
グーグルがPixelの新モデル「Pixel 10」シリーズを発表。一般的なスマホの形状である、バータイプが、Pixel 10、Pixel 10 Pro、Pixel 10 Pro XLの3モデル、折りたたみモデルがPixel 10 Pro Foldで、計4モデル展開となる。
本記事では、形状が似ているPixel 10とPixel 10 Pro、Pixel 10 Pro XLにて、実機を使いながら、共通点や違いについてチェックしていく。
自社開発SoCの最新モデル「Google Tensor G5」を搭載
まずは共通点について。3モデルに加え、折りたたみモデルのPixel 10 Pro Foldにも、プロセッサーに「Google Tensor G5」が採用される。5世代目になる自社開発プロセッサーで、TSMCの3nmプロセスで設計。前モデルから、処理性能、AI性能などが向上している。
Pixelシリーズ内ではハイエンドモデルとして位置付けられる一方で、他社ハイエンドと比較すると、処理性能に劣る部分が見られるTensorシリーズだが、今回は処理性能の向上を実感できる。原神といったヘビーなゲームアプリの場合、短時間であれば最高画質でのプレイも快適。ただし、長時間プレイしていると、画面のカクつきや、本体の発熱が見られる。
とはいえ、Pixelシリーズの特徴は、ベンチマークテストなどで測れる純粋な処理性能ではなく、AIを含むグーグルのサービスを快適に、いち早く使える点だ。Tensor G5では、最新のGemini Nanoモデルが実行でき、多数のAI機能が利用できる。
新しいAI機能には、Gmail宛に届いたフライト情報を、電話時に表示するといった、利用シーンに合わせたアクションの提案をする「マジックサジェスト」、写真撮影時に、画角などのアドバイスをくれる「カメラコーチ」、電話時に、リアルタイムかつ、話者の声音に寄せた翻訳音声を生成する「マイボイス通訳」などがある。
マジックサジェストは、端末内やGoogleアカウントに紐付けられたデータから、関連するものを、通話時やメッセージを送るタイミングで提案してくれるという機能。スマホをエージェントのように扱える、AIらしい新機能であるが、長く使っていくことで、どんどん便利になっていくものでもあるため、別の機会に改めて使い勝手を紹介できればと思う。
すぐに使えるAI機能として面白いのが、カメラコーチというもの。カメラを被写体に向け、カメラコーチを起動すると、距離や画角に関するアドバイスを提示してくれる。AIが色味といった写真の仕上がりに作用するのはもはや当たり前になってきているが、構図まで提案してくれることで、カメラに詳しくない人であっても、気軽に映える写真が撮影できるようになる。
そのほかの共通点として、IP68の防塵防水性能に準拠し、nanoSIMとeSIM、もしくはeSIMとeSIMのデュアルSIM運用に対応。OS、セキュリティ、Pixel Dropsのアップデートには、7年間対応する。
無印、Proは使いやすいサイズ感、Pro XLは大画面を搭載
ここからは3モデルそれぞれの違いや特徴について見ていく。まずは本体サイズやディスプレイ性能についてだ。
本体サイズは、Pixel 10とPixel 10 Proが158.2×72×8.6mmとなる。質量はPixel 10が204g、Pixel 10 Proが207gで、若干の違いがあるものの、本体サイズは2モデルが共通。ぱっと見の印象はほぼ変わらないが、Pixel 10は光沢感のあるガラス素材、Pixel 10 Proはマットな質感のガラス素材が背面に採用されている。サイズがほぼ共通であるため、同じケースを使い回すこともできた。
一方、Pixel 10 Pro XLは162.8×76.6×8.5mm、質量232gで、近年のスマホとしても、大きく、重い。大画面モデル好きには嬉しい仕様だろうが、片手での操作は難しく、長時間使用していると、手首にストレスを感じるレベルだ。
ディスプレイサイズはPixel 10、Pixel 10 Proが6.3インチ、Pixel 10 Pro XLが6.8インチとなる。いずれも画面比率は20:9だが、Pixel 10はピーク輝度が3000ニト、リフレッシュレートが60Hz~120Hzなのに対し、Proモデルはピーク輝度3300ニトで、1~120Hzリフレッシュレートに対応する。
無印モデルとProモデルにて、ディスプレイ性能に若干の違いはあるが、使い比べても、極端に差を感じるほどではない。1Hzまでリフレッシュレートを下げられるProモデルの方が、バッテリー効率はいいと考えられるが、これも目に見えるほどの違いではないため、ディスプレイに関しては、「標準サイズか、XLサイズか」程度に捉えていいだろう。無印モデルとProモデルの違いは、どちらかというと、背面の仕上がりの方が大きいように感じる。
バッテリーやメモリ、ストレージにも違いがある
Pixel 10シリーズの大きな特徴が、Qi2規格に対応したワイヤレス充電が利用できる点だろう。いわゆるiPhoneのMagSafeのように、磁石を内蔵したワイヤレス充電機を、スマホ本体の背面にピタッと取り付けることで、従来のQi規格よりも高速で充電ができる。Pixel 10、Pixel 10 Proは最大15W、Pixel 10 Pro XLは、最大25Wでのワイヤレス充電が可能だ。
Qi2規格に対応することで、アクセサリの選択肢がより豊富になる。従来のAndroidスマホでは、Qi2、およびMagSafe充電器を使用するためには、対応するケースをつける必要があったが、Pixel 10シリーズは、ケースがなくても磁石が吸着するため、スマホをいわゆる「裸」で運用する人には、待望のQi2対応とも言える。筆者の手元では、iPhone用に使っていた充電スタンドや、背面に取り付けるカードケースなども装着できている。
グーグルとしては、Qi2に対応するアクセサリ類を「Pixelsnap」と名付け、ケースやリングなども展開している。PixelシリーズがQi2に対応することで、今後各メーカーから展開されるAndroidスマホにおいても、順次対応する可能性も考えられ、ケーブルを本体に差し込む時代は、昔のものとなるのかもしれないという期待感もある。
バッテリーに話を戻すと、Pixel 10には4970mAhm、Pixel 10 Proは4870mAh、Pixel 10 Pro XLは5200mAhが搭載される。数字上の違いはあるが、いずれもスペック上は30時間以上の駆動時間があるとされており、体感でも極端な違いは感じていない。
そのほか、メモリは無印モデルが12GB、Proモデルが16GBとなっている。ゲームアプリなどをプレイしていると、Proモデルの方が、安定感があり、発熱も少ない印象だが、チャットやカメラ、動画視聴といった使い方であれば、いずれも快適に動作する。
カメラはいずれも3眼だが性能はProシリーズがよりリッチに
背面カメラは、いずれも広角、超広角、望遠の3眼構成という意味では共通しているが、無印モデルとProモデルでは、仕様が異なる。
Pixel 10は、広角4800万画素(センサーサイズ1/2インチ)、超広角1300万画素(センサーサイズ1/3.1インチ)、望遠1080万画素(センサーサイズ1/3.2インチ)を搭載。無印モデルながら、光学5倍の望遠カメラを搭載しているのが、1つの特徴である。超解像ズームは、最大20倍に対応する。
Proモデル2機種は、広角5000万画素(センサーサイズ1/1.3インチ)、超広角4800万画素(センサーサイズ1/2.55インチ)、望遠4800万画素(センサーサイズ1/2.55インチ)の3眼構成。センサーサイズや画素数など、無印モデルよりも高水準な構成になる。
差は微妙なものだが、センサーサイズの大きなProモデルの方が、光を多く取り込むことで、明暗差のはっきりした写真に仕上がる印象。とはいえ、いずれもAIの補正を強く入れた、パキッとした写真に仕上がる。超広角カメラにおいても、色味のコンセプトは共通しており、歪みや白飛びも見られない、綺麗な写真が撮影できた。

最も違いが出るのはズーム撮影。無印モデルは最大20倍、Proモデルは最大100倍の超解像度ズームに対応しているが、それぞれ最大まで拡大して写真を撮影した際の、AIの補正力が凄まじい。AIで強力に補正をするため、物体を新しく生成しているという見方もできるが、パキッとした写真の仕上がりには驚かされる。無印モデルでも、補正はしっかりと入るが、100倍までズームできるProモデルは、多様な撮影シーンに応えられる。
満足度の高い無印モデルとリッチな構成のProモデル
Pixel 10シリーズの3モデルの大きな違いは、メモリ容量とカメラ性能になる。大画面ディスプレイが好みの場合は、Pixel 10 Pro XLの一択になるが、Pixel 10とPixel 10 Proでは、AI機能も含めて差分が非常に少ない。
最新のプロセッサを搭載し、AI機能が満遍なく使え、望遠カメラも追加されたPixel 10の完成度が非常に高いため、基本的には、無印モデルでも満足できる人がほとんどだと感じる。一方で、本体の質感や、より大容量のメモリ、リッチなカメラを求める場合は、Proモデルが有力候補になるだろう。もちろん、異なる使用感を求め、Pixel 10 Pro Foldの発売を待つのも、1つの選択肢だ。
取材・文/佐藤文彦