『心象が悪い』と『心証が悪い』は、何が違うのでしょうか?どちらもよく見かける表現ですが、『心象』と『心証』は意味が異なります。一般的な書き方や、それぞれの使い方を紹介します。
目次
「心象が悪い」と「心証が悪い」の違いとは
相手の行動や印象に対して良い・悪いを表現するとき、『心証が良い』『心証が悪い』と言います。『心象』と書かれていることもありますが、何か違いはあるのでしょうか?
■「心証が悪い」と書くのが一般的
『心象』と『心証』は混同されがちですが、意味が異なります。
- 心象:自分の内面に浮かぶイメージや架空の情景を指す
- 心証:他の人から受ける印象を表す
つまり、相手に対する印象の悪さを表す場合は、『心証が悪い』が一般的な表現です。
『心象』は、記憶や感覚に基づいて心の中に描かれる姿・形を意味します。『象』は『かたち』『すがた』を表し、自分の内面に浮かぶイメージを指しているのです。
心の中に浮かんだ想像上の人・物は、現実とは異なる抽象的な存在のため、現実で出会った人の印象を表現するときには『心証』を使います。
■「心証が悪い」の辞書的意味とニュアンス
『心証が悪い』とは、相手に与える印象・評価が否定的になっている状態を指します。この表現は法律用語に由来しており、もともと裁判官が事件の審理を通じて、心に抱く確信・判断という意味で使われていました。
日常のビジネスシーンでは、単に『印象が悪い』よりも重みのある表現として機能します。例えば、会議で約束した資料を何度も忘れる部下がいた場合、上司は「あの人は心証が悪い」と感じるでしょう。
これは一時的な印象の問題ではなく、その人の信頼性・責任感に対する根本的な疑問を表しています。
「心象」の使い方と関連語・対義語

『心証が悪い』は、一般的に『心証』を使います。それでは、『心象』はどのような使い方をするのでしょうか?ここでは、『心象』を含む関連語と主な使い方を紹介します。
■「心象」の一般的な使い方
心象は、自分の心の中に浮かんでいる姿かたちを表す場合に使える言葉です。
- この作品は、彼らの心象を描き出したものといえる
- ここに飾られている彫像には、心象的な表現が見受けられる
日常生活やビジネスシーンでの使用は少なく、作品の内容や自分の内面を表現したいときに使うことが多いでしょう。
■心に浮かんだ風景を表す「心象風景」
心象風景は、心に浮かんだ架空の景色・イメージを意味する言葉です。風景というほど具体的でなくても、風景に見立てて自らの内面に浮かんだものを表現します。
- あの絵画は、作者の心象風景を絵にしたものらしい
- 私が今見ている心象風景を言い表すなら、どこまでも続く砂浜と海に近い
心象風景は、あくまでも本人の心の中にあるもので、現実にそのような風景があるとは限りません。芸術作品のイメージとして、使われることもあるでしょう。
■「心象」の対義語・反対語
心象は、心の中に現れる架空の情景のため、対義語として『現実』『実態』が挙げられます。
現実は、心の中ではなく、今目の前で起きている事柄・事実を意味する言葉です。心の中だけに現れる心象とは、真逆の意味を持っています。
実態は、実際の状態を表す言葉で、現実に起こっている状態・状況を意味します。実態も現実で起きていることを意味するため、心象とは反対の意味です。
カタカナ語であれば『リアル』『リアリティ』なども、心象の対義語として該当するでしょう。
「心証が悪い」の使い方と注意点

『心証が悪い』という表現を、職場で使う場面もあります。相手を不快にさせずに適切なメッセージを伝えるには、どのような配慮が必要なのでしょうか?
最後に、円滑な職場関係を維持しながら、必要な指摘を効果的に行うための方法について解説していきます。
■ビジネスシーンでの「心証が悪い」の使い方
ビジネスシーンでも、『心証が悪い』という表現を使うケースがあります。以下、主な例文を確認しましょう。
- 取引先の営業担当の態度が横柄で、〇〇(企業名)に対する心証が悪くなった
- 顧客の〇〇さまから「▲▲さんへの心証が悪いので、今後は私の担当に付けないでほしい」とクレームが入っています
多くの場合、不愉快な状況を関係者に伝えるときや、誰かが気分を害していることを伝えるときの使用が中心です。
■「心証が悪い」を使うときの配慮や注意点
取引先や顧客はもちろん、上司・同僚・部下などに対しても、『心証が悪い』という言葉を使う場合は関係悪化のリスクが伴うことを覚えておきましょう。
相手に気分を害したことを伝えなければならないケースを除き、柔らかい印象の言葉に置き換えることが推奨されます。
例えば、忘れ物を繰り返す人に「心証が悪いです」と言ってしまうと、建設的な改善につながらず、単に不快感を伝えるだけになってしまいます。
取引先や顧客が関わるような問題で、どうしても『心証が悪い』ことを相手に伝えなければならない場合でも、感情的な批判は避け、具体的な改善提案として伝えるようにしましょう。
「心象が悪い」は「心証」と書くのが一般的

『心証が悪い』は、相手に与える印象・評価が良くない状態を表す表現です。『心象が悪い』と書くこともありますが、通常は『心証』を使います。
『心象』と書く場合は、心の中に現れた架空の情景を表し、『心象風景』『心象的な表現』のような使い方が一般的です。
ビジネスシーンで『心証が悪い』を使用するときには、相手へ配慮し、円滑なコミュニケーションを取るように心掛けましょう。
構成/編集部







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