
スポーツや部活で「努力しているのに上達しない」と感じた経験は多くの人があるのではないでしょうか。目指すハードルが高く、なかなか超えられないケースもありますが、根本的に上達する方向そのものを錯覚している場合もあります。ここが合っていないとその努力が徒労に終わってしまうかもしれません。
この記事では、上達しない原因、上達を加速させる方法、上達せずに心が折れそうになったときの対処法をお伝えしていきます。
1.なぜ上達しないのか?
スポーツや部活で「なかなか上達しない」「努力しているのに認めてもらえない」と嘆く方は多くいます。大半の方は真面目に練習に打ち込み、サボっているわけではありません。むしろ、ストイックな人ほどこのような悩みを抱えやすいのではないでしょうか。
団体競技、個人競技に関わらず人が上達する=成長するロジックは全く同じです。それを理解せずに努力しても残念ながら無駄な努力が増えるだけです。上達するために絶対押さえておくべきポイントは、
(1)上達したと誰が評価するのか?
(2)評価者が求めるゴールは何なのか?
のたった2つです。このポイントを認識しておくことで最速で上達し、かつ大きな達成感を得ることができるはずです。それではスポーツを例に挙げて具体的に解説していきましょう。
2.誰が評価者なのか?
「あなたの努力や上達は誰が評価しますか?」この問いに即答できないとヤバいです。完全に個人の趣味でやっているスポーツであれば評価者はご自身で構いません。しかしながら、部活やプロスポーツではそうはいきません。監督やコーチなどが評価者になります。評価者が求めていない方向に努力・上達してもそれは決して褒めてもらえません。野球で4番打者を任せられているのに、バントばかり上手くなってもダメです。マラソン選手なのに、短距離走が速くなっても褒められません。プロなのに監督へのゴマすりが上手くなってもしょうがないのです。これらは極端な例ですが、評価者が求める方向と、自分が努力して上達する方向にズレがあるとその上達は適切に評価されません。こうなると自分自身も「努力しているけど上達していない・・・」と落ち込んでいってしまいます。
上達するためにまず実行すべきなのは、自分の評価者が誰で、その評価者が何を求めているかを明らかにすることです。趣味レベルでないのなら、ただの自己満足で終わらないようにしてください。
3.ゴールを決めよう 完全結果、結果点
自分の評価者を明確にした後は、その評価者が何を求めているか(どの方向に、どのくらい上達してほしいか)を明確にしましょう。マラソンを例にすると、ハーフマラソンなのか?フルマラソンなのか?どのくらいのタイムが求められているか?など自身が目指すべきゴールを決める必要があります。
このときに注意すべきことがあります。評価者と自身のゴール設定の認識に曖昧さがないか必ずチェックしてください。例えば、コーチから「フルマラソンをなるべく速く走れるようになって」と言われたとします。これはあなたとコーチの認識が一致するでしょうか?もちろん無理ですね。「なるべく速く」は人によって異なります。あなたが全力で走ってどれだけ「これが私の限界だ」と思っていても、コーチからすると「もっと速く走れるだろ」となりかねません。こうなるとあなたは努力したつもりなのに、評価者から褒められないという残念な事態になってしまいます。
ではどうすればよいか?双方の認識にズレが生じない形でのゴール設定をする必要があります。一番わかりやすいやり方は数値化することです。たとえば、「フルマラソンを3時間以内で完走できるようになって」と指示されれば目指すべきゴールが極めて明確ですね。2時間59分で完走できればあなたもコーチも「出来た」と認識しますし、3時間1分で完走したならお互いに「出来なかった」と認識がズレなくなります。
余談になりますが、日本語は非常に便利な反面、曖昧さが多い言語でもあります。仕事の場面などでも「今日中」と指示があったときに、「定時まで」と考える人もいれば「23:59まで」と捉える人もいます。「努力します」「頑張ります」などはもってのほかです。必ず人によって程度がズレるので注意してください。ついつい普段のコミュニケーションで使いたくなりますが、評価者が目指してほしいと考えているゴールと、自分が目指すべきと認識しているゴールが本当に合っているかを一度立ち止まって確認することが重要です。
4.「努力」の罠
これまで自身の努力を評価する評価者を明確にし、評価者が求めるゴールの認識を合わせることが重要であると述べてきました。この2つを意識するだけで上達速度や自分の達成感は大きく変わります。次に、さらに成長速度を加速する方法をお伝えします。キーワードは「漫然と努力するだけでは成長が遅い」です。努力自体を否定するわけではありませんが、目指すべきゴールが明確になったからといってルーチンワークのような漫然とした努力を繰り返しても残念ながら上達スピードは上がりません。努力にも「質」があることを理解する必要があります。
上達の加速に必要な要素の1つ目はズバリ「集中力」です。100mを12秒以内で走るというゴールを目指していたとします。ただ漫然と100m走を繰り返すのと、「足をもっと上げてみよう」「手の振りを意識しよう」など毎回テーマを決めて繰り返すのではどちらがより上達しそうでしょうか?もちろん後者ですね。スポーツや勉強など何か上達しようと思えば、具体的なテーマを決めてそれに集中することでより早く身に付きやすくなります。
もう一つ大切な要素は「振り返りと改善」です。先ほどの100mの例で「足をもっと上げる」を意識しましたが、残念ながら15秒かかってしまいました。さて、次に走るときは「足をもっと上げる」だけでよいでしょうか?同じやり方では同じようなタイムになってしまうと容易に想像できます。ここで大切なのは、目標に届かなかった事実を受け入れ、何が悪かったのか/改善点はどこかを振り返り、何かやり方を変えるということです。やり方を変えるだけで劇的にタイムが伸びる可能性は高くないかもしれませんが、走りのフォームを変える、シューズを変える、コーチを変える、走る前に聞く音楽を変える・・・ちょっとした変化の積み重ねによって徐々にタイムが縮まっていくことが期待できます。大切なのは「振り返りと改善」を高速で繰り返すことです。求められる方向に、集中力が高い状態で努力するようにしましょう。
5.モチベーションを維持するには?
最後に上達するためのモチベーション維持のコツをお伝えします。努力してもなかなか上達せず、心が折れそうになるときは誰にでもあります。その場合は、いきなり大きなゴールを目指すのではなく、その手前に小さなゴールを設定して、まずはそこを目指してください。
フルマラソンを走ったことがない人がいきなりフルマラソンに挑戦しても失敗するだけです。まずは5km走れるようになる。次は10km走れるようになる。その次はハーフマラソンを完走できるようになる・・・。のように最終ゴールの手前側にいくつかのチェックポイントを設けて、まずはそれを目指してください。
小さいゴールとは言え、コツコツと達成していくことで達成感を感じることができ、「しんどかったけど、もうちょっと頑張ってみようかな」という気持ちが芽生えてくるはずです。
【まとめ】
この記事では部活やスポーツで上達するためのコツをお示ししました。
(1)上達したと誰が評価するのか?
(2)評価者が求めるゴールは何なのか?
この2つを常に意識してください。その上で、最終ゴールが難しすぎるなら小さなゴールを設け、努力したが到達できなかった場合は、「なぜダメだったか」「何を変えるか」を常に実行してください。
この手法はスポーツに限らず、仕事や趣味でも使えます。皆さんが正しい方向に努力して、上達されることを願っています。
文/識学コンサルタント 高塚勇希