
大阪・関西万博の跡地はどう活用されるのか。本記事では、夢洲で進む開発の方針やまちづくりのコンセプト、ゾーン別計画、レガシー継承の取り組みを解説し、その未来像を詳しく見ていく。
目次
2025年4月から開催されてきた大阪・関西万博は、間もなく閉幕を迎える。多くの来場者を未来社会へと誘ったこの広大な会場は、閉幕後どう活用されるのだろうか。
本記事では、跡地活用の基本的な方向性やまちづくりのコンセプト、複数ゾーンに分けた具体的な計画、さらに万博のレガシーをどのように残していくのか、詳しく解説する。
大阪万博跡地「夢洲第2期区域」とは?
大阪・関西万博終了後に開発が始まる「夢洲第2期区域」は、約50haの広大な敷地を舞台にしたまちづくりプロジェクト。夢洲全体は、第1期区域(IRを中心とする開発)、第2期区域(万博跡地)、そして将来的な活用を視野に入れた第3期区域の3つに区分されており、それぞれが役割を担う構想だ。
開発にあたっては、都市づくりの基本方針や土地利用の方向性をまとめた「マスタープラン」が策定されており、事業者募集や将来像の指針となっている。ここでは、第2期区域の概要やすでに開発が進められている統合型リゾート(IR)との関係について詳しく見ていこう。
■跡地50haの概要と位置づけ
夢洲第2期区域は、大阪・関西万博の跡地として開発が進められる約50haのエリアだ。周囲を海に囲まれた立地を活かし、国際観光拠点形成を担う新たな核として位置づけられている。2024年には民間事業者から跡地活用に関する提案を募る公募が始まり、2025年には優れた提案が選ばれた。
これをもとにマスタープランが策定され、今後の開発事業者募集の際の指針となる。全体構想に含まれる第3期区域とあわせて、第2期区域は都市機能を広げ、大阪の成長をけん引する拠点として期待されている。
■IR(第1期区域)との関係
第2期区域は、第1期区域で進められる統合型リゾート(IR)との連携を重視している。IRは年間2,000万人規模の集客を見込む大型施設群であり、第2期区域ではその来訪者を取り込みつつ、回遊性を高めるエンターテイメント機能やレクリエーション機能の整備が検討されている。両区域をつなぐ動線計画や連携ゾーンが設けられ、ホテルやMICE施設などが一体的に機能することで、相乗効果によるさらなる国際競争力強化を目指す方針だ。
夢洲の未来像を描くまちづくりコンセプト
夢洲第2期区域では、国際的な観光拠点としての発展をめざし、エンターテイメントやサステナビリティ、未来技術の導入を核に据えた都市像が描かれている。ここでは、マスタープランが掲げる4つの主要な方向性について詳しく見ていこう。
■世界が集まる〝エンタメ都市〟へ
夢洲第2期区域の核となるのは「エンターテイメントシティ」の創出だ。第1期区域のIRと連動しながら、国際的に通用する大規模エンタメ施設やレクリエーション機能を集積させる計画が立てられている。
サーキットやウォーターパーク、劇場やアリーナといった施設が想定され、家族から富裕層まで幅広い層が楽しめる仕掛けが導入される。さらに、商業・飲食施設やラグジュアリーホテルを組み合わせることで、訪れる人に非日常的な体験を提供し、再訪意欲を高める都市空間の形成が目指されている。
■環境と調和するサステナブルシティ構想
マスタープランは「SDGs未来都市」をもう一つの柱として掲げている。夢洲では、カーボンニュートラルや都市の自然生態系の再生に取り組み、持続可能なまちづくりを進める方針。再生可能エネルギーの利用や緑地の配置によって、人と自然が共生する都市空間が作られる予定だ。
■自動運転や空飛ぶクルマ、未来技術の実装拠点に
夢洲第2期区域は、未来技術の社会実装を進めるフィールドとして構想されている。大阪・関西万博で実証された自動運転バスや次世代モビリティ、さらには空飛ぶクルマといった新技術を継続的に導入することで、利用者に新たな移動体験を提供していく。
加えて、スマートシティ技術を活用し、都市全体のエネルギーや交通を最適化する仕組みも検討されている。
■街全体を非日常空間にデザインする
夢洲第2期区域の都市空間形成方針は「非日常を演出するまちづくり」だ。駅前から湾岸へと伸びるシンボルプロムナードを中心に、水とみどりが融合する歩行者空間を整備する計画だ。さらに、象徴的な建築物や夜間照明の演出によって訪れる人を惹きつける景観をつくり出す。
公共空間や広場はイベントや交流の舞台としても活用され、来訪者が憩いと高揚感を同時に味わえる場所となる。都市全体を一大エンターテイメント体験の場へと変える構想が描かれている。
ゾーニングで変わる跡地活用の具体像
夢洲第2期区域では、約50haの敷地を複数のゾーンに分け、それぞれの役割に応じた開発が進められる。エンターテイメント、ビジネス、医療研究など多様な機能を組み合わせることで、跡地全体が新しい都市空間へと生まれ変わる予定だ。ここでは各ゾーンの特徴について詳しく見ていこう。
■観光の玄関口「ゲートウェイゾーン」で昼夜にぎわう街に
夢洲の入口に位置づけられる「ゲートウェイゾーン」は、来訪者を迎える象徴的なエリアだ。商業や飲食を中心としたにぎわい機能に加え、国際交流やイノベーションを促す拠点の整備が検討されている。
昼夜を問わず活動が続く都市空間をつくり出すことで、観光客がはじめに触れる夢洲の印象を強める狙いがある。大阪ならではの食文化やナイトコンテンツの導入も想定され、滞在型観光を後押しするゾーンとしての役割を担う。
■サーキットやウォーターパーク、夢洲の目玉エリア「グローバルエンターテイメント・レクリエーションゾーン」
「グローバルエンターテイメント・レクリエーションゾーン」は、スーパーアンカーゾーンと交流ゾーンからなる、夢洲第2期区域の中核となる大規模エンタメ・レクリエーションエリア。
国際的なモータースポーツを可能にするサーキットや、世界水準のウォーターパークといった目玉施設に加え、ラグジュアリーホテルや商業・飲食機能の導入が想定されている。家族連れから富裕層まで幅広い層をターゲットに、非日常の体験を提供することで夢洲全体の集客をけん引する存在となる。
■IRと回遊性を高める「IR連携ゾーン」
「IR連携ゾーン」は、第1期区域で開発される統合型リゾート(IR)と直結し、往来をスムーズにすることで相互のにぎわいを拡大する役割を持つ。ホテルやMICE施設、商業機能などを組み合わせ、IR来訪者を取り込みながら夢洲全体の滞在価値を高める設計が計画されている。観光やビジネスの交流拠点として機能することで、IR単独では生み出せない新しい都市体験を実現し、国際競争力の強化につなげることが狙いだ。
■医療・研究の拠点となる「大阪ヘルスケアパビリオン跡地活用ゾーン」
万博の中でも注目を集めている大阪ヘルスケアパビリオン跡地は、閉幕後に医療・ライフサイエンス分野の拠点へと進化する予定だ。研究施設や展示機能に加え、ホテルや商業、MICEとの複合開発を進めることで、医療・研究と観光・ビジネスが融合する都市空間を形成する。訪れる人が最新の医療技術に触れ、国際的な交流を深められる場として、健康・医療産業の発信拠点となることが期待されている。
万博レガシーをどう残すか

大阪・関西万博の跡地となる夢洲では、会場を象徴する建築物や取り組みを「レガシー」として未来に引き継ぐ方針が示されている。ここでは主なレガシー継承の取り組みについて詳しく見ていこう。
■大屋根リング・静けさの森などの再利用計画
万博の象徴である「大屋根リング」は、北東部分約200メートルを原型に近い形で残し、その周辺は大阪市が市営公園として整備する方針が固まった。改修と10年間の維持に約55億円が見込まれ、国や府、企業の支援も活用して費用を分担する予定。残さない部分の木材は、ベンチやモニュメントなどに再利用される計画だ。
また、会場内で静かな憩いの場として親しまれた「静けさの森」の樹木も残置や移設によって活用され、緑地として再整備される。これらの施策は、来訪者が万博を思い出し、地域の財産として受け継げる空間づくりを目指している。
■データと環境技術、万博のソフトレガシーを継承
夢洲第2期区域では、万博で培われた技術やサービスを継承し、都市運営に生かす「ソフトレガシー」が重視されている。具体的には、健康データの活用によるウェルネスプログラム、自動運転やMaaSを含む次世代モビリティの導入、再生可能エネルギーや蓄電技術を用いたカーボンニュートラル実現への取り組みなどが計画されている。
また、都市データの収集と分析を基盤にしたスマートシティの仕組みを構築し、交通、防災、観光の最適化に活用する。こうした取り組みにより、夢洲は未来技術の実証・実装拠点として進化していくことが期待されている。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/編集部