
革新と芸術性を体現してきたジェイコブ&コーの歩みを、シリーズ形式で紹介する「JACOB&CO. STORIES」。
第9回では、エピックXの中核を占める3コレクションについて、その真髄に迫ったので詳細をお伝えしよう。
“X”が象る魂と構造──スケルトン、ブリッジ、CR7が紡ぐエピックXの真髄
ジェイコブ&コーが掲げる「唯一無二」の哲学を、構造そのものに宿したコレクション、それがエピックXだ。
ケースのラグから文字盤に伸びる2本の縦ブリッジが呼応し、空間に浮かぶようなXの造形を描き出す。
それは単なるデザインというだけではなく、ムーブメントを支える骨格であり、ブランドの革新性を象徴する存在でもある。
2015年の発表以来、エピックXは進化を重ね、スケルトンでスポーツを極め、ブリッジでラグジュアリーを極め、そしてCR7モデルで唯一無二の個性と結実した。
■スケルトン──ラグジュアリースポーツの“スポーツ”を極めた存在
2015年に発表された初代エピックXは、ラグと2本の縦ブリッジが呼応して描く独自のXフォルムとスケルトン構造によって、ジェイコブ&コーの革新性を鮮烈に印象付けた。
その進化形となるエピックX スケルトンは、インナーリングの追加やロゴ・モデル名位置の再配置などのマイナーチェンジにより完成度を高め、ラグジュアリースポーツウォッチとしての個性を際立たせている。
ケースはポリッシュとサテンのコンビネーション仕上げで、光の角度によって異なる表情を見せ、スポーティさと上質さのメリハリを実現した。
ハニカムパターンのラバーストラップは、しなやかで肌離れが良く、しっとりとした質感でありながらもまとわりつかない快適な着け心地を実現。通気性も高く、長時間の着用でも快適さを損なわない。
搭載されるムーブメントは本モデル専用に設計され、香箱とテンプが中央に一直線に並ぶシンメトリーな構造が文字盤越しに美しく浮かび上がり、その傍らでは歯車がまるで中空に浮かんでいるかのように輝き、機械式時計の鼓動を視覚的にも堪能できる。
軽快なチタンケース、快適な着用感、そして日常で躍動する機械美が楽しめるエピックX スケルトンは、ラグジュアリースポーツウォッチの中でも「スポーツ」を極めた存在として、日々の腕元に生きた時間の悦びをもたらす。
■ブリッジ──ラグジュアリースポーツの“ラグジュアリー”を極めた存在
スケルトンで骨格美を完成させたジェイコブ&コーは、次のステージとして、構造美と工芸的ラグジュアリーの融合を目指した。その結実が、2022年に発表されたエピックX ブリッジだ。
基本構造はスケルトンを継承しながらも、仕上げと存在感はまったく新しい次元へ。ブリッジにはクル・ド・パリ装飾が施され、光を受けるたびに繊細な陰影が浮かび上がる。
極限まで磨き上げられたケースとラグは、スポーティな骨格にジュエリーのような気品を添え、その造形はリューズガードにまで及ぶ。大ぶりなリューズガードは操作性を高めるだけでなく、腕元で圧倒的な存在感を放つ。
さらにブレスレット仕様では、ケース同様に磨き込まれたブレスレットが光を連鎖させ、腕全体を構造美のオブジェへと昇華させる。同じラグジュアリースポーツウォッチでありながら、スケルトンとブリッジの性格は明確に異なる。
スケルトンが軽快さと実用性で「スポーツ」を極めたモデルであるのに対し、ブリッジは装飾美と輝きで「ラグジュアリー」を極めたモデルだ。
共通するXの骨格美を軸に、一方は日常に寄り添う軽快さを、もう一方は特別な瞬間を飾る華やかさを提供し、オーナーの感性とライフスタイルに応える。
■CR7──唯一無二の個性と構造美の結実
エピックXの進化は、世界的スーパースタークリスティアーノ・ロナウド(CR7)とのコラボレーションによって、新たな頂点に到達した。
ベースとなるのは、ラグジュアリーを極めたエピックX ブリッジ。象徴的なXの骨格に、ロナウドの個性とサッカー界のアイコンとしての存在感が重なる。
縦ブリッジには、従来のクル・ド・パリ装飾に代わり、ロナウドのサインや「CR7」のロゴ、そして彼自身のシルエットが彫刻され、構造そのものが彼の象徴となった。
香箱にはサッカーボールの意匠が施され、ムーブメントの鼓動とともに、彼の原点である情熱が静かに息づく。
さらに裏蓋には、ゴール後の象徴的なポーズがプリントされ、所有者だけが味わえる特別な物語を刻む。
カラーバリエーションは、赤×ローズゴールドの「Flight of CR7」と、緑×ステンレススティールの「Heart of CR7」。
これはポルトガル国旗の赤と緑を意識したカラーであり、赤はマンチェスター・ユナイテッドや代表ユニフォームを想起させ、情熱とクラブキャリアを象徴する。
一方、緑は祖国ポルトガルを思わせる色彩で、静かに彼のルーツを語る。磨き上げられたケースとラグはブリッジ譲りの気品を纏い、大ぶりなリューズガードは腕元で力強い存在感を放つ。
エピックX CR7は、スポーツとラグジュアリー、構造美と個性をすべて融合させたタイムピースだ。スケルトンが「スポーツ」を、ブリッジが「ラグジュアリー」を極めた先に生まれたこのモデルは、まさに唯一無二の存在として、オーナーに誇りと物語をもたらす。
スケルトンでスポーツを極め、ブリッジでラグジュアリーを極め、CR7で唯一無二の個性と結実したエピックX。
このコレクションは、単なるラグジュアリースポーツウォッチを超え、構造そのものに物語を宿す存在となった。
そして、エピックXの物語は、まだ終わりではない。このXの骨格が切り拓く美と革新は、さらに多彩な表現領域へと拡張し、ラグジュアリーの新たな地平を描き出していくだろう。
構成/Ara