
自然災害発生時の避難所生活は、利用者同士のプライバシー確保、トイレや風呂などの衛生環境、長期滞在による体調悪化などが問題視されており、内閣府や地方自治体は、安全な場所にいる人まで避難場所に行く必要はないという考え方に基づいて、自宅・車中などに避難する「分散避難」を推奨している。
行政の支援方針は、これまでの「場所(避難所)の支援」から「人(避難者等)の支援」に転換されて、「分散避難」の選択肢として自宅で安全を確保しながら避難生活を送る「在宅避難」が注目されているという。
パナソニック ホームズは、全国の学生を除く20歳から69歳の男女を対象に「暮らしの防災対策に関する意識調査」を実施して結果を公開した。その調査では、自然災害の発生時に避難所ではなく自宅にとどまりたいと回答した人が半数以上いる一方で、7割弱が「在宅避難」の言葉と意味を「知らない」と回答していた。避難所生活に対する不安については、男性と女性で意識に比較的大きな差があることも浮き彫りになったという。
半数以上の人が自然災害時に自宅に留まりたいと回答
・自然災害時、避難勧告などが出ていない時点での避難行動の意向
・「在宅避難」について言葉の意味を説明後の避難行動の意向
自然災害時に避難勧告などが出ていない時点での避難行動の意向については、54.2%が「自宅にとどまりたい」と回答。男女とも半数以上が自宅にとどまりたいと思っており、「できれば避難所に行きたい」、「必ず避難所に行きたい」と回答した人は男性の18.1%、女性は8.0%で2倍以上の差があった。
そこから「在宅避難」という言葉の意味を説明して、改めて自然災害時に避難勧告などが出ていない時点での避難行動の意向を質問すると、「自宅にとどまりたい」が全体の58.8%に伸長。特に女性は8.4ポイントも上昇して64.8%が自宅にとどまりたいと回答したという。
「在宅避難」の言葉と意味を知らない人は67.7%
・「在宅避難」という言葉と意味を知っているか?
・自宅で食料や水の備蓄、家具の固定など災害の備えは?
「在宅避難」という言葉と意味の両方を知らない人は67.7%で、男女別では男性が65.5%、女性が68.7%で、女性の認知が若干低い結果になった。「在宅避難」に必要な食料や水の備蓄、家具の固定など災害への備えと防災対策に関しては、59.3%が用意していないと回答。防災対策をしている人では、「在宅避難」の言葉を知らない人はわずか8.4%だったが、 防災対策をしていない人では言葉を知らない人が3割も存在していたという。
避難所生活での不安はプライバシーと衛生環境
・避難所生活で不安なこと(全体)
・避難所生活で不安なこと(男性)
・避難所生活で不安なこと(女性)
避難所生活に対する不安は、全体の1位が「プライバシーがなさそう」(47.1%)、 2位が「衛生環境(トイレ・お風呂)の問題」(42.7%)、3位が「周囲の人に気を遣いそう」(38.4%)というランキングになった。男女別でみると男性は全体の傾向とほぼ変わらず、1位「プライバシーがなさそう」(45.8%)、 2位「衛生環境(トイレ・お風呂)の問題」(36.7%)、3位「暑さ・寒さへの対策」(34.2%)という結果だった。女性は、1位が「衛生環境の問題」(48.7%)で、2位「プライバシーがなさそう」(48.4%)、3位「周囲の人に気を遣いそう」(42.9%)という順位で、プライバシーよりも衛生環境への不安の方が大きいことがわかった。
避難所生活経験者が実態に困ったことは睡眠
・避難所生活で実際に困ったこと
避難所生活の経験者に困ったことを質問すると、トイレや風呂などの衛生環境よりも「よく眠れなかった」(22.0%)が1位という意外な結果になった。2位は「周囲の人に気を遣った」(19.0%)、3位は「暑さ・寒さ対策が不十分」(18.0%)だった。
・避難所生活でもっとも困ったこと(全体)
・避難所生活でもっとも困ったこと(男性)
・避難所生活でもっとも困ったこと(女性)
避難所生活でもっとも困ったことをひとつだけ選んだ場合は、1位が「暑さ・寒さ対策が不十分だった」(9.0%)で、同率2位(8.0%)に「トイレに困った」、「プライバシーの確保が不十分」、「周囲の人に気を遣った」の3つが挙がった。男女別では、男性は全体の傾向とほぼ変わらず、同率1位(8.8%)は「暑さ・寒さ対策が不十分」、「トイレに困った」、「周囲の人に気を遣った」の3つだった。女性は、同率1位(9.3%)が「暑さ・寒さ対策が不十分」、「プライバシーの確保が不十分」、「よく眠れなかった」の3つ。全体や男性では上位ではないが、女性では「避難所での安全・防犯面の不安」と「食料・飲料の供給が不十分」が同率6位(4.7%)にランクインした。
この調査では、防災対策の実施状況によって「在宅避難」の認知率に大きな差があることが浮き彫りになった。避難所生活に対する不安についても男性と女性で意識に違いがみられた。避難所生活への不安や避難経験者が挙げた困ったことについては「在宅避難」で軽減することもできそうだ。普段から情報収集と備えをして不測の災害でも「在宅避難」が選択肢にできるように備えたいものだ。
『暮らしの防災対策に関する意識調査』概要
調査対象:全国の男女。20歳~69歳・学生除く
サンプル数:550名
調査期間:2025年8月15日~2025年8月17日の3日間
調査方法:Webアンケート調査
調査機関:市場開発研究所
https://homes.panasonic.com/company/news/release/2025/0916.html
構成/KUMU