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不祥事疑惑によって好きなタレントを語ることもタブー視されるようになって感じた不自由

2025.09.15

芸能人の不祥事を真剣に受け止め過ぎる昨今

一頃昔、芸能人の不祥事といったら、ワイドショーで芸能リポーターがさも稀代の犯罪者を糾弾するような勢いで喧伝し、それを一部の視聴者が真に受けている程度のものだった。

今もワイドショー自体は存在するが、取り上げる芸能人の不祥事やゴシップについての熱量は、2、30年ほど前と比べると割と落ち着いている。

逆に勢いを増しているのが写真週刊誌だ。

腕利きの粘り強い記者が相当な時間をかけてタレコミをもとに著名人を突撃取材し、精力的かつ継続的に著名人に切り込んだ記事を書く。

芸能人にとっては週刊誌に記事が出るということは相当な打撃のようで、かつては飲む、打つ、買うが当たり前だったお笑い芸人界隈もだいぶ大人しく、ていねいな暮らしを営むこととなっているのが昨今である。

芸能人の不祥事というのは、疑惑が生じた時点で昔も今も、即座に憶測が元となって尾ひれのついた話が流布するもの。

風評被害を招いて方々に迷惑をかけては芸能人単体だけでなく、事務所にとっても痛手となるわけだから、できることならプライベートも羽目を外さずにいる方が確実に良い。

他方で、写真週刊誌でのスクープに対して、その読者や、あるいはそれを転載するネットニュースで疑惑を知る人たちというのは、そもそも芸能人の不祥事による悪影響を受けない立場だ。

にも関わらず、ここ最近は過剰にそういった疑惑、不祥事に対して、潔癖すぎる反応を見せる人が(筆者の身の回りだけかもしれないが)増えた感がある。

SNSでもそういったゴシップはトレンドに上がりがちなので、大勢の目に触れることになる。

そうするとやっぱり反応も大きくなるもので、徐々に受け手側から出る過剰な意見といったものがバズるようになり、終いには元記事を読んでもない人が、そのバズった極端な意見に影響を受けることもしばしばだ。

価値観のアップデートを娯楽に当てはめるのは健全なのか

こういう傾向は、ネットにおいては何も今に始まったものではない。

たとえば映画やドラマなどを観た人たちが、その感想をつぶやくことはよくあったが、特にネガティブな意見を見聞きした人が、その影響を受けて自分も否定的な目線でそのコンテンツを観るようになるという傾向がある。

他人の意見に左右されず、フラットに楽しむことを無意識に拒絶してしまい、もったいない事態に陥っている人。皆さんの周囲にもいるのではないだろうか。

他人は他人。自分は自分。だから自分の意見をもって感想を出力することは当たり前だったはずだが、それがいつの間にか邪魔されるようになった。

良くも悪くも、それだけSNSで他人の声に影響を受けることが珍しくなくなったということだろう。

著名人の疑惑や不祥事に対しても、全く同じことが当てはまる。

冷静に考えれば、芸能人の疑惑など、私たち市井の人間にとっては一切関係がないことだ。

芸能人は芸を売る人たちなので、別に人格者として良い人生を啓蒙するような立場ではない。

たとえば写真週刊誌に報じられた疑惑が事実だったとする。

この場合、あるケースでは刑事罰が下され、あるケースでは事務所を干される、仕事がなくなる、違約金を払うなどの社会的な制裁が下されることが通例。

つまり、彼らには彼らなりに致命的な責任を負うということになる。加えてSNSでは批判的な意見が相次ぐわけで、こういう炎上もまた、制裁としてはこの時代では回避できない報いとも言えるだろう。

問題はここからである。

しばしば、炎上してしまった芸能人を以前から応援していたファンまでもが、一緒くたに否定されることがある。

それは違うんじゃないか? と筆者は思うのだ。

ネット上の評価というものはあらゆるコンテンツに対して前述のようにネガティブ方面に偏りがちだが、さらに匿名掲示板の書き込みを引用した切り抜きサイトなどもそれを助長させている。

週刊誌のゴシップに端を発した様々なネガキャンによって、自分が好きな歌手、芸能人もいつ炎上するか分からなくなっている。

私事になるが、特に筆者はダウンタウンが子供の頃から大好きだ。

しかし先日SNSで「松ちゃん」と書いただけで「あんな疑惑にまみれた芸人を未だにちゃん付けするとか、価値観がアップデートされてないのか」という声を頂戴した。

要は芸能活動を自主的に一時自粛した松本を、未だに応援するということは古い価値観の、前時代的な視聴者だと主張したかったのだろう。いや、言いたいことは分かる。価値観のアップデート自体は様々な局面において大切だからだ。

きっと新しいモノの見方が必要な局面は多いはず。

ただ、個人的な感覚にはなるが、こと芸能に関しては結局は受け手の好みも大きなところがあり、そこを否定されると、あんまり素直にそのアドバイスに応じようとも思えなくなるのが正直なところで……。

ダウンタウン松本の場合はあくまでも今に至っても疑惑は疑惑であり、活動自粛も本人が表明した、自主的なものである。

致命的なスキャンダルが発覚し、当人がそれを認めたというわけではない。

もっとも筆者は長年松本のファンであるので、著書も読みこんでいる。

1999年に出版された『松本坊主』は勿論読み込んできたが、この書籍の中にも相当に女性関係が乱れている旨、しっかり書かれている。

曰く大阪時代に喫茶店のドアを開けたら、そこにいた女性全員が肉体関係を有していた……みたいなことを本人が主張しているので、現在の疑惑についても全く潔白であるとは、恐らくファンの誰一人が思っていないだろう。

筆者も勿論その立場だ。

ただ、そういう疑惑にまみれ、方々でまだ真相が発覚もしないままの状況で炎上している芸能人について、今でもファンであると主張した第三者をも批判するというのはちょっとどうだろうか。

価値観のアップデートというのは、別にお題目としてそこまで強い力は、実は有していない。

しかしアップデートという言葉にやたら強みがあると考える人が増えたのは事実だ。その辺に、筆者のような古い人間は適応できていないのだろう。

一時代を築いた芸能人の功罪を視聴者が自分事として受け止める必要があるのか

仮に写真週刊誌の報じることが事実だとしても、そうでないとしても、不祥事を起こしたタレントのことを昔から好きだったというだけファンまで嫌悪されるというのは、筆者は健全ではないと考えている。

事実がどうあれダウンタウンの漫才に、筆者は頬の筋肉が痛くなるまで笑ったことが何度もあるし、その思い出に対してまで顔も知らない、会った事もない第三者から斬り込まれてもなぁという思いがある。

筆者は今、あまり大っぴらに「ダウンタウン松本のファンです」と公言するのがちょっと怖くなってもいる。やはり騒動をきっかけに、急に松本が無理になったという人は多いし、そういった人たちからわざわざネガティブな発言を引き出したくもない。穏便に行きたい。

でも、こういう不自由を、なぜ古くからのファンまで背負わなくてはいけないものなのだろうか? ここまで気遣う必要があるのか。

言論の自由と価値観のアップデート、どっちが優先されるべきなのだろう。

いや、筆者はそれでも幸運だ。こうして自分の考えを文字としてかなり長文で表明する場を与えられているのだから。こんな機会、大抵の人には用意されていない。

ダウンタウン松本本人の人間性を好む人と、ダウンタウン松本のネタを好む人の区別ぐらい、アップデートを要求するなら流石にそこは区別してもらいたい。

筆者は、後者である。追っかけをやったりもしていないし。そしてそういうファンって昔から大勢いたはずだ。

それに圧力をかけて、無理やり好きなジャンルからファンを撤退させようとする動きは、意味がない。

そんなことをしなくても、応援する対象に幻滅したら勝手にファンは離れるので。

もし、自分の“推し”が疑惑の当事者になったら…

勿論、世の中には堂々と「私はこれが好きです!」と言わない方が良い嗜好もある。賭博などはその一例だろう。

ただ、少し前までテレビやラジオで引っ張りだこだった存在が何らかの理由で表舞台から消えたとして、すぐにそれを丸ごと封印するということは、果たして正しいアップデートなのだろうか。

問題を起こした歌手の楽曲がサブスクリプションから一時的に削除される様子を見ていると、なんともバカらしく感じる。

「それは誰のための削除なの?」と。

より良い社会のためのアップデートというのは、目障りなものや、置いておくと炎上しかねないものを削除する姿勢を指すのか。

そうではないはずだ。

と言うか、好きなものぐらい、功罪と関与しない範囲で語ってもいいのではないだろうか。

それに、今はいつ、どのタイミングで、どの著名人が炎上するかも分からない。

今、問題を起こした誰かのファンを叩いている人だって他人事ではない。明日はあなたの推しが不祥事疑惑の当事者になっているかもしれない。

文/松本ミゾレ

【参考】
松本坊主 著者:松本人志
ISBN 4344413067, 9784344413061

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