
夏はペットの迷子が増える季節。花火の大きな音で驚いたり、バイクの轟音で窓の網戸から出て迷子になる犬や猫が増えている。実際、ペットの落とし物は年間2万5000件以上もあり、2024年に発表された「過去1年間に全国の警察に届けられた落とし物の数」は2979万点。うち、犬が1万2722匹、猫が4382匹、鳥やカメなど「その他」が8431匹となっている。
マイクロチップの着用が義務付けられた現在でも、迷子になったペットを探し出すのは意外と難しい。そこで飼い主さん達に注目されはじめたのがスマートトラッカーと呼ばれる位置情報ツールである。スマホアプリから位置情報を検索できるもので、今夏はじめてAppleのAirTag(エアタグ)を首輪に着けている大型犬をサービスエリアで見かけた。
飼い主さんに使い勝手を聞いてみると、川遊びなどのアウトドアでは使えず、AirTagの商品はiPhone利用者に限定されるらしい。とはいえ、「大型犬なので盗まれるということは予想してないんですが、近所で誘拐された子がいたんで、着けていると安心なんですよねー」と言われた言葉は大きかった。ぜひ私もスマートトラッカーを使ってみたい。
今回はLife360のスマートトラッカーTile(タイル)のモデルの中から「Tile Mate」を実際に使ってみて、メリット・デメリットを紹介しよう。協力してくれたのはひびき動物病院院長の獣医師岡田響先生と、ワンコのじゅあくん。岡田先生はAirTag利用者で、スマートトラッカーを日常的に使っていると言う。
Tileってどんな商品?
Tile Mateはキーホール付きで、カラビナを使えばワンコの首輪に取り付けは簡単。じゅあ君はブラックカラーがお似合いだが、EC限定でカラーはブラック・ホワイトと、ブルー・グリーンピンク・ライトブルーをセットにした4個パックも合わせると全6色。毛色に似合う色を探すのも楽しそう。電池は交換不可で3年間使用可能。オープン価格は3980円となっている。
Tile Mateの特性だが、防水性が高く、水深2メートルまで最長 30 分間、沈めても利用可能となっている。雨の日の散歩にも使えるのは大変ありがたい。また、豪雨による河川の氾濫などで、行方不明になっても探すことができるのは安心感がある。
さらにアプリはTileだけでなくLife360の両方で使える。また、Life360アプリを入れると、SOS機能が使えて、Tile Mateのボタンを押すと、スマホへアラームが鳴る仕組みになっている。
最初、説明を聞いた時は「うちのワンはボタンを押せないから、あまり使わないだろう」と思っていたが、岡田先生は「散歩前にスマホを探す時に便利だった」と教えてくれた。私も5回に一度は犬の散歩でスマホを忘れて取りに帰るので、意外と隠れたメリットかもしれない。
外出先やBluetooth圏外にワンコが誘拐された時は、Tileネットワークが機能する仕組みだ。他のTileを利用している人がワンコの近くを通ると、その位置情報がクラウド上に送信されて、遠く離れた私のアプリにも通知が届く仕組みである。
アプリの匿名性が高いので、誰が教えてくれたのかはわからないが、「世界中のTileユーザーさんが私のワンコの味方になってくれる」と思うととてもありがたい。また、自分が知らないうちに探している人へ情報を届けているかもしれない点も良かった。ペット飼い主さんに、ぜひお薦めしたい点の一つである。
実際、Life360の月間アクティブユーザーは世界で7000万人を超える。これらの人たちが「うちの子探し」に協力してくれる。
実際に使ってみて良かった点、悪かった点
実際の使い勝手だが、Tile Mateは縦37.6×横37.6、厚さ7.2ミリで、犬種によってはやや大きい。今回、取り付けはカラビナを使ったが、付け外しは簡単なので、日常的につけておくというより、散歩中や外出する時など、迷子の危険性が高い時にのみ着けるやり方がお薦めである。
電池が内臓されているため、飼い主さんの留守中に齧って誤食するようなことがないようにすることは必須。岡田先生はこの点について「装着方法についてはまだ課題があるとは思います。エアタグの場合でも、色んなカバーが売っていて、おしゃれ感があるものも多いのですが、やっぱり多少邪魔な感じが残ります」と言う。
さらに、「首輪にはめ込めるようなタイプが便利そうですが、このあとそういうアクセサリーが出てくるとペット用で用途が広がるのではないかと思っています。しかし、重さはほとんど気にならないと感じられるので、落とさないように、ぶらぶらしない場所で、なるべく体に密着する部分に装着できれば、わんちゃん本人もあまり気にならずに日常利用できるのかなと思います。
ちなみにボタン電池は飲み込むとかなりヤバいので、本体を壊されて電池が見当たらない場合はすぐに動物病院に向かってください」とアドバイスしてくれた。
Bluetooth接続範囲は公式では約105mとなっており、実際に使った印象ではもっと広く、120m近くまで検索可能だった。この範囲は雨が降っても変わらなかった。
私自身、心配だったアプリのダウンロードは、QRコードを使えばだれでも一発で可能。さらに表示にワンコのイラストがあり、他のTile商品と併用できる。一つのアカウントで使える愛犬の頭数は機種やOSによって異なるが、5頭までなら十分に対応可能。もちろん、スマホの機種依存は無く、iOS・Androidに対応している。
デメリットではないが、音や振動が知らせてくれる機能がついているが、実際、ペットを探す時に音で知らせると、かなり驚いてしまう。スマホの位置情報で、いる場所を確認する使い方が一般的だと思うので、音の設定は最初からゼロにして利用したい。
最後にワンコの迷子について、岡田先生はこんな体験談を紹介してくれた。「実際にあった話ですが、飼い主さんが散歩中に外で倒れられて、通行人のどなたかが通報してくれて、救急隊が来た時にはわんちゃんだけが人に相手できる状況でしたが、首輪などには情報が何もなく、倒れている飼い主さんは誰かわからないし、どこの誰のわんちゃんかもわからず、救急隊から当院に問い合わせの連絡が来たことがあります。
こういう時に、どなたか家族の方の連絡先にGPSが登録されていたら、それをきっかけにTileのボタンを押すことで、倒れた本人以外に連絡がいく、ようなことも可能になるのかな、と思いました。
メモなどでだれかがTileのボタンを押せる工夫をしておくことで、遠隔地から家族とペットのいざというときの連絡先に使えると良いのかも?と思いました。
必ずトラッカーである必要はないかもしれないのですが、お散歩している時は、わんちゃんと飼い主さんは誰なのか?がわかるものを一緒に持ち歩くのも大事だと思います」。ワンコの安全性だけでなく、人にも優しいツールだった。
ひびき動物病院院長
岡田響先生
ひびき動物病院
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電話番号: 045-832-0390
https://thetileapp.jp/
文/柿川鮎子