
某日、某大型雑貨店で、筆者の7歳になる娘が一つの棚に吸い込まれていった。見ると、シールがずらっと並んでいる。子どもってシールが好きだなあ、やれやれ……近づくと、ん? これは?
見ると、全てぷっくりと立体的ではないか。しかもパッケージによるとこれらは「BONBON DROP(ボンボンドロップ)」というシリーズのようである。
わが子はまるで宝物を見るがごとき勢いで、張り付いて離れない。しばらくその場にいたところ、娘のような女児をはじめ、20~30代と思しき女性も熱心に選んでいる。
子どもはもちろん、大人の心も掴むシールとは?製造・販売メーカーの『クーリア』に詳しく聞いた。
「BONBON DROP(ボンボンドロップ)」とは?
「BONBON DROP(ボンボンドロップ)」を手がける『クーリア』は、大阪府に本社を置くメーカーである。「ファンシー文具」と呼ばれる“KAWAII(カワイイ)”文具や雑貨、推し活アイテムなど、幅広い商品を手がけ、その一つにシールがある。

「弊社にはシールチームがあり、6名のデザイナーと2名のプランナーが中心となって、低年齢層向けのシールを作っています。『BONBON DROP(ボンボンドロップ)』は、月に一度の開発ミーティングで小さなアイディアがきっかけとなり生まれました」(以下「」内、デザイナー・山崎菜央さん)
山崎さんによると、ベースには過去のヒット作があるそうだ。

「一つが『着せ替えシール』です。これは女の子のシールに、お洋服やアクセサリーのシールを上から貼り付けて着せ替えを楽しむシールです。

もう一つが『ウォーターシール』です。こちらはカプセル状のシールで、カプセルの中にラメや色水を入れています。平成初期に発売し、今も売れているロングセラー商品の一つです。
どちらも低年齢層をターゲットに発売し、平成のお子さん方にヒットしたシールです。『BONBON DROP』は過去のシール開発の技術をヒントに、“接着剤のいらないぷくぷくとしたデコパーツ”というコンセプトのもと、2024年3月に発売しました」
時代の波に乗り、累計出荷数400万枚の大ヒット
第一弾は、トレンドカラーを取り入れた「水色界隈」、ポップな「おばけ」、王道の「動物」と「海の生き物」の4種類。どれも愛らしく、子どもが好きそうなモチーフだ。
「当時、ファッションでも水色が流行っていて、ほかのシールでも水色がよく売れました。そこで、大人に流行っているものが低年齢層にも浸透していると『水色界隈』をつくったんです。そのほかは、お子さんが好きなモチーフの代表ですね」
発売されるやいなや、ツヤツヤぷっくりとしたシールは女児の心をがっちり掴んだ。さらに、その親世代やZ世代と呼ばれる若者たちにも人気は飛び火する。
「ちょうど発売直後は『平成レトロ』が盛り上がりはじめた頃。平成レトロっぽくてかわいいという声が20~30代の大人の方から上がり、発売直後から他のシールをしのぐ勢いで売れはじめました」
その後2024年12月に、『サンスター文具』と協業してキャラクターものの「BONBON DROP」も発売。キャラクター人気も相まって、さらに売り上げが伸び、キャラクターものの「BONBON DROP」を使ったスマホのデコレーションがSNSでバズり……。
2025年9月現在、発売から約2年半。「BONBON DROP」は50種類以上を発売し、累計出荷数は約400万枚にものぼる。この数字はシールとしては異例。社内のシールでも、過去ナンバーワンの売り上げを誇るそうだ。
「ベースに、平成に流行ったシールがあったからかもしれません。そこに、キャラクター人気やSNSでの話題も追い風になったのだと思います。正直、ここまでの人気になるとは、私たち自身も驚きました。今ではシールチームのみならず、社内アンケートでどのようなモチーフがほしいか意見を聞くなど、全社一丸となって取り組んでいるんですよ。
ただ、今も発売当初から変わらないのは、あくまでも低年齢層向けの商品であること。だからこそ、平成を知らない世代には新鮮に映り、知っている世代にとっては懐かしんでもらえるのかもしれません」
デコ、シール交換……「BONBON DROP」の魅力とたのしみ方
魅力はなんといっても、“ツヤツヤ、ぷっくり”とした見た目であろう。これを生かすたのしみ方は、「やはりデコレーションです」と山崎さん。
「『BONBON DROP』は、“接着剤のいらないぷくぷくとしたデコパーツ”で、中に樹脂を入れて立体的にしています。さらにベースと天面の両方に図柄を描くことで、よりくっきりと表現しているんです。
おすすめは、スマホケースや鏡、トレカケースなど、シールが付きやすい素材の平面に、なるべくぎっしり貼ること。世界に一つのデコレーションを気軽にたのしんでいただけます。ただ、そのままだと持ち歩くうちに剥がれてしまう場合がありますので、接着剤などで補強していただくと安心ですね」
シールでデコ……男性読者諸君には、パソコンや車に好きなステッカーを貼る「ステッカーチューン」をイメージしてほしい。「BONBON DROP」でデコをたのしむ女子たちは、お気に入りのシールで世界に一つをクリエイトしているのである。
また現在、「ふたたびシールブームが訪れている」とも。
「平成レトロの一つかもしれませんが、シール交換やシールコレクションなど、シールそのものの注目度も高まっています。それもあって、弊社ではシール台紙のバリエーションも増えていますよ。『BONBON DROP』はそもそもの配置にもこだわっていますので、パッケージのままコレクションしていただくのもおすすめです」
バリエーションを増やし続け、消費者を飽きさせることなくヒット街道を走り続ける「BONBON DROP」。最後に今後の展望を聞いた。
「これまでと変わらず、クオリティが高くてかわいいシールをお届けしたいというのが私たちの想い。ですから、『BONBON DROP』らしさは大切に。愛してくださる皆さまへ、つねに目新しさをお届けしたいと思っています。これからもどうぞたのしみにしていてください」
取材協力/クーリア
取材・文/ニイミユカ