
石破茂総理大臣の辞任表明に伴う自民党総裁選は2025年月22日に告示され、国会議員の投開票が10月4日に行なわれる。今回の総裁選は、投票資格を持つ党員・党友も参加する、いわゆるフルスペック方式で実施されるため、党員・党友の投票は開票日前日の10月3日まで。
国会議員と党員・党友票は各295票の計590票で、1回目の投票で過半数を獲得した候補者が当選、該当者がいなかった場合は上位2人による決選投票となる。
そんな総裁選の候補者と政策、予想される市場の反応について三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏から考察リポートが届いているので概要をお伝えする。
自民党総裁選は9月22日に告示され5名が立候補し、物価高への対策が必要との主張で一致
石破茂首相の後継を選ぶ自民党総裁選挙が9月22日に告示され、小林鷹之元経済安全保障相、茂木敏充前幹事長、林芳正官房長官、高市早苗前経済安全保障相、小泉進次郎農林水産相の5名が立候補した(届出順)。
自民党は翌23日に共同記者会見と青年局・女性局主催の討論会を開き、5候補はそれぞれ自身の政策について述べた。今回のリポートでは、各候補の政策を比較し、今後予想される市場の反応を考えてみたい。
5候補の主な政策や主張は図表のとおりだが、以下、今回の総裁選で争点となり得る物価高対策や消費税減税などを中心にみていく。
まず、物価高対策について、小林氏は所得税の定率減税(期限・所得制限あり)、茂木氏は数兆円規模の生活支援特別地方交付金の創設、林氏は実質賃金が1%程度上昇する経済状況の定着、高市氏は給付付き税額控除の制度設計、小泉氏は所得税の基礎控除引き上げの検討を主張している。
■5名とも消費税減税に積極姿勢は示さず、赤字国債にも慎重だが高市氏はやむを得ずとの認識
小林氏、林氏、高市氏、小泉氏は、ガソリン税に上乗せしている旧暫定税率の早期廃止を掲げた一方、消費税減税に積極的な姿勢を示す候補はおらず、参議院選挙で与党が公約に掲げた一律2万円の現金給付を公約に明記した候補もいなかった。
なお、物価高対策のための赤字国債の増発について、高市氏はやむを得ないとの認識を示したものの、ほかの4候補は慎重な対応を表明している。
社会保障制度改革に関し、小林氏は社会保障国民会議の設置と包括的改革の実施、茂木氏は負担能力に応じた社会保障制度の確立、林氏は日本版ユニバーサル・クレジット(中・低所得者向けの所得に応じた支援)の創設、高市氏は攻めの予防医療の徹底、小泉氏は全世代型社会保障の実現を主張している。
また、野党との連携は、茂木氏、高市氏、小泉氏が連立拡大に前向き、小林氏、林氏は政策ごとの連携重視とみられる。
■総裁選だけでなく、どの野党と連携を強化するのかについても、今後の市場をみる上で重要な要素
市場の関心の高い、日銀の金融政策についての発言は、現時点で多くはない。なお、市場では、高市氏勝利なら、財政拡張と緩和的な金融環境継続の思惑から長期金利上昇、円安、株高という動きを見込む向きは多く、実際、すでにある程度の織り込みが進んでいるとも考えられる。
そのため、石破茂首相の政策を引き継ぎ財政規律にも配慮するとみられる小泉氏や林氏が勝利した場合は、いったん織り込み修正の反応も予想される。
現在の与党は少数与党であるため、自民党の新総裁が首相に選出された場合でも、自身の政策を実行するにあたっては、野党の協力が必要。
与党の連携先としては、国民民主党、日本維新の会、立憲民主党の名前が挙がっており、このうち国民民主党が最も財政拡張に積極的とみられる。新総裁が誰になるかに加え、与党がどの野党と連携を強化するのかについても、今後の市場を見通す上で重要な要素になると考えられる。
自民党総裁選5候補の主な政策・主張


構成/清水眞希