
中国発のキャラクター「ラブブ」が世界中で大ヒットしています。この商品を手がける中国企業ポップマートの2025年1-6月の売上高は、前年同期間比で3倍に急拡大しました。
突如として若者市場を席捲した「ラブブ」ですが、人気の背景には、「Y2Kファッション」という2000年の前後に流行した“平成ギャルファッション”のリバイバルブームが潜んでいそうです。
90年代後半に巻き起こった「ハローキティ」ブーム
「ラブブ」は日本でも人気が急上昇しています。Googleの検索動向を調査するGoogleトレンドで「ラブブ」を検索すると、2025年5月まではほとんど検索されていなかったものの、8月末にかけて最高値である100に駆け上がりました。

実は「ラブブ」は2015年に誕生した古参組。ポップマートが手がけるキャラクターの中では「モリー」に人気が集中していました。2024年4月に韓国の人気アーティストBLACKPINKのリサが、「ラブブ」のキーホルダーをバッグにつけていたことで、一躍注目を集めます。
このBLACKPINKというアーティストは、「Y2K」を代表するグループの一つ。「Y2K」は丈の短いトップスやミニスカート、ローライズのパンツ、厚底シューズなど、現在の氷河期世代には馴染み深いファッションのトレンドです。
これが今、Z世代を中心とした若い女性に大流行しているのです。
特徴的なのは派手な色彩、ラメなどのきらびやかな素材、ビニールなどの合成繊維を多用し、テクノロジーや未来を彷彿とさせること。アニメやゲームのキャラクターからの影響も垣間見ることができます。
2000年代初頭のギャルファッションに欠かせないものがありました。「ハローキティ」です。
1990年代後半に入ると、華原朋美や神田うのなどの影響によって国内でブームが起こり、2000年に入ると、パリス・ヒルトンなどのセレブリティを起用したプロモーションが奏功して海外でも人気に火つきました。
当時、日本ではギャルファッションに身を包んだ若い女性が、「ハローキティ」のキーホルダーやケータイケースをバッグなどにぶら下げていた姿をよく見かけましたが、「ラブブ」もそれとよく似ています。
つまり、「Y2K」というファッショントレンドと、キャラクターグッズの相性が良いのです。
「ラブブ」はシンプルな美しさの反動から生まれた?
「ラブブ」は得体のしれない生物であり、不細工でカワイイ・ブサカワ路線の中心にいるような存在です。“呪いの人形”などと噂されることもあり、Googleのサジェストでは「怖い」というキーワードが出てくるほど。
これも「Y2K」の文脈で読み解くことができます。
このトレンドは「ノームコア」の反動だと言われています。「ノームコア」とは「Normal(普通)」と「Hardcore(究極)」と組み合わせたもので、「究極の普通」を表します。
ユニクロに代表されるような、トレンドを追わずにベーシックかつシンプルなスタイルが最大の特徴。シンプルに生きる「ミニマリズム」や「断捨離」がベースにあると言われており、本質的な美しさを追求するという価値観が根底にありました。コストパフォーマンスという考え方にも強く関係しています。
その反動から「Y2K」が生まれています。従って、「本質的な美しさ」や「コストパフォーマンス」とは正反対の位置にある「ラブブ」が人気を博しても決しておかしくはないのです。
偽物騒ぎでブランドの信頼回復に努めるが…
「Y2K」は日本だけでなく、アジア圏や欧米にも影響力が拡大しています。「ラブブ」も同じく世界中でヒットしていますが、その波に乗ったと考えても決しておかしくはありません。
ポップマートの王寧CEOは、「ラブブ」を100年続くIPにするとの目標を語っています。ポイントは「ハローキティ」のような普遍性を持たせられるかどうか。
足元では投機的な水準まで上昇した一部グッズの価格が値崩れを起こしています。最近発売したミニチュア14体入りのブラインドボックスの再販価格は、プレミア価格がついたピーク時から24%も下落しました。フリマアプリ内でも、ミニサイズの「ラブブ」が今後さらに価格が下がると予想する消費者が50%にも上っているといいます。SNSでもピークは過ぎたとの声が聞こえています。
「ラブブ」は凄まじいブームを背景として、大量の偽物が市場に出回りました。8月には5000点もの偽物を販売していたグループが上海警察に摘発されています。
ブランドの毀損を恐れたのか、ポップマートはルーヴル美術館限定のアイテムやキース・へリングなどとのコラボグッズを開発しました。こうした取り組みがブランドの信頼を取り戻す可能性はあるでしょう。
しかし、若者が「ラブブ」ブランドを心から信仰しているのかどうかは疑問。消費者が抱く身近なファッションアイテムという価値観と、会社が押し出したいイメージに乖離が生じれば、「ラブブ」離れが起こらないとも限りません。
かつて日本では「ゆるキャラ」が大ブームを巻き起こしました。自治体の知名度向上につながったため、数多くのキャラクターが誕生します。
しかし、一部のキャラクターが人気獲得のために過激な演出に走り、炎上さわぎを起こすようになりました。PRという本来の目的を忘れ、人気取りに走ったのです。自治体にクレームが入ることも少なくなかったと言います。やがて消費者の熱が冷め、「ゆるキャラ」は力を失っていきました。
ブームはちょっとした歪みで終焉を迎えることが少なくありません。
単なる一過性のファッショントレンドなのか、普遍的に愛されるキャラクターなのか。今、「ラブブ」が分岐点に立たされているように見えます。
文/不破聡
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