「水銀に関する水俣条約」により、蛍光灯の製造や輸出入は2027年末までに段階的に禁止されます。パナソニックの「ミスターLED」に聞いたところ、蛍光灯からLEDへの交換を推奨。器具の劣化や火災リスクを考慮し、照明器具ごと交換する方が安全です。また、省エネや快適性の向上、長期的な電気代節約にもつながります。交換費用は業者によって異なりますが、補助金制度の利用も有効です。
目次
みなさん、自宅やオフィスで使っている蛍光灯が、2027年に禁止されるという話を聞いたことがありますか?
「急に言われても、どうすればいいの?」と不安に感じる方もいるかもしれません。
実は、蛍光灯の製造や輸出入が、国際的な取り決めによって段階的に禁止されることが決まっているのです。
そこで、禁止された理由や具体的な時期、禁止の後、どうすればいいのか? パナソニックの「ミスターLED」こと鈴木 勝さんに教えてもらいます。

パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社 ライティング事業部 ライフスタイルライティングBU 営業企画部 CMJ管球課 課長 鈴木 勝(まさる)さん
蛍光灯が禁止になる理由と種類、時期
蛍光灯が禁止になる理由は何でしょうか? また禁止される蛍光灯の種類や時期について、「ミスターLED」に聞いてみましょう。
■Q.蛍光灯がなくなるって本当?
A.「はい、蛍光灯の製造と輸出入は、2027年末までに段階的に禁止されます。これは『水銀に関する水俣条約第5回締約国会議』で決定されました。

ただし、禁止されるのは製造と輸出入です。流通在庫は残りますので、27年末で蛍光灯が一切使用できなくなるというわけではありません。ただし、流通在庫がどの程度残るかはわかりませんので、早めにLED照明に取り替えていただくことが大切です。」(鈴木さん)
【参考】「水銀に関する水俣条約第5回締約国会議」の結果について|経済産業省
■Q.なぜ蛍光灯が禁止になるの?
A.「蛍光灯が禁止されるのは、『水銀に関する水俣条約』で水銀を添加している製品の規制が見直されたためです。蛍光ランプには微量ですが水銀が含まれています。無機水銀なので健康被害というよりは、『より環境負荷を軽減する措置』として規制の対象となりました。

蛍光ランプに含まれているのは金属水銀であり、有機水銀とは異なります。パナソニックでは、2016年末頃からランプ本体に水銀を使用していることを示すマークを表示しています」(鈴木さん)
■Q.禁止になる種類と時期を教えて
A.「蛍光灯にはさまざまな種類があります。それぞれ、公的な禁止期限とパナソニックの生産終了時期が異なっていますので、こちらの表にまとめましたので、ご確認ください。

なお、パナソニックでは、直管・丸形蛍光ランプなどは2027年9月末まで、ツイン蛍光ランプ(コンパクト形蛍光ランプ)は2026年9月末までに生産を終了します。
お好みのLED照明器具が手に入りにくくなったり、交換に電気工事が必要な場合なども想定されます。依頼が混み合う可能性がありますので、早めに器具ごと交換することをおすすめします」(鈴木さん)
■Q.電球ってどうなるの?
A.「電球には『電球形蛍光ランプ』と『白熱電球』がありますが、それぞれ状況が異なります。それぞれをご説明します」(鈴木さん)
電球形蛍光ランプ
「蛍光灯の一種のため、2026年末までに製造・輸出入が禁止されます。パナソニックは、電球形蛍光灯『パルックボール』を生産してきましたが、2024年3月末で製造終了しています」(鈴木さん)
白熱電球
「実は、白熱電球は『水銀に関する水俣条約』の禁止対象外です。しかし、当社は一般電球(E26口金)の生産を2012年10月末に終了しており、小形電球(E17口金)も2027年9月末に生産終了を予定しています。どちらの場合も、より省エネで長寿命なLED電球への取り替えをおすすめします」(鈴木さん)
蛍光灯が禁止になったらどういう対処をすればいいの?
禁止になる理由や時期はわかりました。
それではその後、どういう対処をすればいいのでしょうか?
こちらもしっかり、教えてもらいましょう。

■Q.蛍光灯からLEDにどうやって交換すればいい?
A.
光灯器具のLED化は「器具まるごと交換」を推奨
「蛍光灯器具の内部には『安定器』という電源回路があります。これは蛍光ランプを最適に発光させるよう設計されています。この安定器にも3種類ほどあり、ランプ交換のみでLEDする際に、この組み合わせを間違えると発煙や発火のリスクがあります。
またランプ交換のみですと、この安定器の経年劣化を止められませんので、過剰な長期使用による予期せぬ不具合も懸念されます。
従ってLED化をご検討の際は、ご面倒でも器具ごとの交換を推奨しております。
また、器具は使用年数10年を過ぎると故障率が高まり、内部の劣化も進みます。15年経過した器具は危険が伴うため、すぐに交換することをおすすめします」(鈴木さん)
自分で交換できる場合
「天井に引掛シーリングなどの配線器具がついている場合は、シーリングライトやペンダントライトはご自身で取り外し・取り付けが可能です」(鈴木さん)
電気工事が必要な場合
「天井や壁に直付け(または埋め込み)されているシーリングライト、キッチンや洗面所の照明器具、コンパクト形蛍光灯(ツイン蛍光灯)を使ったダウンライトなどは、電気工事が必要となります。これらの作業には『電気工事士』の資格が必須ですので、お近くの電器店・工事店にご相談ください」(鈴木さん)
電球形蛍光灯の場合
「電球形蛍光灯は、電源回路がランプ側に内蔵されています。口金や本体のサイズが合えば、ご自身でLED電球に交換するだけで済みます」(鈴木さん)
■Q.交換の費用ってどれくらい?
A.「交換費用は、事前調査や工事費、出張費など、依頼する電器店・工事店によって異なります。恐れ入りますが各店舗へお問い合わせをお願いします。一般的な電気工事の場合は、1か所あたり数分~15分程度が目安です」(鈴木さん)
初期費用を抑える方法
「オフィスや店舗など、非常に多くの蛍光灯が使われている環境では、どうしてもイニシャルコストが高くなってしまいます。そうした場合は、LED照明を割賦払いやリースで導入し、初期費用を抑えるプランも当社では用意しています。導入する機器に電気代削減効果が見込める場合、実質負担を軽減することができます」(鈴木さん)
お得な補助金制度
LED照明器具などの省エネ家電の購入には、自治体の補助金制度が利用できる場合もあります。お住まいの地域で利用できる制度があるか、自治体のWebサイトなどで確認することをおすすめします。
パナソニックのWebサイトでも『補助金検索』ツールが提供されています」(鈴木さん)
【参考】補助金検索 | DENZAI TERASU – Panasonic
長期的な電気代の削減
「LED照明器具に交換することで、電気代を大幅に削減できます。例えば、当社の2010年発売のツインパルック蛍光灯器具からLEDシーリングライトに交換した場合、10年間で約2万9000円の節約が期待できます。
また、2011年の発売当初のLEDシーリングライトと比較すると、現行モデルは消費電力が半分程度になっています、そのためさらに大きな省エネ効果が期待できます」(鈴木さん)
※パナソニック2010年発売100形ツインパルック蛍光灯器具(HHFZ4340)と2025年発売LEDシーリングライト(HH-CM1234A)との比較。
100形ツインパルック蛍光灯器具(HHFZ4340)は生産完了。
電気料金は、1日5.5時間、年間2000時間使用。電力量目安単価31円/kWh(税込)[2022年7月改訂]で計算(パナソニック調べ)
■Q.LEDに交換したら気をつけたいポイントを教えて
A.「LED照明は省エネや長寿命だけでなく、快適性も向上しています。いくつかポイントをご紹介します」(鈴木さん)

明るさ・光色の調整で快適なくらしを
「LED照明は、明るさや光の色を調整できる機能を持つものが多くあります。部屋の雰囲気や気分に合わせて調整したり、紫外線が少ないため、虫が寄りにくくなったり、長寿命で廃棄の手間が減るなど、さまざまなメリットがあります」(鈴木さん)
選び方のポイント
「部屋の畳数に合った照明を選ぶのが基本ですが、快適性を高めるためには、実際の畳数よりワンランク上の畳数表示の器具を選ぶことをおすすめします。特に、加齢による視力低下が気になる方や、部屋の内装色が濃い場合などで有効です。
スマホやスマートスピーカーで操作できるもの、多彩な空間演出ができるもの、学習や在宅ワークに適した光を搭載したものなど、機能性も重視してお選びください」(鈴木さん)
「まぶしさ」について
「LEDは指向性があり、そのため光の広がりが狭いと思われがちです。しかし、最近のLED照明器具はレンズやカバーの工夫により、蛍光ランプに近い光の広がりを可能にしています。
そのため、蛍光灯器具からLED照明器具に交換しても、違和感はほとんど感じられないはずです。まぶしさが気になる方向けに、まぶしさを抑える機能を備えた商品も多数ラインアップされています。そちらもご確認ください」(鈴木さん)
ブルーライトや睡眠への影響
「LEDが発する青色光(ブルーライト)について心配される方もいますが、自然光や白熱電球、蛍光灯と比較しても、同じ明るさであれば青色光網膜障害のリスクはほぼ同じくらいです。
そして、睡眠を促すホルモンであるメラトニン分泌への影響も、LEDが蛍光灯などの従来光源と比べて特別高いということはありません。
特に、夜寝る前などは暖かい色の光で暗くすることが重要だといわれています。LED照明は明るさや光の色を簡単に切り替えられるものが多くあるため、そうした環境が作りやすいというメリットもあります。」(鈴木さん)
古いLED照明器具の交換目安
「寿命の長いLED照明器具でも、使い続けると明るさが徐々に低下する『光束減退』という現象が起こります。パナソニックのLEDシーリングライトは2011年から発売しているので、登場してから10年以上が経過しています。
もし10年以上お使いのLED照明器具がある場合は、点検・交換を検討することで、初期モデルと比較すると、同じLEDでも最新モデルでは消費電力が半分近くになっているものもあります。」(鈴木さん)
使用済み蛍光ランプの正しい捨て方
「ご家庭で使われた蛍光ランプは、微量の水銀が含まれているため、ガラス破損に注意し、お住まいの自治体の回収ルールに従って正しく廃棄してください。
事業所などから捨てる場合は産業廃棄物となり、専門の処理業者に依頼することが義務付けられていますのでご注意ください」(鈴木さん)
【参考】蛍光灯製造・輸出入禁止やLED照明についてのご質問|パナソニック
【まとめ】
「水銀に関する水俣条約」に基づき、蛍光灯は2027年末までに段階的に製造・輸出入が禁止されます。照明器具の劣化による発火リスクを避けるためにも、蛍光灯からLED照明への器具ごとの交換が推奨されています。
LED照明は、大幅な電気代削減や、明るさ・光の色を調整できるなど快適性の向上につながります。さらに、自治体の補助金制度などを利用すれば、導入コストを抑えることも可能です。
この機会に、オフィスの照明環境を見直し、安全で快適、そしてエコなLED照明への切り替えを検討してみてはいかがでしょうか。
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※当記事に掲載している価格などのデータは2025年10月時点でのものです。
文/中馬幹弘
編集/ライター。慶應義塾大学卒業後、野村證券にて勤務。アメリカンカルチャー誌編集長、モノ情報誌編集を歴任