
10月14日、Windows 10のサポートが終了する。
「まだ動くから大丈夫」「買い替えるのは面倒だ」……と、油断していると、あなたの生活やビジネスに致命的な損害をもたらす可能性がある。それはなぜか。
具体的にどのようなリスクがあるのか。ビジネスパーソンとして絶対に知っておきたい10のセキュリティリスクを、4カテゴリーに分類し解説しよう。
「サポート終了」とは何か?セキュリティの時限爆弾のタイマー開始と言ってもいい
10のリスクを理解する上で、「サポート終了」は、そもそも何を意味するか。
セキュリティの世界で、「脅威(ウイルスや攻撃者など)」、「脆弱性(システムの弱点)」、「リスク(発生しうる損害)」を区別して考えたとき、サポート終了は、自らのPCに「永遠に修正されない脆弱性」があり続けてしまう状態を意味する。
1. セキュリティ更新プログラムの停止
Microsoftは、OSに存在する脆弱性が見つかるたびに、それを修正する「セキュリティ更新プログラム」を提供している。サポート終了とは、この最も重要な防御策が提供されなくなることだ。
2. 「ゼロデイ攻撃」の格好の標的に
サポート終了後に新たに見つかった脆弱性は、永遠に修正されない。攻撃者は、この無防備な弱点である脆弱性を狙い撃ちし、中のデータを盗んだりシステムを壊したりしてくる。
つまり、サポート終了したOSは、いつ爆発するかわからない時限爆弾を抱えている状態なのだ。
サポートが終了し、脆弱的になったWindows 10には、具体的にどのような「リスク」があるのか。実はこれがPC内部の問題に留まらない。
マルウェア感染による直接的な金銭・情報資産の損失リスク
まずはPC内のデータや事業資金といった、自分や会社の資産が直接的に破壊・盗まれるリスクだ。
リスク(1):新種ウイルス・マルウェアへの無差別感染
OS自体の脆弱性を突く、日々生まれる新種のウイルスに対してPCは完全に無防備となり、感染は時間の問題となる。結果として、PCの動作不良や重要ファイルの破壊など、直接的な業務妨害にも繋がる。
リスク(2):事業停止に追い込まれるランサムウェア被害
最も警戒すべき脅威。PC内の全データが暗号化され、解除と引き換えに高額な身代金を要求される。バックアップがなければ事業は完全にストップし、金銭的にも壊滅的な打撃を受ける。サポート切れOSは、この攻撃の絶好のターゲットなのだ。

リスク(3):顧客情報を抜き取るスパイウェア
顧客リストや契約書、経理情報といった機密情報が、スパイウェアによって外部に筒抜けになる。データという重要な情報資産を失うだけでなく、顧客からの信頼を失墜し、事業停止する最悪な状態にもなる。
リスク(4):銀行口座を狙うオンライン金融詐欺
キーロガーというキーボード入力を記録するマルウェアに感染すると、ネットバンキングなどのオンライン金融サービスで入力したIDやパスワードが全て盗まれ、不正送金の被害に遭う。事業資金や個人資産が直接的に失われる、極めて危険なリスクだ。
攻撃経路(アタックサーフェス)の拡大リスク
次に、これまで安全だったWeb閲覧やWi-Fi利用といった日常的なPC操作そのものが、サイバー攻撃の侵入経路へと変わってしまうリスクがある。
リスク(5):Webブラウザの脆弱性放置による危険増大
OSのサポート終了に伴い、標準ブラウザ「Microsoft Edge」のセキュリティ更新も停止する。これにより、不正な広告をクリックしたり、改ざんされたWebサイトを閲覧したりするだけで、ウイルスに感染する可能性が飛躍的に高まってしまう。

アップデート停止で、オンラインバンキングやクレジットカードの番号を抜き取るフィッシングサイトの検知アラートも出なくなるかもしれない。
リスク(6):USBメモリなど周辺機器からの感染拡大
OSの防御機能が低下している状態なので、ウイルスに感染したUSBメモリを挿すだけで、簡単にマルウェアが内部ネットワークに侵入し、勝手に実行されてしまう事態が起こりやすい。オフィス内でのウイルス感染拡大の原因ともなり得る。
リスク(7):公共Wi-Fi利用時の通信盗聴リスク
OSのネットワーク機能に脆弱性が見つかっても修正されないため、カフェなどの公共Wi-Fi利用時に通信内容が盗聴される危険性が高まる。IDやパスワード、メールの内容などが筒抜けになり情報漏えい事故が起こりやすくなってしまう。
事業継続と社会的信用の毀損リスク
PC内部の問題かどうかに関わらず、意図せずサイバー犯罪の加害者となったり、取引先からの信用を失ったりする、社会的なダメージに関するリスクもある。
リスク(8):犯罪に加担させられる「踏み台」化
PCが乗っ取られ、他社のサーバーを攻撃したり、スパムメールを大量送信したりするための「踏み台」として悪用されるリスク。自分自身が被害者であると同時に、社会に対する加害者となり、意図せずして信用が失墜してしまう。
リスク(9):取引先からの信用失墜・契約打ち切り
セキュリティ意識の高い企業は、サプライチェーン全体の情報管理体制をチェックする。サポート切れOSの使用が発覚すれば、リスク管理能力を問われ、取引を打ち切られる可能性がある。
業務効率の低下リスク
最後に、直接的なセキュリティ被害ではなく、周辺機器が使えなくなるなどPCの互換性や安定性が低下し、日々の業務効率を損なうリスクを持ちあわせている。
リスク(10):PCの動作不安定化と生産性低下
セキュリティ以外の問題ではあるが、各種ドライバの更新も停止するため、新しく購入したプリンターや周辺機器が正常に動かない、といった事態が発生する。互換性の問題が、日々の業務効率を下げ、代替手段を使うために、外部に情報を持ち出してしまう漏えい事故につながりやすい。