
例年通り、9月にiPhoneの新モデルが発売された。今年の注目は、薄型軽量モデルとして登場した「iPhone Air」だろう」。
9月に発売されるiPhoneシリーズは、14、15、16と1年ごとにナンバリングを更新してきた。加えて、2025年2月に発売されたiPhone 16eも、廉価モデルながら、「16ファミリー」の仲間入りをしている。
今年もiPhone 17シリーズとして3モデルが展開されているが、iPhone Airには「17」が付いておらず、アップルがこの端末を別のプロダクトとして据えていることが伺える。では、iPhone Airとは誰のための、どのような端末なのか。実機を触りながら考えていく。
iPhone Airを使って感じるメリットとデメリット
iPhone Airの特徴は、なんといっても本体のデザインにある。薄さ5.6mm、質量165gは、数字上のインパクトも抜群だが、実際に持つことで、より感動を味わうはずだ。側面に付着する指紋はやや気になるが、バンパーのような、薄さを活かす周辺パーツも展開されている。
6.5インチと比較的大きいディスプレイ搭載するが、薄型がゆえに握り込みやすく、大きな画面を広々と楽しめる。今年から、4モデル共通で、120Hzリフレッシュレートに対応する「ProMotionテクノロジー」に対応したことで、より滑らかな描画が楽しめるのもポイントだ。
本体カラーはスペースブラック、クラウドホワイト、ライトゴールド、スカイブルーの4色で、同じく「Air」を冠する、MacBook Airと近い色合いになる。一方、MacBook Air(M4)の質量は、13型モデルでも1.24kgと、Airとはいいがたい質量でもあった一方で、iPhone Airは正真正銘、軽量モデルといえる仕上がりだと感じる。
気になる耐久性だが、前面にはCeramic Shield 2、背面にはCeramic Shieldが採用されており、見た目以上に頑丈な印象。力を加えると、本体が撓って圧力を分散させていることがわかる。一般的な使い方をしていれば、耐久面での故障の心配はいらないはずだ。
搭載チップはA19 Pro。iPhone 17 Proからは、GPUコア数が1つ少なくなっているが、今年の上位チップであることに変わりはない。例年は、4モデル展開されるiPhoneのうち、2モデルが標準チップ、2モデルがProチップとなっていたが、今年は3モデルがProチップになっている点にも注目となる。
使用感としても、GPUコア数の差はほぼ感じず、動作は快適。ゲームアプリは、最適化などの影響からか、一部タイトルで微妙な動きを見せることもあるが、概ね満足できる性能だ。一方、iPhone 17 Proと比較すると、やはり本体の発熱はやや気になる。
他にない薄さ、上位モデルと遜色ないチップを搭載した点は、iPhone 17よりも上のランクに位置する端末と感じる一方で、明確に劣る部分も散見される。
1つは背面カメラ。iPhone Airには、48MPの広角カメラのみが搭載されており、iPhone 17にある超広角カメラ、Proモデルにある望遠カメラは非搭載となる。
使い方次第にはなるが、特に超広角カメラがないのは、不便に思うシーンが多い。景色を撮る際、複数人を撮る際など、想定できる使用シーンは多岐にわたる。個人的には、発表会で大きなスクリーンを撮影する際には、やはり超広角カメラが欲しくなる。
また、マクロ撮影にも対応していない。人によっては、超広角カメラよりも多様するものだろう。48MPの広角カメラ自体は、iPhone 17やProdモデルと同等の性能になっており、クロップズームによる2倍光学品質の撮影もできるが、撮影できるパターンが少ない点は、購入前にしっかりと頭に入れておくべきだろう。
もう1つ気になるポイントが、スピーカーが本体上部にしか搭載されておらず、モノラル再生しかできない点。音楽再生は、ほとんどイヤホンで行うという人であれば、無視できるポイントだろうが、筆者の場合は、ゲームアプリのプレイ時は、ワイヤレスイヤホンだと遅延が発生するため、スピーカーで音を出したいため、物足りなさを感じる。
公称値通り、バッテリー持続時間はiPhone 17シリーズと比べると短い印象。1日外出していると、どうしても途中でバッテリーが切れてしまうため、途中の充電が必要になる。iPhone Air専用のモバイルバッテリーも発売されているように、充電回りには工夫が必要になる。
iPhone Airを買うべき人とは?
iPhone Airの魅力は、本体の薄さ、そして軽さだ。スペックからもわかることではあるが、実際に手に持ち、しばらく使っていると、より強く快適さを感じる。
カラーリングも含め、本体のデザイン、サイズ感、軽さといったポイントがとにかく気に入った人であれば、迷わずに買うべき端末だろう。カメラやスピーカー、バッテリーといった要素が気にならない人や、それ以上にデザインが気に入る人がターゲットとなる。
新しいプロダクトであるiPhone Airにおいて、来年新モデルが発売される確証はないことも、念頭においておきたい。「レア度」という意味でも、iPhone Airは特別な位置付けになる。
また、Proモデルに肉薄する高性能を、できるだけ安価に利用したい人も、iPhone Airが候補になるだろう。ただし、先にも触れた通り、放熱性能はProモデルの方が高いため、長時間の動画撮影や、ゲームプレイをしたい場合は、Proモデルの方がおすすめだ。
iPhone Airは折りたたみ機種を見据えた布石かも
新型iPhoneの発表イベントから気になっていたのは、「iPhone AirがなぜiPhone 17シリーズではないのか」という点だ。廉価モデルであり、iPhone SEシリーズの後続機ともいえるiPhone 16eが「iPhone 16ファミリー」と括られているにも関わらず、同時に発表し、A19 Proチップも搭載するiPhone Airが、ファミリーとして数えられていないのには、違和感がある。
ここからは筆者の想像になるが、新しいプロダクト、そして薄型軽量というコンセプトは、いずれ発売されるであろう、「折りたたみiPhone」の布石ではないだろうか。
折りたたみ機種は、一般的なサイズのスマホ2台分を重ねるように畳むという性質上、どうしても厚さ、重さが出てしまう。そのため、使い勝手に優れた機種の開発には、スマホを薄く、軽く設計するノウハウが求められる。
折りたたみ市場を牽引するサムスンは、2025年5月に「Galaxy S25 Edge」という、薄さ5.8mm、質量163gのスマホを展開(現時点での日本発売はないが)。その後、同年8月に、前モデルから圧倒的に薄く、軽い仕上がりとなった「Galaxy Z Fold7」を発売しており、大きな話題を呼んだ。

このことからも、スマホの薄型、軽量化は、ただ端末の使い勝手を向上させるためのものではなく、折りたたみスマホの開発における必要工程だという見方ができる。
iPhoneの折りたたみモデルが、来年のiPhone 18と同時期になるか、全く別のタイミングで登場するのかは定かではないが、「iPhone Fold」といったモデルが登場するのであれば、iPhone AirがiPhone 17ファミリーではなく、別のプロダクトと位置付けられている点にも、納得感が生まれる。
いずれにせよ、iPhone Airの登場により、折りたたみiPhone(もしくは折りたたみiPad)が登場する期待感は、より高くなる。iPhone Airは、これからのアップルの製品展開に期待感を持たせてくれるという意味でも、注目の1台というわけだ。
取材・文/佐藤文彦