
■連載/ゴン川野の阿佐ヶ谷レンズ研究所
SIGMA「CONTEMPORARY 12mm F1.4 DC」は、APS-C用超広角短焦点レンズであり、35mm換算で18mmの超広角をAFで使える。開放絞り値はF1.4と非常に明るく、さらに開放でもシャープな描写を約束する。
超広角18mm相当で描く街の表情
18mmで見ると、日常の街角を新鮮な視点で切り取れる。吉祥寺駅前から公園通りを歩けば、超広角ならではの広がりが強調され、炎天下で人通りの少ない道が異空間のような佇まいを見せる。井の頭公園の木立を背景にしたスナップでは、奥行きと開放感が写真に心地よいリズムを与えてくれる。さらにF1.4の明るさを活かすと、昼でも暗い屋内で水棲動物をしっかりと捉えられた。街の光と影をドラマチックに描き出し、吉祥寺の魅力を新しい角度から伝えてくれる一本だ。今回は16-300mmに続いて、写真家、小平尚典さんと共に吉祥寺をスナップした。
超広角でもボケが楽しめる
一般的に20mmより広い画角のレンズを超広角と呼ぶことが多い。ここまで画角が広いと標準ズームへの搭載は難しく、広角系ズームか単焦点レンズということになる。強烈なパースペクティブを持ち、広大な風景や建物を収められる反面、使いこなしの難しさもあり、ビギナーには手の出しにくい画角だった。近年、iPhoneに13mm超広角レンズが搭載されたことで、超広角への抵抗感が減り各社から20mm以下の超広角レンズが登場した。SIGMA「CONTEMPORARY 12mm F1.4 DC」は12mmでAFでF1.4という他社にない特徴があり、超広角でありながら前後のボケが使えるのだ。さらに軽いのもいい。超広角で明るいレンズはガラスの塊のよう重いのが定番だったが、屋外に持ち出して撮影するには軽いことは重要だ。
「単焦点レンズをカメラに付けて気の向くままにファインダーをのぞくとノーストレスだ。基本NDやPLフィルターを付けて、絞り開放で撮影することが多い。12mmf1.4については一般的に超広角では歪曲収差や周辺光量落ち、コントラスト不足が指摘されるが、このレンズはライカMマウントのエルマリート21mmにも負けない性能があり、軽快さと機動力がある。手持ちの街歩きの拾い写真には最高だ。フルフレームにこだわり、グッと寄っていく写真には最高のパフォーマンスを発揮してくれる」と小平さんは語る。
写真・文/ゴン川野