
車を買う際、商談や契約手続き、納車時の対応の良し悪しから「この人から買って良かった」と思えるようなディーラーもいれば、そうでないディーラーもいるはずだ。
では、乗用車を新車で購入した際の正規ディーラーの対応への評価が最も高いカーブランドは、いったい何だろうか?
J.D. パワー ジャパンはこのほど、今年で24回目の実施となる、2025年日本自動車セールス顧客満足度(Japan Sales Satisfaction Index、略称SSI)調査の結果を発表した。2025年調査の主なポイントは下記の通り。
商談時におけるデジタルツールの活用が浸透
自動車ディーラーにおけるDX化は数年前から注目されており、コロナ禍を経て急速に進んでいる。デジタルツールの活用により、顧客とのコミュニケーションの円滑化だけではなく、ディーラーの業務プロセスの効率化や顧客ニーズに合った情報提供などの実現が期待されている。
本調査では、商談時にセールス担当者からどのようなツールを用いて車のデザイン、性能・装備、使い方などの説明が行われたかについて聴取しており、「パソコン/タブレット端末などの画面」の利用は全体の45%となった。ラグジュアリーブランドでは前年の55%から54%とほぼ横ばいであったのに対し、マスマーケット国産ブランドでは前年から+5ptの44%となり、マスマーケット国産ブランドにおける商談の場面でのデジタルツールの浸透がうかがえた。
また、商談における満足度との関係をみると、「パソコン/タブレット端末などの画面」を利用した場合は743ポイントで、全体を22ポイント上回る評価を得ている。
ディーラーでの実車を活用した商談の実現、今後の一層の強化に期待
新車購入検討時に参考にした情報は、「車のカタログ・パンフレット(紙・デジタルを含む)」(44%)、「販売店の展示車/試乗車」(39%)が上位2位を占め、顧客にとってカタログとともに実車での確認は重要な参考情報の一つであることがわかった。
販売店での実車の活用実態として、展示車の印象を確認すると、肯定的な回答(“そう思う”、“まあそう思う”の合計)をした割合は、「展示車の外装/外観がとてもきれいだった」、「展示車の内装がとてもきれいだった」はいずれも92%、「ゆったりと展示されていて見やすかった」は83%だったのに対し、「展示車の種類が豊富だった」は最も低い62%だった。
一方、商談の満足度との関係をみると、「展示車の種類が豊富だった」に対して肯定的な場合の評価は772ポイントとなり、「展示車の外装/外観がとてもきれいだった」、「展示車の内装がとてもきれいだった」(いずれも735ポイント)、「ゆったりと展示されていて見やすかった」(748ポイント)よりも高かった。展示車が豊富に揃っていることは、より高い満足度に結びつくことがわかったが、現状では、展示車のきれいさやゆったりとした見やすさに比べて、展示車の種類の充実にはまだ課題があると考えられる。
残価設定ローンやリース/サブスクリプションの利用理由は、価格面よりもセールス担当者の対応のよさ
購入した車の支払方法別に購入理由を確認すると、「セールス担当者/商品アドバイザーの対応がよかった」という割合は、「購入店のリース/サブスクリプション」を利用した場合は52%、「購入店の残価設定型ローン」の場合は48%となり、「現金一括」や「購入店の通常ローン」(いずれも37%)の場合よりも高かった。
さらに、契約手続きにおける満足度との関係をみると、「購入店のリース/サブスクリプション」利用者は754ポイント、「購入店の残価設定型ローン」利用者は753ポイントであり、全体を20ポイント以上上回った。
「購入店の残価設定型ローン」や「購入店のリース/サブスクリプション」での支払いを選択する人は、一般的には、月々の負担額を抑えたい傾向があると考えられているが、実際は、「購入価格/値引きの条件がよかった」という価格面は購入の強い理由になっておらず、むしろセールス担当者の説明といった対応力の良さが決め手となっていることがわかった。
高度な機能や先進的な技術を持つ車が市場に広がる中、新車購入の場面において、セールス担当者の説明スキルや対応力の向上に加えデジタルツールや実車を積極的に活用することは、顧客へ車の魅力を的確に伝え、高い満足度を得るために欠かせない要素となっている。
展示車については、ディーラーで取り扱う全てのモデルの展示車を用意することは現実的に難しいことであり、実際に調査内で、購入した車と“同じモデル”の車が展示してあったという割合は48%と半数に満たない結果であった。ディーラーにとって店舗ごとの売れ筋モデルの販売予測、来店する客層やそのニーズの把握などはますます重要になっている。
J.D. パワー 2025年 日本自動車セールス顧客満足度調査 総合満足度ランキング
2025年日本自動車セールス顧客満足度調査のラグジュアリーブランド部門(対象4ブランド)において、第1位は「BMW」(789ポイント)で、「納車」、「商談」の2ファクターでセグメント中最高評価となった。以下、「レクサス」(785ポイント)、第3位「メルセデス・ベンツ」(778ポイント)と続いた。
マスマーケット国産ブランド部門(対象8ブランド)では、第1位が「マツダ」(764ポイント)で、「店舗施設・サポート」、「納車」、「商談」、「契約手続き」の全4ファクターでセグメント中最高評価となった。以下、第2位「日産」(735ポイント)、第3位「三菱」(730ポイント)と続いた。
<J.D. パワー 2025年日本自動車セールス顧客満足度(SSI)調査℠概要>
年に一回、新車購入後2~13ヶ月が経過したユーザーを対象に、乗用車を新車で購入した際のメーカー系正規ディーラーの対応に関する評価を明らかにする調査。
今年で24回目の実施となる。
実施期間:2025年5月~6月
調査方法:インターネット
調査対象:メーカー系正規ディーラーから新車購入後、2~13ヶ月経過したユーザー(18歳以上)
調査回答者数:6,850人
総合的な顧客満足度に影響を与えるファクターを設定し、各ファクターの詳細評価項目に関するユーザーの評価を基に1,000ポイント満点で総合満足度スコアを算出。顧客満足度を構成するファクターは、総合満足度に対する影響度が大きい順に「納車」(26%)、「店舗施設・サポート」(26%)、「商談」(26%)、「契約手続き」(21%)となっている(カッコ内は影響度)。
出典元:J.D. パワー
構成/こじへい