
渋滞がつきものの秋のドライブシーズンには便器型の車内用非常トイレがあると安心
秋は1年の中でも最高のドライブシーズンであり、ロングドライブを楽しむ人も多いはずだ。そこで気になるのが、クルマの移動中のトイレ事情。高速道路で渋滞にハマり、SA/PAははるか遠く、いや、SA/PAにたどり着いたとしても進入路が大渋滞していることもあり、ドライバー自身はもちろん、乗員から「トイレがもう我慢できないよ~」という声が上がることも想定できる。
そこで一般的に備えているはずなのが、筒状で凝固剤が入っている非常用トイレ。が、トイレの便器に座ることに慣れている老若男女が実際に車内空間でその非常用トイレを使おうとすると、かなりアクロバティックで無理な姿勢を強いられることになる。全高、天井が高いミニバンやスーパーハイト系軽自動車なら、付属の前掛けシートや別売のポンチョなどを羽織れば、外からの干渉を気にせずなんとか使えるかも知れないが、天井の低いセダン、SUV、ワゴンのようなクルマで初めての体験だと、男女を問わず、車内での非常用トイレの使用はけっこう大変なのである。
車内で無理な姿勢をとらず使えるコンパクトな便座式コンパクト簡易トイレが便利
我が家でも秋のドライブ旅行を計画しているところだが、心配性の家族のためにいろいろ調べたところ、あるじゃないか!! 天井の高いミニバンやスーパーハイト系軽自動車ではもちろん、天井の低いセダン、SUV、ワゴンのようなクルマでも車内のトイレ事情を”すっきり”解決してくれそうなアイテムが!!
それが、防災、掃除、ペット用品などを中心に商品開発、製造、販売を一貫して行っている、和歌山に本社を構えるサンコーの「簡易トイレコンパクト」である。サンコーは2023~2024年度だけでも防災用品約80万個の販売実績があり、被災地へ足を運び商品開発に生かしている、日本製にこだわる生活サポート用品メーカーだ。
何しろ簡易的な筒状の非常用トイレではなく、”座席に置いて使える”、薄い箱型で本体が便座のようになるコンパクトタイプの簡易トイレなのだ。商品としては本体1個、汚物袋5枚、飛び散り防止シート5枚、凝固剤5個、ポンチョ1枚がセットされていて、使い方としては、車内に置いてもジャマにならないパッケージサイズ30.6×25.5×9.2㎝、741gの段ボール製の箱本体からセット用品を取り出し、本体を組み立て、本体に汚物袋をかぶせ、飛び散り防止シートを底に敷き、U字型の便座状になっている本体に座るだけ。
組み立てた簡易トイレコンパクトはクルマのシートに無理なく置ける!!
組み立てた「簡易トイレコンパクト」は奥行き30㎝、幅30㎝、高さ12㎝で、軽自動車を含むほぼすべてのクルマの前後シートに置けて、一般的な室内高があるクルマ、一般的な身長、体型の人なら無理な姿勢をとらずに、シートに座ったままトイレが使えることになる。黒いポンチョが付属しているため、外からの視線も気にならない。段ボール製とはいえ、耐荷重は120kgなのだから、安心して使えるのだ。
しかも、筒状の非常用トイレは「小」の使用に限られるが、この「簡易トイレコンパクト」は便座面から底までの高さが12㎝あるため、「大」でも使える設計となっているのが特徴だ(ここが重要)。
多くの非常用トイレ(家庭、オフィス用)は組み立て時に大きな箱状となり(縦横約46cm、高さ44cmが一般的)、車内では使えない。が、「簡易トイレコンパクト」は、組み立て前はもちろん、組み立て後も薄型コンパクトだから車内に収納しやすく、アウトドアでもじつに使いやすいということになる。
もっとも、我慢の限界に達したときには、それから「簡易トイレコンパクト」を組み立てている猶予はない。あらかじめ組み立てて汚物袋をセットし、車内に用意しておくことを推奨する(凝固剤は使用時に開封すること)。余計なお世話かもしれないが、「大」の際は付属のポンチョを被りつつ、窓を開けての換気は不可欠。合わせて無香の消臭剤を用意しておくといいだろう。
さて、筆者の最大の関心は、運転席でも使えるか、ドライバーでも用を足せるか?だ。そこで実際にあくまで停車時にどうなるかを検証。テストした車両はコンパクトハッチバック/ワゴンのVWゴルフ7.5で、前席のシート座面長530mm、後席座面長480mm(簡易トイレコンパクトの平置きサイズは縦横ともに30㎝)。身長172cmの筆者のドライビングポジション基準で前席頭上に180mm、後席頭上に150mmのスペースがあるクルマである。テスト前に気になったのは、室内高がミニバンやスーパーハイト系軽自動車ほど余裕がないハッチバック/ワゴン車で、高さ120mmの「簡易トイレコンパクト」を前後席に置いて座った際、座高が120mm高くなるわけで、頭がつかえないか?ということ。が、筆者の座高、上記の車内のスペックで、前後席ともに頭がつかえることはなかった。単純な計算式では、前席頭上180mmから「簡易トイレコンパクト」の高さ120mmを引いても頭上に60mm余り、後席頭上150mmから「簡易トイレコンパクト」の高さ120mmを引いても頭上に30mm余る計算になるからだ(利用者の身長、座高による)。なお、テスト車の後席には、普段から愛犬を安全に乗せるためサークルを設置してあるため、その下に常時、防水シートカバーを敷いてある。「簡易トイレコンパクト」と防水シートカバーを組み合わせれば万全ではないだろうか。
さらに言えば、例えばホンダN BOXのようなスーパーハイト系軽自動車であれば、筆者の身長基準で前席頭上に290mm、後席頭上に250~265mm(シートスライド位置による)。ボックス型ミニバンのトヨタ・ノア&ヴォクシーでも前席頭上に250mm、後席頭上に253~260mm(シートスライド位置による)もあるのだから、長身の人でも無理な姿勢をとらず、「簡易トイレコンパクト」が使えるということだ。ただし、トヨタ・ヤリスのようなコンパクトカーは後席頭上空間が100mm程度なので、筆者であればちょっと頭をかがめる姿勢にはなる・・・。※運転手が運転席で使用する際は、安全かつ交通の妨げにならない場所に停車してから使用すること。
ただ、あらかじめ組み立てて汚物袋をセットした「簡易トイレコンパクト」を、そのままクルマに積んでおくのはちょっと抵抗があるので、あらかじめもう1枚の汚物袋でくるんでおくといい。「小」で使用した汚物袋はそのまま口元を縛るだけでいいのだが、「大」で使用した汚物袋は組み立て済の「簡易トイレコンパクト」をくるんでおいたもう1枚のきれいな汚物袋に入れてしっかり口元を縛り、二重に密封しておけば、車内の臭い対策になるだろう(ゴミの廃棄はしかるべき場所に)。
なお、サンコーでは普段から家の中に置いておいても家具のようで違和感のない、腰掛としても利用できる「ポータブルコーナートイレ」なども用意している。その使用レポートは改めてお伝えする。
文/青山尚暉(防災研究家)