
今年8月に配信されたWindows 11の更新プログラム「KB5063878」が、SNSを中心に大きな話題になった。
このプログラムには重大なバグが存在し、何とPCに内蔵されたSSDを破壊してしまうという話がSNSで拡散されたのだ。結論から言えば、この話はWindowsの開発・運営者であるMicrosoftとSSDメーカーのPhisonが共に「問題を再現できなかった」としている。我々一般ユーザーが何かしらの対策をする必要はない、ということだ。
とはいえ、「SSDを破壊する可能性のあるバグ」というのは極めて衝撃的で、それ故に我々は「個人でできるデータ防衛策」を嫌でも講じなければならない状況に置かれた。これはむしろ「幸いな出来事」と言えるのではないか。
バグのせいでSSDのデータが吹っ飛ぶ!?
今時のPCにはSSDという記録媒体が内蔵されている。
少し前までのPCはデスクトップ・ノートブック共にHDDが内蔵されていたが、近年ではより動作が早く衝撃にも強いSSDが安価になり、そちらが主流になった。筆者自身も、SSDのお世話にならない日はない。
仮にSSDの中のデータがすべて消えてしまったら、その瞬間から筆者は仕事ができなくなる。
今使っているノートPCには、あらゆる情報が詰まっている。執筆した記事自体はクラウドかしているため消えることはないが、動画制作ソフトやそれで作った動画、ゲーム(筆者はゲームメディアでも筆を執っているため、これは遊びではない)、その他諸々の重要ファイル……。それらが一気に消えてしまった場合、復旧には相当な時間がかかるはずだ。
故に、「Windowsの更新プログラムにバグがあり、そのせいでSSDに甚大なダメージが生じる」という話には敏感にならざるを得ない。
結局は「冤罪」か
しかし、現状(2025年9月8日の執筆時点)ではMicrosoftとPhisonが検証に乗り出しているものの、報告されている通りのバグ及びSSDの破損は再現できていない。
これについては、Xでの情報が錯綜したせいで話がこんがらがっている側面も見受けられる。Phisonを名乗る偽造文書も拡散されたようで、余計に混乱が広がってしまった模様。独自にバグの存在を検証しようとするテクノロジーメディアも登場したが、やはりバグの発見には至っていない。
以上の流れから、KB5063878問題は「冤罪」とする見方が9月に入って主流となっている。
が、この騒動は特にITに詳しくない一般ユーザーにも「データの自己防衛」を意識させるという効果をもたらしたのではないか。自分にとって大事なデータは、デバイス内保存だけでは不十分という意識が見事に伝導したのだ。
外部ストレージを用意しよう!
筆者はライターのため、「白い紙の上に記事を書く」ということを毎日行う必要がある。
その原稿はもちろん保存しなければならないのだが、もちろん今日びの原稿は本物の紙ではなく、PCの中のデジタルデータ。ただし、筆者の場合はGoogleドキュメントを使っているため、原稿はすべてクラウド保存されている。
データのクラウド保存という仕組みは、此度のKB5063878問題のような騒動が発生した際に改めて頼もしさを感じざるを得ない。
ただし、動画のような大容量のデータを(筆者はYouTubeチャンネルを運営している)クラウドサービスに保存すると、あっという間に利用可能容量に到達してしまう。そこで登場するのが、外付けのHDDまたはSSDだ。
普段使いのデバイスではない場所にも同じデータを保存することで、どちらが壊れた場合にも難なく対処できるという環境を普段から整えておく必要がある。筆者自身もそうした備えを整えているが、ここで注意しなければならないことが一つ。データ保存用のHDD・SSDをAmazon等の通販サイトで購入する時は、必ず名の知れたメーカーの製品を買うこと。中には「16TB容量の8,999円のSSD」というものがあったりもするが、これは間違いなくババ、引いてはいけないジョーカーだ。「“16TB”はウチの製品のブランド名で、容量のことは一言も言ってない!」などと開き直るメーカーもある。
ここはバッファローやサンディスクやエレコムといった、誰でもその名を知っているメーカー及びブランドを選ぼう。
アップデートを遅らせる手段も
以下はあくまでも自己責任でやっていただきたい対策だが、「Windowsのアップデートを遅らせる」という手段もある。

「設定」から「Windows Update」に入ると、「更新の一時停止」という項目があることに気が付くはずだ。これを操作して、Microsoftから配信された更新プログラムのダウンロードを遅らせることができる。たとえば、iPhoneでも発売直後に購入するのではなく「様子を見てから」と数ヶ月後に入手する人がいる。なぜ、そのようなことをするのか。発売直後の購入という役割はガジェットマニアとテクノロジーメディアに任せて、彼らの評価を見てから購入を考える……という発想だ。
つまるところ、「OSアップデートの管理」もある程度は自分の手で行う必要があるということだ。そうでない場合も、重要データのバックアップは最低限やっておかなくてはならない。
KB5063878問題は、そうしたことを広く知らしめたのだ。
文/澤田真一
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