
Z世代向けクリエイティブカンパニーFiom合同会社が運営する、Z世代の実態や価値観を分析するシンクタンク、Z-SOZOKEN(Z世代創造性研究所)から、「企業が「Z世代の笑い」をどうマーケティングに活かすか?」が発表された。
これは、Z-SOZOKEN THINKTANKによる調査研究レポート第一弾『Z世代の笑いの感覚』の第5章インサイトサマリーであり、Z世代特有の「笑いの感覚」を企業がマーケティングにどのように活かすべきか、具体的な手法と注意点を解説している。
本稿では同社リリースをベースに、その概要をお伝えする。
【調査レポート解説】第5章「企業が「Z世代の笑い」をどうマーケティングに活かすか?」
レポート本編では、Z世代の笑いを活用したマーケティング手法を、成功事例から注意点まで網羅的に解説している。
以下、第5章の主要なスライドの内容を紹介しよう。
■企業事例<1> SAMANSA【公式】TikTokアカウント
ショート映画サブスク「SAMANSA」のTikTokアカウント事例を紹介。このアカウントは、「変顔のくせを持つ女性、クセ強JKに出会う」「もらった箱から人が・・・」といった、Z世代が好む不謹慎さを感じさせるタイトルでショート映画を配信しており、Z世代の笑いのツボを押さえている。

■企業事例<2> ドン・キホーテ情熱価格の広告
ディスカウントストア「ドン・キホーテ」の広告事例を解説。ここでは「その程度の機能ならドンキで十分だ!」というキャッチコピーを使い、自社製品をあえて下げる「自虐」の要素を取り入れている。これにより、高機能よりも価格を重視するターゲット層へ効果的にアピールすることに成功した。

■調査データ:Z世代は「理想」より「現実」を好む
2つのアンケート調査の結果から、Z世代のインサイトを明らかにしている。Z世代が最も惹かれる投稿は「ありのままの自分をさらけ出している投稿」であり、「キラキラした理想的なライフスタイル」を上回った。また、85%が「ギリギリまで寝てる」といった現実的な広告に共感することもデータで示されている。

■実践プロセス:「自虐×共感」マーケティングの3ステップ
企業が「自虐×共感」マーケティングを実践するための具体的な3つのプロセスを提示。
(1)人気コンテンツからZ世代のリアルな悩みを調査
(2)商品・ブランドとの共通点やターゲットを明確にする
(3)「自虐×共感」を用いてターゲットの悩みを解決できるコンテンツを作成する

■マーケティングへの活かし方<1>SNSでのコミュニケーション
具体的な施策の1つ目として、SNSでのコミュニケーション手法を解説。企業の公式アカウントが、あえて「砕けた口調&少しネガティブな発言」をすることで、公式らしからぬ「ギャップ」が生まれ、話題に繋がりやすくなると分析している。

■マーケティングへの活かし方<2>体験型キャンペーン
施策の2つ目として、SNSで拡散されやすい体験型のキャンペーンやイベントを提案。例として「あなたの怠惰度は何パーセント?診断」や「#先延ばしぐせあるある」といったハッシュタグイベントを挙げ、Z世代のリアルな悩みをコンテンツ化することの有効性を説いている。

■マーケティングへの活かし方<3>信頼性の獲得
施策の3つ目として、Z世代の信頼を得るための重要な視点を提示 。現代のSNSにはPR投稿が溢れているため、単なる「おしゃれ・高級感」の訴求だけでは響きにくいと指摘。そこで、「笑い」の要素と、企業としての「信頼」を組み合わせることが鍵になると結論付けている。

■実践における懸念点・注意点
最後に、ユーモアマーケティングを実践する上での注意点を3つのポイントにまとめている。
(1)笑いと受け取れない層もいるため、企業のイメージを逸脱しない範囲で行うこと。
(2)炎上リスクを考慮し、許容される皮肉のレベルを明確にしておくこと。
(3)面白くても商品とターゲットが離れていると売上に繋がらない可能性があること。
なぜZ世代には「あえてのネガティブ」が刺さるのか
Z世代は、幼い頃からインターネットに触れ、SNS上に溢れる加工された「理想の姿」や巧妙な広告表現に囲まれて成長してきた。
その結果、彼らは作られたポジティブさや完璧すぎる姿に、ある種の広告疲れや不信感を抱いている。
そんな彼らにとって、企業やブランドが自ら「うちはこれで十分」「まあ生きてるからヨシ」といったスタンスで弱みやリアルな側面を見せることは、逆に新鮮で正直なコミュニケーションとして映る。
この「自虐」的なアプローチは、一方的な宣伝文句の壁を壊し、「この企業は自分たちのことを分かってくれている」という強い共感と信頼を生み出すのだ。
Z世代に求められているのは、もはや完璧なヒーロー像ではない。
共に悩み、笑い飛ばしてくれる、正直で人間味のあるパートナーなのだ。
◎調査研究レポート(全38ページ)を無料でダウンロード
https://z-sozoken.studio.site/report-01/download#form
調査概要
調査名/Z世代の笑いの感覚についての意識調査
調査対象/全国のZ世代(18歳~24歳)
調査期間/2025年5月~6月
調査方法/インターネットを利用したアンケート調査
有効回答数/n=453
調査分析/Z-SOZOKEN(Z世代創造性研究所 運営:Fiom合同会社)
調査結果について
<Z-SOZOKEN(Z世代創造性研究所)所長 Fiom合同会社CEO 竹下洋平氏>
今回の調査で明らかになったZ世代のインサイトは、多くの企業にとって大きなチャンスとなり得ます。もはや、商品の優れた点を並べ立てるだけのマーケティングは通用しません。
Z世代が求めているのは「共感」であり、その共感を生む最強の武器が「自虐」や「ユーモア」なのです。
「その程度の機能ならドンキで十分だ!」という広告は、一見商品を下げているようで、実は「高い機能はいらないけど、安くて良いものが欲しい」というターゲットの心を的確に掴んでいます。
ただし、最も重要なのはそのバランス感覚です。レポートで指摘している通り、炎上リスクは常に伴います。企業のブランドイメージを毀損せず 、かつZ世代に「面白い」と思わせるギリギリのラインを見極める必要があります。
このレポートが、Z世代との新しい関係性を築くための、戦略的で効果的なユーモア活用の羅針盤となることを願っています。
関連情報
https://fiom-llc.studio.site
構成/清水眞希