
9月12日(金)、「高輪ゲートウェイシティ」にルミネ史上最大規模となる「ニュウマン高輪」が本格開業した。
今回開業したのは「South」「North」エリアの約4万4,000㎡と、「LUFTBAUM」エリアの約8,000㎡。合計約5万2,000㎡で、国立競技場のフィールドが約2.5面入るスケールである。
「商業の枠を越え、百年先のまだ見ぬ生活価値をデザインする」——そのパーパスを一歩ずつ具体化する舞台であり、〝圧倒的なリアル体験価値〟〝楽しく心地よく社会とつながる体験〟〝街・地域との共創価値〟という3つの思想が随所に息づいている。
最寄りの高輪ゲートウェイ駅は、品川〜田町の再開発で2020年に暫定開業、2025年に「高輪ゲートウェイシティ」第1期と同時に本開業した。江戸の玄関口だった地は、いま〝未来へのゲートウェイ〟として動き出した新街区となっているのだ。
さらに、来春(2026年3月予定)には追加エリアの開業も見込まれており、街としての広がりはさらに加速する。今回はオープンに先立つプレス発表会に参加し、現地の空気とともにその全貌をレポートしていく。
人気店から新業態までそろう「South」「North」エリア
まずは多くのショップが並ぶ「South」「North」エリアから紹介していきたい。
■圧倒的に歩きやすく、見やすい店内

「ニュウマン高輪」でまず驚くのは、各店舗のゆとりある広さ。郊外型のショッピングセンターを思わせるスケールで、ぶらぶら散歩が似合う。
それぞれの店舗は四角い区画でカチッと仕切られておらず、どこかに緩やかな曲線が入る空間デザインだ。圧迫感がなく、小径を歩いている感覚になる。
歩みを緩め、視線をひと巡りさせると、 思いがけない色や形のアイテムが目に入り、つい別の店に立ち寄りたくなる。寄り道を誘う導線のしかけだ。
このように、「South」「North」エリアには「ニュウマン高輪」の思想のひとつ、〝圧倒的なリアル体験価値〟がにじむ。

店舗内もゆったりと什器が配置され、人同士がすれ違えず立ち止まる、なんてこともない。気になる店でものんびり見て回れるのは、買い物好きにとって大きな魅力だ。
■好きなお茶を心ゆくまで選べる提案型ショップが楽しい!
従来のLUMINEやNEWoManの人気店が顔をそろえる一方、ルミネ初出店79、 新ブランド11、 新業態10とフレッシュな顔ぶれも多い。
新しい提案型ショップが並ぶ中、筆者が注目したのは「茶々水 SASUI 伊藤園」だ。

「茶々水 SASUI 伊藤園」は、〝日本人が育んできたお茶を愉しむ心〟を、いまの暮らしに合う形で体験できるコンセプトショップ。
店内では、香りや味を確かめながら自分だけのブレンドを選べたり、茶葉やお茶請けを買ったり、お茶を自由な発想で楽しめる。肩の力を抜いて、「好き」を見つけに行きたい場所だ。
■ユーズドセレクトショップ「RAGTAG」は目的に合わせた2拠点でオープン
〝好き〟を循環させる仕組みを、実際に体験できる場がNorth 5FとSouth 4Fに広がる「RAGTAG」だ。
「RAGTAG」とは古着の買取・販売を行うユーズドセレクトショップで、買うならNorth 5F、手放すならSouth 4Fと、目的に応じて2拠点を構える。

さらに、10月12日(日)までは「CFCL × RAGTAG × ニュウマン高輪」のポップアップも展開中。ここでは、1点以上の買取・引取が成立すると、館内で使える500円チケット(2,000円以上の購入が対象)の特典もある。
「CFCL」は、着なくなった自社アイテムを回収→修復→再流通する循環型サービス「Next Loop」を進めていて、ポップアップ会期中はRAGTAGが買取対応をサポートしているという。
■「バーミキュラ」の旗艦店が移転!

老舗鋳造メーカー 愛知ドビー が2010年に生んだ、国産の鋳物ホーロー鍋 「バーミキュラ」。その世界観を体験できる場として、旗艦店 「バーミキュラ ニュウマン高輪」 として移転オープン。
店内はフラッグシップショップ、レストラン、ベーカリーの3業態を集約。「最高のバーミキュラ体験」をテーマに鋳造ホーロー鍋だからこそ引き出せる料理の美味しさ、ブランドの世界観、そしてメイド・イン・ジャパンのものづくりを、ひと続きで楽しめる。
偶然の出会いを楽しむ、小さな街「こもれびら」とは?
多彩なショッピングが並ぶ「South」「North」エリアの中でも特別なのが、South5Fのコンセプトフロア「こもれびら」だ。
「こもれびら」とは、約4000㎡のワンフロアをまるごと使い、誰もが思い思いに過ごせる〝小さな街〟のような空間。ショッピングに疲れた時やのんびり過ごしたい時、自然と足が向く場所だ。
その核となっているのが、入場料がある本屋として知られる「文喫」による「BUNKITSU TOKYO」。ここでは無料エリアを拡大し、店舗面積1,000坪超の面積に何と10万冊超の本をそろえる。

1時間1100円の入場料で入れる有料エリアは、静かに過ごす、仲間とにぎやかに楽しむ、仕事に集中する、といった3カ所の目的別カフェラウンジが広がる。「ざわついて集中できない」「子連れだと気が引ける」といった心配をせず、自身に合った空間を気ままに使えるのがいい。

有料エリアの本棚はちょっとユニークなのが特徴。本屋でよく見る平置きも、ジャンルを示すプレートもない。雑多に置いて、重ねて、立てて並べてある。
立てた本の上に別の本がちょこん。表紙を見せたディスプレイの後ろに、実は違う本。そんな仕掛けがあちこちにあって、思いがけない一冊に出会える。
どこか懐かしいのは、子どものころの自宅の本棚を思い出すから。きっちり分類より、好きな本を好きに置いたあの感じ。ここでは、そのゆるさが出会いの楽しさになっている。

緑を歩けば出会える、LUFTBAUMの食空間

地上150m、約8000㎡に広がる大規模植物空間「LUFTBAUM」も施設の目玉だ。
各地から集められた500本超の珍しい植物が自然のまま息づき、緑の合間をくねくね歩けば、まるで森をさまよっている気分になる。


エレベーターを降りて、緑の小径を進めば、ふいにレストランの入口が現れる。緑の連続の中に入口が点在しているのが面白い。

「〆蕎麦 燦々」は、「翠の庭」を抜けて木々の間の通路をそのまま進むと現れる。季節ごとに最適な産地から仕入れた自家製の十割蕎麦は香りと喉ごしが自慢。夜のメニューは毎日変わるという。

スペース中央には、ローマのパンテオンを思わせるコーヒー・バー&ラウンジ「LOOPS」。
喫茶店とバーの要素を融合しながら独自に再編集したメニューは、トップバーテンダー・野村空人氏と、日本橋兜町の「Neki」シェフ・西恭平氏による共同開発。ここならではの一杯と一皿が楽しめる。

そして、ニュウマン高輪が掲げる 「街・地域との共創価値」 を体現するのが、八芳園がプロデュースする割烹「BUTAI」だ。
八芳園は白金台に広がる、約400年前に作庭された日本庭園を有する老舗。海外の賓客をもてなしてきた実績も持つ。この街区の文脈に近い存在で、その知恵やおもてなしをこの場所に持ち込み、食を通じた〝時間〟と〝空間〟の体験へと昇華している。

未来をデザインする、新しい街の体験へ
欲しものの多くはネットで買える時代。店に行く意味を再定義してくれるのが「ニュウマン高輪」だ。
「ニュウマン高輪」は自らを「単なる商業施設ではない」と語る。そのことばは、この空間を歩けば腑に落ちる。そこには〝買い物〟や〝食事〟といったただの実用ではなく、それに付随する体験の試行錯誤が散りばめられていた。
気になるなら、まずは体験。緑のあいだを満たす光と音に包まれる時間は、買い物以上のご褒美になる。
オープン初日、いち早く確かめに訪れてみてほしい。
取材・文/内山郁恵