
NPBは2025年2月、プロ野球観戦に関わる撮影・SNS投稿ルールを導入し、9月から改定内容を適用。本記事では、その背景や変更点、ファンが守るべき実践ルールをわかりやすく解説する。
目次
プロ野球観戦は、熱戦を楽しむだけでなくSNSでの発信や共有も欠かせない要素になっている。しかし、その自由な発信が思わぬトラブルや権利侵害を招くこともある。こうした状況を受け、NPB(日本野球機構)は2025年2月に撮影・投稿ルールを新たに導入し、その後に改定を決定。
改定内容は9月1日から正式に適用されている。本記事では、その背景と改定のポイントを整理し、観戦ファンが安心して楽しむための実践ルールをわかりやすく解説する。
なぜNPBは撮影・SNSルールを策定したのか
スマートフォンやSNSの普及により観戦スタイルが大きく変化した。まずは、NPBがルールを設けた背景と目的について見ていこう。
■SNS普及が変えた観戦スタイルとファン文化
スマートフォンの進化とSNSの浸透によって、球場での体験をその場で世界中にシェアできる時代になった。テレビや新聞に依存していた頃と比べ、今ではXやInstagramを通じてファン自身が情報発信の中心となっている。
一方で、試合中のライブ映像の無断配信、売り子や観客の盗撮、警備員の個人情報の晒し行為などが問題視されており、球場全体の安全や快適な観戦環境を脅かすケースも出てきた。こうした背景から、誰もが安心して観戦と発信を楽しめるよう、ガイドラインの整備が求められるようになった。
■放映権・肖像権を守るために必要なガイドライン
ガイドラインの狙いは、プロ野球のコンテンツ価値と関係者の権利を守ることにある。試合映像には放映権が存在し、球団や放送局が投じてきたコストを無断配信が損なう事例も確認されている。
さらに、選手や観客への無断撮影、誹謗中傷といったトラブルを防ぐことも重要だ。新たな規程はこうした侵害を抑止し、ルールの範囲内でファンが投稿を楽しめる環境を築くことで、公共空間としての秩序を守りつつ、野球文化の持続的な発展を目指している。
2025年2月施行から9月改定に至るまでの経緯
NPBは2025年2月に初めて撮影・投稿ルールを導入したが、ファンや球団からの声を受けて一部見直しを実施。半年足らずで改定に踏み切り、9月1日から新ルールが適用された。その経緯について解説する。
■2月に導入された「初めての撮影・投稿ルール」の概要
NPBおよび全12球団、さらにファーム・リーグ参加の2球団は、2025年2月より「写真・動画等の撮影及び配信・送信規程」を施行し、球場での撮影とSNS等での投稿に関する統一ルールを設けた。
選手やグラウンドの様子を撮影する行為自体は原則自由であり、試合前後だけでなく試合中の撮影も可能とされたが、大きな転換点となったのは、そのSNS投稿への制限だ。特に、試合中のプレーシーンを含む写真・動画の投稿は全面的に禁止され、非公開設定のアカウントであっても例外とはならなかった。
一方で、ボールデッド中やタイム中の選手の様子、チアやマスコット、球場内の雰囲気などについては、試合後に限り投稿は可能。こうして初めて設けられたルールは、観戦体験の共有に一定の制約を加えるものとして、現場に戸惑いをもたらす結果となった。
■ファンや球団の声を受けた9月改定の背景と目的
施行から半年あまり、NPBと各球団は運用状況を精査し、ファンから寄せられた意見も踏まえて規程の一部改定に踏み切る。特に批判が集中したのは、試合中の写真投稿まで制限された点であり、「SNS世代のファンとの接点を絶ってしまう」といった声が広がった。
プロ野球選手会も4月に規制緩和を求める声明を2度発表し、「感動の瞬間を共有することこそが、プロ野球の魅力拡大につながる」と訴えている。この間、球場でのコンテンツを個人で営利的に配信するような行為も一部で見られ、NPBはそうした発信者に対する措置を強化する一方、大多数の一般ファンにとって過剰な規制とならぬよう配慮を重ねた。
そして8月には、写真や動画投稿を巡る規程を9月1日から緩和すると正式に発表。これを受け、9月以降は新ルールに基づいた運用がスタートしている。
2025年9月改定で何が変わったのか
導入から半年、ファンや選手会の声を受けて撮影・投稿ルールが初めて見直された。ここでは9月の改定で変わった点について詳しく見ていこう。
■静止画ルールの緩和 ― プレー中写真の投稿が可能に
2025年9月の改定においてもっとも注目された点が、プレー中に撮影された選手の写真がSNS等に自由に投稿できるようになったことだ。
これまで「インプレイ中」と「ボールデッド」の違いが投稿可否の基準とされていたが、一般のファンにはその線引きがわかりにくいとの指摘があった。そのため今回の改定では、球場内を「グラウンド内」と「グラウンド外」に整理し、イニングの初球から3アウトまでの「イニング中」の「グラウンド内」シーンをプレーシーンと定義。その上で、プレー中の静止画であっても、投稿制限を設けず自由に発信できるように改められた。
試合中の投稿も可能となり、ファンがその場の熱気やプレーの迫力をリアルタイムで共有できる環境が整えられたかたちだ。
■動画投稿ルールの新基準 ― 秒数・回数・投稿タイミング
静止画に続き、動画投稿にも新たなガイドラインが設けられた。プレーシーンを含む動画については、編集や加工を施さない60秒以内の動画であれば、試合終了後に1人1回まで投稿が許可される。
この「1回」とはSNSプラットフォームを問わず、アカウント単位で1試合につき1本の制限だ。一方、プレーシーン以外の動画、例えばスタジアムグルメや応援の様子、イニング間のパフォーマンスなどは、140秒以内であれば試合中でも投稿が可能とされた。
これにより、ファンは球場体験をより幅広くSNSでシェアできるようになったが、一方で投稿回数や秒数、加工の有無など細かな基準が設けられており、ルールの遵守が求められる。
■今も変わらず禁止される行為と注意点
ルールが緩和された一方で、引き続き禁止されている行為も明確に示されている。例えば、試合中のライブ配信は全面的に禁止されたままであり、営利目的で撮影・投稿された写真や動画についても、例外なくNGとされる。また、試合中の動画であっても、プレーシーンの投稿は1試合1本・60秒以内に限られ、この基準を超える投稿は許可されない。プレー外の動画でも、140秒を超えるものは違反となる。
さらに、三脚やパソコンなどの大型機材を使用した撮影、他人の身体の一部を過度に強調した映像、撮影を拒否している観客やスタッフの姿を含む投稿も認められていない。規則はファンの自由な発信を広げる一方で、他者への配慮や公共空間としての球場の秩序を守ることを前提としている。投稿の自由が拡大された今こそ、ルールの正しい理解と遵守が求められる。
観戦ファンが守るべき実践ルール

ルール緩和で投稿の幅は広がったが、守るべき基準や注意点は依然として存在する。ここでは観戦時にファンが意識すべき実践ルールについて確認する。
■ルール違反時に起こり得る注意やペナルティ
NPBは違反に対する詳細なペナルティを明示していないが、規程を破った場合にはさまざまな影響が考えられる。実際に、2025年7月には営利目的で試合映像を配信していた人物に対しては、全球団主催試合の入場券販売を停止する処分が科されたとの発表もあった。
悪質と判断されれば入場制限やアカウント停止など、観戦や発信に大きな制約がかかる可能性もあるだろう。安心して観戦を続けるためにも「グレーゾーンだから大丈夫」と考えるのではなく、明確に認められた範囲で投稿を楽しむ姿勢が不可欠だ。
■SNSごとに異なる注意点(X・Instagram・TikTok)
X(旧Twitter)はリアルタイム性が高く、つい試合中にプレー動画を投稿してしまうリスクが大きい。必ず試合後に投稿するよう徹底したい。
Instagramでは写真や短尺動画を共有しやすいが、動画は60秒以内・1試合1回までと厳格に制限され、加工や編集は禁止されている。
TikTokは音源やフィルター加工が一般的だが、規程違反になるため注意が必要。各SNSの特性を理解し、ルールに沿った発信を心がけることが重要だ。
■安心して楽しめる「投稿OK」シーンの具体例
観戦中でも安心して投稿できるシーンは数多くある。スタジアムグルメや売店の紹介は140秒以内の動画なら試合中でも問題ない。応援席の盛り上がりやスタンドの雰囲気も同様に発信でき、現場の熱気を伝えるのに適している。
また、試合後には条件を満たしたプレー動画の投稿が認められており、ヒーローインタビューの様子なども対象となる。こうした「投稿OK」な場面を活用すれば、ファンは安心して観戦の楽しさを広められる。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/編集部