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ダイハツの新型「ムーヴ」が軽トールワゴンの主役であり続ける理由

2025.09.05

ダイハツ「ムーヴ」といえば、スズキ・ワゴンRと並び、軽トールワゴン市場を牽引してきた定番モデル。その最新型となる7代目が2025年6月に登場した。月販6000台を目標に掲げてのデビューだったが、発売からわずか1カ月で累計約3万台を販売。目標の5倍という驚異的なスタートを切り、その人気の健在ぶりを改めて示した。確かに新型効果はもちろんあるだろう。しかし2023年の認証不正問題後、初めての新モデルという「待望感」も大きかったはずだ。そして何より、実用性を磨き上げた新型ムーヴそのものの魅力がユーザーの心をつかんだのだろう。この高い支持を生み出した「徹底した実用性の追求」に迫ってみたい。

歴史を積み重ね、つねに軽トールワゴンをリードしてきた

1949年に「軽自動車規格」が誕生して以来、ボディサイズや排気量を拡大しながら進化してきた軽自動車。現在では「全長3.4m以下、全幅1.48m以下、全高2.0m以下、さらに排気量660cc以下、定員4名以下、貨物積載量350kg以下の4輪または3輪の自動車」という規格だ。当然、各基準において、少しでもオーバーすれば小型自動車となり、軽自動車ならではの税制をはじめとした優遇は受けられなくなる。

軽トールワゴンとは、その厳しき設定された軽自動車規格の中で、居住性を広げるために「高さ」を活かし、全高をおよそ1600~1700mm前後で設計したことで、ファミリー層などに受け入れられる居住性を確保して人気だ。

ここで現在、発売されている軽自動車の全長と全幅を見ると、ほとんどの軽自動車のサイズは規格いっぱいまで拡大され、違うのは全高だけという状況。居住性を向上させる最良の手段として全高2m以下という規制を守りながら“高さを伸ばす”ことになった結果とも言える。都市部の住宅が限られた建坪の中で階数を増やして、延べ床面積を稼ぐ手法と同じだと考えていいだろう。

そうした状況で1993年に登場したのがスズキ・ワゴンR。それまで全高が150cm前後の軽セダン(ハッチバックモデルも含む)が乗用タイプの中心だったが、そこに170cm近くの全高で乗員の頭上にゆとりを持たせたパッケージングで登場した軽トールワゴン。“室内の狭さ”という弱点を、全高を高くすることで克服したワゴンRは、これまでの常識を覆した軽自動車としてビッグヒットなった。

そして2年後、ライバルのダイハツからもトールワゴンの「ムーヴ」が投入されると良好な相乗効果によってマーケットは成長していった。こうしてこの2台が初期を牽引し、そこにホンダの「2代目ライフ」や三菱の「トッポBJ」なども参戦すると「軽トールワゴン」市場は活況を呈し、軽自動車のファミリーカーとして主流になったのだ。

少し時代を遡るが車高を高くして居住性を向上させるというアイデアは、1972年に登場した「ホンダ・ライフ・ステップバン」や、1990年登場の「三菱・ミニカトッポ」で実現されていた。だがどちらもブームを生み出すほどではなかった。一方でワゴンRやムーヴは、バブル経済崩壊も影響したのだろうか、効率化や経済性、コスパを求めた個性が時代に即していたことがヒットの要因になったかもしれない。

ただ、その後は、さらに居住性を追求し、全高170cm以上といった「スーパーハイトワゴン」が登場。そのキャビン内は身長140cmほどの子どもなら立ったまま着替えが出来るほどのゆとりと同時に、利便性を求めて使いやすいスライドドアを採用したこともあり、ファミリーカーの主役へと急成長し、現在に至っている。

一方で居住性に優れたスーパーハイトワゴンにも弱点はある。車高が高くなるほどに重量増や重心が高くなり、走りにおいてデメリットともなる。その点、トールワゴンは「必要十分な広さ」と「軽快な走り」とのバランスを保ったカテゴリーとして、根強い支持を維持し続けている。その象徴的な一台が今回の新型ムーヴだ。

ストレスフリーの“心地良さ”をたっぷりと味わえる

先代モデル(6代目)ムーヴは2023年7月に販売を終了していた。順当ならばその時点で7代目へとバトンが引き継がれるはずだったが、認証不正問題が発覚。その全容解明と再発防止策の実施が済むまで、フルモデルチェンジの発表は無期限延期となり、モデルの歴史は一時的に途切れた。それがようやく今回、晴れて7代目がデビューとなった。

トールワゴンの人気モデルだけに、市場には“渇望感”があったのだろうか、新型ムーヴは前述のように目標販売台数の5倍という驚異的なスタートを切った。

もちろんその理由には、軽トールワゴンの市場をリードしてきた人気モデルならではの仕上がりの良さがある。

もっとも特徴的で7代目の最大の売りがリアドアに「両側スライドドア」をライバルに先駆けて標準で備えたという点。スライドドアは狭い駐車スペースでも容易に開閉できるため、都市部での利用に非常に便利。乗り降りが楽で荷物の積み下ろしもしやすい。軽自動車市場では新車販売の実に6割がスライドドア付きになっているというほど。当然ながらハイトワゴンに採用しても違和感を抱くユーザーも少ない。スーパーハイトワゴンまでの高さは不要だが、スライドドアの利便性は欲しいというユーザーにとって、スライドドアを備えたムーヴは絶好の存在となる。

次に今回の新型ムーヴでは、従来モデルに用意されていた人気グレードの「ムーヴカスタム」を廃止した。光り物と呼ばれるメッキパーツや、押し出し感の強いフロントマスクを装備したモデルだが、近年はユーザーの嗜好が変化し、こうしたカスタム系モデルは販売台数が減ってきているそうだ(ダイハツ分析)。いわゆる「オラオラ系」などと呼ばれる目立ち系の仕様は人気が無くなっているようだ。メーカーとしてはムーヴをワンシルエット化することで可能となり、生産効率も向上し、結果的に価格を抑えることもできるはずだ。一方、そうした個性を求める一定数のユーザーにはディーラーオプションなどで対応していく戦略を採っている。

さらに走りにおいても最新プラットフォーム「DNGA」を採用したことで、乗り味がさらに良くなっている。ボディの高剛性と軽量化を両立し、路面のうねりや繋ぎ目によるショックをしなやかにいなしながら、色々な路面を駆け抜けてくれる。低速でのザラつきもなければ、妙な硬さもない。専用設計により、乗り心地と操縦安定性が向上しているのでコーナリングも実に安定。その乗り心地のよさは、軽自動車である事を忘れさせてくれる、なんとも心地いい走りなのだ。

その走りの上質さを担う660cc直列3気筒エンジンだが、NA(自然吸気)とターボエンジンが用意されている。穏やで自然な反応を見せるNAエンジンの仕上がりの良さは「普通に心地よく乗れる」という点で、軽自動車やコンパクトカーに相応しいパフォーマンスを見せてくれる。一方、新開発のD‑CVT(パワースプリット技術)が採用されているターボエンジンは、さすがにレスポンス良く、力強くスムーズな加速と高速走行時のゆとりある走りを実現してくれる。その上で燃費効率の良さを実現している。そのパフォーマンスのもちろん不満はないが、軽自動車のハイトワゴンに似合っているのは「NAエンジンかなぁ」と感じた。

走り込むほどに作り込みの良さを感じる走りは、スマートアシストなどの先進安全装備の与えられていて安心感も高い。室内作り込みにもチープ感はなく、ゆったりとして居心地の空間を提供してくれる。さり気ない日常の中では「クルマはこれで十分だよ」と感じさせてくれるのだ。1時間ほどの試乗を終えると、価格以上の完成度に驚かされる。高級車ではないが、日常の足としての安心感と満足感が詰まっている7代目ムーヴ。まさに「普通であることの心地よさ」を追求し尽くした一台といえる。

10年半ぶりのフルモデルチェンジだがハデさではなく、シンプルで落ち着きのあるデザインを採用。NAエンジンのスタイルは押し出し感の強さなどはないが、さりげないエクステリアデザインで飽きがこない。
細部までキッチリと作り込まれ安っぽさは感じないダッシュボード。。オーディオを低い位置に搭載した、操作性や視認性もいい。
Aピラーの傾斜とフロントシートのヒップポイントの位置を最適化することで、見晴らしの良さを実現。ホールド性も良く疲労感が少ないシート。
50:50の2分割式のリアシートはたっぷりとしたサイズ。前方への可倒とリクライニングに加え、24cmの前後スライド機構が備わる。
4人乗車時でもスペースを確保したラゲッジルーム。リアシートをもっとも後方にスライドさせた状態の床の前後長は29cm。
リアシートを前方に倒すと、完全なフラットではないものの段差の少ない前後長110cm、左右幅88cmの床の荷室が出現。
ターボのない自然吸気(NA)エンジンでもパワー不足を感じるシーンは少なかった。ターボエンジンが与えられるのは「RS」の1種類のみ。その他の「L」、「X」、「G」の3種類にはNAエンジンが搭載。
前方のドアは90度近くまで開き、リアドアがスライド式。前後のシートとも乗り降りが楽で使い勝手はかなりいい。

ダイハツ ムーヴX

車両本体価格:149万500円~(税込み)
全長×全幅×全高=3,395×1,475×1,655mm
ホイールベース:2,460mm
最小回転半径:4.4m
最低地上高:150mm
車両重量:860kg
駆動方式:前輪駆動
エンジン:水冷直列3気筒DOHC 658cc
最高出力:38kW(52PS)/6,900rpm
最大トルク:60N・m(6.1kgf・m)/3,600rpm
燃料消費率:22.6km/lkm(WLTCモード)

佐藤篤司(さとう・あつし)/男性週刊誌、男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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