
iPhone17が発表され、iPhoneへの注目は高まっている。しかし、その一方でiPhoneを持っていること自体がステータスだった時代は、もう終わりを迎えつつあるのかもしれない。今、静かに“iPhone離れ”の兆しが着実に広がっているのである。その背景には、どのような消費者の本音が隠れているのだろうか。最新のデータとユーザーの声を手がかりに、その実態を探っていきたい。
データで見る「iPhone離れ」の実情
街を見渡すと、依然としてiPhoneユーザーが過半数を占め、“iPhone離れ”という言葉は大げさに聞こえるかもしれない。だが、データを追うと確かにその傾向は見えてくる。
総務省も出典元として参照している「StatCounter」のデータによると、2022年8月から2025年8月までの3年間で、日本国内におけるiPhoneシェアは64.88%から56.94%まで、7.94ポイント減少した。一方、Androidは34.97%から42.91%まで、7.94ポイント上昇しており、シェアがじわじわと逆転しつつあることがわかる。
さらに、iPhoneが最も高シェアを記録した2019年1月の78.38%から最新の2025年8月の56.94%までの間には、実に21.44ポイントもの差が生じている。この7年間で、iPhone一強と呼べる状況はもはや過去のものになりつつあることがデータから見て取れる。
iPhone離れの背景
では、なぜ“iPhone離れ”が進んでいるのか。大きな要因として考えられるのが、端末価格の高騰と、最新機種が発売されても体感できるほどの進化が乏しいことだ。実際にiPhoneからAndroidへの乗り換えを検討している人に話を聞くと、こんな声が返ってきた。
「子ども用にスマホを買うタイミングで、自分も一緒にAndroidに乗り換えました。iPhoneは高すぎて2台分を買うのは現実的じゃなかったんです。Androidは機種の選択肢が多いので、価格に合わせて選べるのが助かります。」(40代女性・主婦)
「ずっとiPhoneを使ってきたんですけど、最近は新機種が出ても“前とあまり変わらないな“って思ってしまうんです。値段も高いですし、次はAndroidも候補に入れています。」(30代男性・会社員)
実際、筆者も同じような疑問を抱いたことがある。iPhoneを買い替えるためにApple Storeを訪れ、当時の最新機種であるiPhone 13と一世代前のiPhone 12の違いを尋ねたところ、「13の方が写真がきれいで、バッテリーの持ちが良いです」と説明を受けた。そのとき正直、「それだけ?」と思ってしまったのだ。もちろん細かなアップデートは多々あるのだろう。しかし、iPhone 12より数万円高く払うほどの魅力は感じられなかった、というのが率直な感想である。とはいえ、iPhone人気はいまだ根強い。
依然としてiPhone一択な若年層
“iPhone離れ”が囁かれる一方で、若者のあいだでは依然としてiPhone人気が根強い。「中学生の妹にスマホを買い与える際、AndroidだといじめられるからiPhoneが欲しいと言われて困った」というXでの投稿が大きな反響を呼んだのも記憶に新しいが、若年層の多くはいまだに“iPhone一択”と考えているのが実情だ。

2024年9月、MMD研究所が行なった調査によると、iPhoneのシェア率が最も高いのは20代女性で、実に80.9%に達する。これは60代女性の倍以上の数字であり、若年層におけるiPhone人気を如実に示している。男性でも同様に、20代が69.9%と最も高かった。
若者がiPhoneを好む背景には、「AirDrop」が使えないと不便だという実際的な理由もある。しかし、より大きな要因は「みんながiPhoneだから」という同調圧力だろう。もしそんな若年層のあいだに「iPhoneじゃなくてもよくない?」という風潮が広がり始めたとすれば、それこそ“iPhone離れ”の本格化を象徴する出来事となるはずだ。
文/宮沢敬太