
京セラは静岡県沼津市沖にて、京セラSLDレーザー社のGaNレーザーを活用した最大通信速度1Gbpsの水中光無線通信システムのプロトタイプで試験を実施。実海域においては世界最速レベルの750Mbpsの高速通信に成功した(※)。
※ 深度6.7mの実海域で15cmの短距離光無線通信において(京セラ調べ2025年9月時点)
本成果は、海洋調査やスマート養殖のための水中ドローンとの通信など、さまざまな水中ビジネスにおいて、高速・大容量通信の実現に寄与するものとして期待される。
実海域試験実施の背景
近年、海洋資源の有効活用や環境保全の重要性が高まる中、水中ドローンやAUV(自律型無人潜水機)によるAIを活用したスマート養殖、水中インフラ設備の点検・監視への期待が増している。
しかし、水中では電波が極めて減衰しやすく、現在一般的に使用されている音響通信は、低速であるため、画像や動画などの大容量データの通信には大きな課題があった。
これに対して光を用いた水中通信は減衰が少なく、高速のデータ通信が可能になる。この光の特性に着目した京セラは、GaNレーザーを用いた高速・大容量・低遅延を実現する水中光無線通信技術の開発を進めており、今回、実用化に向けた検証の一環として、実海域における通信試験を実施。有用性を確認した。
なお、淡水の室内実験においては、2025年1月に、次期プロトタイプを用いて世界最速レベルの最大通信速度1.8 Gbpsの通信を実現している。
■京セラの水中光無線通信システムの概要と実証実験について
京セラは今回、長年にわたり培ってきた通信技術や光学技術を基盤に、GaN系青色半導体レーザーを組み合わせることで、遅延のないGbps級高速水中光無線通信システムの開発に成功した。
本試験により、海中の厳しい環境下においても、当社が開発中の最大1Gbpsの水中光無線通信システムにて、短距離での通信速度が750Mbpsを安定して実現することを確認。
また、淡水の室内実験だけでなく、濁度や外乱光がある実海域においても、レーザーベースの水中光無線通信システムがほとんど影響を受けず、期待通りの伝送速度も得られた。
これにより、高精細な映像やセンサー情報などをスムーズに伝送することが期待できる。
<システムの概要>
場所/静岡県沼津市沖
日時/2025年8月19日~21日
環境測定/濁度、水温、クロロフィル濃度、塩分濃度、照度などの海洋環境を詳細に測定
通信速度測定/通信距離と通信速度の関係を検証
外部光の影響評価/遮光カバーの有無や太陽光下での通信性能を検証
<水中光無線通信の実海域試験イメージ>

<プロトタイプの実際の様子>

■今後の展開
本技術は、水中ドローンや水中ロボットによる超高速データ伝送、海洋観測機器からの膨大なデータ回収、さらにはスマート養殖における大規模水中センサーネットワークなど、従来の通信方式では不可能だった次世代海洋IoTの実現を可能にするものだ。
同社では今回の発表に際して次のようにコメントしている。
「今後京セラは、実海域において、今回の通信速度を上回るGbps通信の確立に挑戦し、2027年までにこの革新的な水中光無線通信システムの実用化を目指します。そして、海洋ビジネスの進化を加速させるとともに、地球規模での海洋環境モニタリングや資源管理に新たな可能性を拓き、持続可能な未来社会の実現に貢献してまいります」
関連情報
https://www.kyocera.co.jp/
構成/清水眞希