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1本100万円!五島列島で造られる〝幻のジン〟に学ぶ、地方から新しい価値を作る方法

2025.09.15

長崎県の五島列島は福江島に、小さなジンの蒸溜所がある。3年前に、大手酒造メーカーのキリンビールを早期退職した3人が始めた「五島つばき蒸溜所」。彼らが作る『GOTOGIN』は、月間5000本程度という生産量の少なさ故の希少性もあって、一部では〝幻のジン〟などとも言われている。

過去の記事はこちら

キリンビールを辞めて五島列島へ、ヒットメーカー3人が造る“こだわりすぎ”クラフトジンの味

長崎県西部に位置。五島という名前とは裏腹に、実際には大小150以上の島々が連なる。朝ドラ『舞い上がれ』や人気漫画の舞台にもなり、多くの人を魅了してやまない場所。…

そんな『GOTOGIN』がバッジ100番を記念して、同じ長崎県内の「三川内焼」の窯元とコラボした限定ボトルを、100本限定、1本100万円(税込)で発売することを発表した。

100年残る価値を目指して。伝統工芸品としての美しさを持つボトル

今回のコラボは、五島つばき蒸溜所の3人が偶然訪れた長崎県内の美術館で、三川内焼の美しさに惚れ込んだところから始まったという。伝手を辿って今回のボトルを製作した「平戸洸祥団右エ門窯」に行きつき、1年以上の打ち合わせを重ねて今回の商品は完成した。

三川内焼は約400年の歴史を持つが、その長い歴史の中で今回のような酒瓶を製作した例はほとんどないという。日本酒を入れる徳利などの実績はあるが、今回の商品であるジンは、高い密閉性を求められる。酒を実際に詰め、コルク栓をし、保存するとなると、蓋の内径はプラスマイナス0.3ミリの誤差しか許されず、焼成の過程で収縮する磁器でそれを実現するのには、高い技術が求められた。

もちろん形成だけでなく、三川内焼の特徴である、手作業でしか実現できない繊細・緻密さも余すことなくこのボトルには表現されている。

今回のメインデザインには菊の花が使われているが、これは「平戸菊花飾細工」として長崎県の無形文化財にも指定されるなど、三川内焼としてもシンボリックなモチーフだ。「平戸洸祥団の理念は、100年後に評価されるものを作ること。そうすれば目の前のことに右往左往せずに物作りができる」そう語るのは、平戸洸祥団右ヱ門窯・代表の中里さんだ。「この菊の細工は、およそ100年前に原型が作られています。100年前に作られたものが、現代のデザインとして評価されている。同じように今回のボトルも、未来に向かって少しでも文化的価値のあるものを残していければと思っています」。

今回のボトルには9弁の菊の花があしらわれているが、全て手作業につき1日に作れるのは1本分が限界だというから驚かされる。原料や技術など、伝統工芸品としての三川内焼の定義を完全に満たしたものが、今回のコラボボトルには使用されている。

21原酒のブレンド、ミズナラ樽での熟成、ボトルに負けないジンを

ボトルに負けず劣らず、中身にもこだわりが詰まっている。通常の『GOTOGIN』は17種類のボタニカルから20種類の原酒を作り、それを最後にブレンドしている。直近の限定商品からは、五島に生えているヤマモモを漬け込んだ原酒も加わり、18種類のボタニカルを19回蒸溜、できあがった21種類の原酒を最後にブレンドするという、ジンの作り方としては考えられないほどの手間暇をかけた作り方をしている。

そしてそこに今回、このバッジ100番の限定商品に向けて新たに加わったのが、ミズナラ樽での熟成だ。目指したのは、〝濃くてバランスの取れたジン〟。「樽熟成したジンは、世界的に見るといくつかはあります。ただ今回の商品ほどしっかりとした樽の香りを感じられるジンというのはほとんどない。それが実現できたのは、やはり原酒をブレンドして作るという、『GOTOGIN』ならではの作り方をしている強みがあったからです」(鬼頭ブレンダー)。さらに樽での熟成方法にも一工夫が。「ジンは長く熟成すれば良いというものでもない。長く熟成するとその分だけジンらしい香りが失われてしまうんです。そのため今回は1ヶ月~2ヶ月ほどの短い期間でしっかりと樽の香りを付ける方法を考えました。具体的には、樽には半量程度しか詰めず、それを縦に置き、あえて日光を当てる。これにより短期間でもしっかりと香りを付けることができたんです」。キリンビールで長年トップブレンダーとして培ってきた鬼頭さんの技術が、ここにも詰まっている。

強気な価格設定。風土が生み出す、足元の価値。

今回の商品、税込で1本100万円という、一見するとかなり強気な価格設定だ。だがそこには、その地域が持つ風土に敬意を持ち、生み出された商品に確かな価値を持たせようとする、良い意味での野心を感じさせる。『GOTOGIN』は〝風景のアロマ〟をテーマに、五島が持つ風土や景色をジンを通して表現し続けているお酒だ。三川内焼は400年ものあいだ、地域と共に育み、長い歴史を紡ぐことで、近年は特に海外などでも高い評価を受けている。そんな長崎の両者が掛け合わさった今回の商品は、足元を見つめることでまだまだ価値は生み出すことができる、地方に息づく手仕事、文化、それらが作り出す未来がある、そんなことを感じさせるものだ。地方から新たな価値を生み出そうとする『GOTOGIN 平戸洸祥団右ヱ門窯』は限定100本、税込100万円で、五島つばき蒸溜所のオンラインショップで発売中だ。

文/末光次郎

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