
シボレーは、2025年8月15日、2台のコンセプトカー「コルベットCX」と「コルベットCX.R ビジョン グランツーリスモ」をモータースポーツの祭典「ザ・クエイル・モータースポーツ・ギャザリング」で初公開し、自動車ファンやレース愛好家に向けて、未来のハイパフォーマンスカーの展望を披露した。
今回のモデルは、市販化の予定はないが、これから何年にもわたって、コルベットのデザイン言語に影響を与えるインスピレーションの源になるモデル。70年以上にわたるパフォーマンスの革新を背景に、このコンセプトカーは、アメリカンスポーツカーの伝統を称えるとともに、その未来を切り拓いていく。
この「CX」および「CX.R ビジョン グランツーリスモ」は、世界各地のGMのスタジオが参加したGMデザインプロジェクトの一環として、今年発表されるコルベットのコンセプトカーの中で最新かつ最後のモデル。2台のコンセプトカーは、ミシガン州ウォーレンにあるシボレー・パフォーマンス・スタジオで設計・製作された。
ストリートでもサーキットでも、究極のコルベット
オープンロードやサーキットで、究極の高性能ドライビング体験を実現するため、未来のコルベットをゼロから設計する、まさにその発想から「CX」コンセプトは誕生した。
「CX」のデザインは、コルベットを象徴する伝統的な要素からはじまる。前方に突き出たノーズ、ボディの上部と下部とを際立たせる水平に走るシャープなラインやデュアルエレメントテールライトは、過去と現在のコルベットモデルに共通するシグニチャーデザイン。プロポーションは長く、低く、そして流麗で、全高は41インチ未満に設計されている。
極めて未来的でありながら、正真正銘のコルベットである「CX」は、妥協のない未来のスポーツカーの姿を示している。戦闘機に着想を得たコックピットキャノピーが特徴の、スポーティなエクステリアは、単に力強さを演出するためだけのものではない。GMモータースポーツ・エアログループとの協業により、あらゆる角度から究極のパフォーマンスを追求するようデザインされた。
その革新は、バキュームファンシステムなど、車体内部にも展開されている。内蔵されたファンがオープンチャネル構造を通じて空気を吸い込み、強大なダウンフォースを発生させるとともに、リアディフューザー上の気流を調整して、リアルタイムで空力バランスを最適化する。フロントディフューザーとリアウイングはどちらもアクティブに作動し、ドライバーの操作に応じて自動的にセッティングされることで、最大限のグリップを引き出す。「CX」の統合型アンダーストラクチャーは、ボディワークのエアロチャンネルを通して確認でき、ウイング形状のサスペンションのAアームがエアフローを高め、フロントのリフトを低減してくれる。
推進システムは、デザインの自由度を最大限に引き出し、ファンによるダウンフォースとアクティブエアロが可能にするコーナリング性能を補完するだけでなく、卓越した直線加速性能を提供するために選定された。
「CX」は、コルベットの名にふさわしい推進システムを搭載した全輪駆動の電動スーパーカー。各ホイールを駆動する4基のモーターが合計2,000PSを超えるパワーを生み出し、4輪トルクベクタリングによって圧倒的なグリップとコーナリング性能を発揮。さらに、90kWhのリチウムイオンバッテリーはシャシーに搭載され、低重心と理想的な前後重量配分を達成した。
インテリアにおいても、比類ないドライビング体験を提供するよう細部に至るまで設計されている。戦闘機を思わせる前方開閉式キャノピーは、近づくと自動で上方に開く。ドライバーとパッセンジャーは、高Gコーナリング時でも身体をしっかりと支えるインフェルノレッドのバリスティックテキスタイルで仕上げられたシートに固定される。キャビンは、ドライバー中心設計で、プレミアムシリコンレザー、削り出しアルミニウム、マット調の鍛造カーボンファイバーアクセントが、高級感を演出する。
さらにフロントガラスは、デジタルウインドスクリーンにより、リアルタイムのパフォーマンスデータを表示する没入型サラウンドディスプレイへと進化する。主要操作はすべてステアリングホイールにスマートに統合され、ドライバーは視線を前方から外すことなく操縦に集中できる。
レーシングの系譜にインスパイアされた未来志向のコンセプト
25年以上にわたり、コルベットの市販車プログラムは、チャンピオンシップ級のコルベット・レーシングプログラムと並行して進められてきた。ロードカーとレースカーのこの密接な関係は、コルベットファンにとって誇りであるだけでなく、両分野で共有可能な技術的知見の蓄積にも貢献している。デザインチームは、シボレーのパフォーマンスDNAに忠実に、サーキット専用の「CX」を創り上げました。この「CX.R ビジョン グランツーリスモ」は、コルベットGTレーシングの未来を描くコンセプトであり、その未来をプレイヤーは「グランツーリスモ7」で体感することができる。
「CX.R ビジョン グランツーリスモ」は、コルベットの歴史を体現しつつ、自動車の未来のパフォーマンスを展望している。伝統のイエローとブラックのカラーリングを継承したエクステリアは、過去25年間のコルベットGTレースカーへのオマージュとなる。デザイナーは「CX」のスポーティなエクステリアをベースに、「CX.R ビジョン グランツーリスモ」では、よりアグレッシブな印象に仕上げた。アクティブエアロを強化し、車高を下げることで、サーキットを支配する圧倒的なダウンフォースとグリップを実現。車体全体の軽量化により、パフォーマンスへの徹底したこだわりをさらに際立たせている。
一方インテリアでは、ツーリングから着想を得た「CX」のサーフェスや素材を、機能的かつ高性能を追求した仕様に一新している。ダッシュボードは、軽量な未加工のカーボンファイバー織りで構成され、シートにはドライバーが求めるグリップとサポートを提供するスエード張りのフォームインサートが採用されている。またシート自体には、大型・強化したショルダーパッドとヘッドレストパッドを装備し、「CX.R ビジョン グランツーリスモ」の強烈なハンドリング性能に対応するため頭部と首をしっかり支える構造となっている。
「CX.R ビジョン グランツーリスモ」は、「CX」の推進システムの基本設計を踏襲し、電動パフォーマンスと高回転型のV8エンジンの爽快感を融合している。ミッドシップに搭載された2.0リッターDOHCツインターボV8エンジンは最大900PSを発揮し、最高回転数は15,000rpmに達する。
さらに再生可能なe-フューエルで動力を得るこのV8エンジンは、8速デュアルクラッチトランスミッションを介して後輪を駆動。3基の電動モーター(左右の前輪それぞれに1基、さらに8速ギアボックスに結合された1基)が瞬時のトルクを発生し、驚異的な加速を実現するとともに、システム全体で総出力2,000PSを生み出す。
「グランツーリスモ7」でコルベットの未来ビジョンを体験
「CX」と「CX.R ビジョン グランツーリスモ」は、単なる展示用のコンセプトカーではない。シボレーのパフォーマンスエンジニアと連携し、コルベットのデザインチームは「CX」「CX.R ビジョン グランツーリスモ」のシャシー、ドライブトレイン、空力特性の詳細な設計図を作成した。
さらに、ソニー・インタラクティブエンタテインメントの傘下のポリフォニー・デジタル社との協力により、シボレーは8月後半に「グランツーリスモ7」でロード仕様「CX」およびレースカーコンセプト「CX.R ビジョン グランツーリスモ」をバーチャル走行できるようにして、新旧のファンにコルベットのデザインの未来を直接体験する機会を提供する。
シボレーのエグゼクティブ・デザインディレクターであるフィル・ザック氏は、次のように語っている。
「コルベットの造形は常に表現力豊かで未来志向でありながら、その一つひとつのフォルムやラインには、歴代モデルから受け継がれたルーツがあります。コルベットは憧れであり、文化であり、人々がシボレーで働きたいと思う理由です。『CX』と『CX.R ビジョン グランツーリスモ』は、シボレーデザインチームが市販車の制約の枠を超えて、創造性を発揮したことを示しています。このプロジェクトを通じて、コルベットに新たな価値を加え、今後のデザインの方向性を明確にしました」
関連情報:https://www.chevroletjapan.com/
構成/土屋嘉久