
「ラブブ」というキャラクターと、その関連グッズが人気を博している。
口から飛び出した歯に大きな目、ウサギの耳……。スマイルを浮かべているわけではなく、どこか不機嫌そうな感じの表情をしている。そんな少し風変わりなキャラクターが、悪質な転売や模造品を生み出してしまうほどのブームを巻き起こしている。
ラブブは中国のPOP MARTが展開するキャラクターだが、ここでは「なぜラブブが人気を博したか?」よりも「どのような経緯でラブブは人気キャラクターになったのか?」を考察する必要があるだろう。ラブブの人気の土台にあるのは、「キャラ商品の新しい売り方」のようだ。
ラブブは「アジア出身」のキャラ
タレントもアイドルもインフルエンサーも、キーチェーンのついたラブブの小さなぬいぐるみやフィギュアをバッグに装着している。中にはスマホケースの穴にラブブのキーホルダーを通す人も。
筆者は1984年生まれだが、おそらく筆者と同い年かいくらか年下の人にとっては懐かしさを覚える光景かもしれない。携帯電話がスマホではなくフィーチャーフォンだった時代、それにたくさんのストラップやキーホルダーをつけることが女の子の間で流行っていたからだ。
「バッグにフィギュア」も同様である。筆者の高校時代は2000年から2002年。男子校だったせいで「教室で女の子と恋愛」などということは一切なかったが、中学時代の女の子の友達と時たま会う機会はあった。女友達のHさんと筆者は共に電車通学で、途中まで同じ道程だった。そのHさんと彼女のクラスメイトのバッグには、キーチェーン付きの小さなぬいぐるみが笑っていた。
20年以上前の流行が、形を変えて戻ってくるということはラブブに限らずよくある。が、ラブブの場合は中国発のキャラクターで、そのブームの発信源がアジア地域にあるという点により注目すべき。
ラブブの人気のきっかけとなったのは、インフルエンサーの投稿である。BLACKPINKのリサ(タイ出身)がSNSでラブブを紹介し、それから間もなくシリワンナワリー・ナリラタナ王女がバッグにラブブを装着していることが報道され、ラブブブームが発生した。つまり、ラブブは「生まれも育ちもアジア」なのだ。
筆者が高校生だった時代と今とでは、世界におけるアジア地域(20世紀から経済先進国だった日本を除く)の重要度が段違いに異なる。「アジアは強くなった」のだ。ラブブブームは、ある意味でそれを象徴しているようだ。
売り方としての「ブラインドボックス」
ラブブが人気キャラになった過程を観察すると、「ブラインドボックスによる販促」が際立つ要素として浮かび上がってくる。
ブラインドボックスとは、キャラ商品がランダムに梱包された箱形式の商品。複数種あるうちのどれか一つが入っていて、中身は実際に開封するまで分からない。要は「ガチャガチャ」だ。ただし、ガチャガチャとは違うのは箱をそのまま陳列棚に置くという点である。
筆者もこの記事を書くために、ラブブの入ったブラインドボックスを買おうと思いトイザらスへ行ってみたのだが……案の定商品が見当たらない。何しろラブブは、今や高額転売されるほどの大人気キャラ。名前まで似せた模倣品も流通している。正攻法でやっても買えるわけがないのだ。
いずれにせよ、ラブブブームの一側面には「売り方としてのブラインドボックス」がある。これは動かざる事実だ。ブラインドボックスは決して安いものではなく、たとえば筆者がラブブの代わりに購入したマインクラフトのブラインドボックス商品は、1個500円。にもかかわらず、筆者が「スティーブが欲しい!」と願ってもそれが叶う保証は一切ない。ちなみに、このブラインドボックスはラブブ探しを諦めた筆者がトイザらスで購入したもの。
ブラインドボックスというものは、透視ができるエスパーでない限り望んだものを入手できない可能性がある。だからこそ、欲しているものを運良く引き当てた時の喜びは計り知れない。そしてそれを長きに渡って大事にしたり、他人に自慢しようと考えてしまうのは至って自然な人情ではないか。
何が出るか分からない。その不確実性が人々の心を鷲掴みにしている側面は、誰にも否定できないだろう。
ブームはブラインドボックスと共に
このブラインドボックスについてさらに考察してみると、日本のガチャガチャよりも大きなものを箱の中に梱包・販売できるという特徴がある。極端な話、成人男性と同じ背丈のスティーブのフィギュアを作って、それを箱に収めて店頭で売ることだってできるはずだ。
ラブブブームは、「ブラインドボックス形式の販売方法が流行の下地になること」を見事に証明したと言い切ってもいいのではないか。
ブーム自体はいつかは沈静化する。しかし、「ブームが作った新しい仕組み」はいつまでも残り続ける。かつて『仮面ライダースナック』というお菓子がカルビーから販売されていたが、「お菓子の袋の中にカードを入れる」という発想は廃れることなく、その後の『プロ野球チップス』に受け継がれて今に至る。
ラブブを世界的人気キャラクターに育て上げた偉大な雛型・ブラインドボックスは、次にどんなブームを創造するのだろうか。
【画像は以下より引用】
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