザインに詳しくない人は写真やイラストと合わない色で文字を描きがちだが、Canvaは色の提案をしてくれる。自然にデザインを美しく作成できるような仕組みが整えられていたのである。著者のベーコンさんも「Canvaを使えば初心者でもプロ級のデザインが作れます」と太鼓判を押してくれた。
これまで画像ツールといえばPhotoshopやillustratorだったが、簡単に美しいデザインを無料で作成したいと感じている人には、本当に便利なツールである。ただし、使っているうちにやや気づいたポイントもある。実際に作業を続けていて、一番困ったのは、オフラインで作業ができない点である。オンラインツールなので当たり前なのだが、オフの状態で写真のダウンロードができなかった。
さらに、無料の素材と有料の素材が同じ選択肢に上がってくるのも、最初は戸惑った。最初から「絶対無料だけで」と決意していれば良いので、使う側の気持ちの問題なのだろう。商用利用が可能なので、有料でも十分元が取れると思うのだが、最初は戸惑う人がいるかもしれない。
今年7月、オーストラリアからCanva共同創業者で最高製品責任者(CPO)のキャメロン・アダムスさんが来日した。会見では、「世界中の人にデザインの力を」と呼びかけ、ビジネスにおけるデザインの重要性を訴えていた。
さらに、創業から2年間で急成長を遂げ、5億以上ものデザインを作成したと、圧倒的な数の力も強調していた。使う人が増えるにつれて、使いやすさもより追及されていくはず。初心者こそ信頼できるガイドブックとともにCanvaを一度、試してみては。
著者 Canva公式クリエイター ベーコンさん
フリーランスデザイナー。Canva公式クリエイター。 デザインに関するテクニックを発信するブログの運営や、セミナーやSNSでの発信を行うなど、デザインを活用したマルチな活動を展開する。著書に『レイアウト・デザインの教科書』(共著/SBクリエイティブ)がある。