
暑い日は自分の汗や臭いが気になって仕方がない……という人も多いのではないだろうか。
少しでも快適に過ごすために必須のアイテムといえば制汗剤。そんな制汗剤も、正しく使わないと期待するような効果は得られないばかりか、使い方によっては肌にダメージを与えかねないという。皮膚科医の中村淑子先生に正しい使い方と共に、気を付けるべきポイントを教えてもらおう。
制汗剤は汗や臭い対策で使用するアイテムだ。スプレー、ロールオン、クリームなどさまざまなタイプが売られている。
汗をかいてから使うのはNGって知ってた?

「使い方の注意点としては、まず使うタイミングを間違えないことです。スプレータイプで汗をかいた上からシューっとやったことがある人は少なくないのではないでしょうか。それはNGな使い方。制汗剤には汗腺の働きを抑え、汗が出ないようにする成分が含まれています。つまり、汗をかく前に使用するアイテムです。もし汗をかいた後に使いたいならば、乾いたタオルなどで汗を軽く拭いてから使用しましょう」
使う部位にも要注意!
汗を抑えたいからと、全身に使うと思わぬトラブルを招くこともあるという。
「臭いのもととなる菌の増殖を防ぐために、殺菌作用のある成分が含まれています。中でも塩化アルミニウムという成分は肌への刺激を与えやすく、肌トラブルに繋がる人がいます。特に顔は他の部位に比べて皮膚が薄いです。顔の汗を防ぎたいからと、制汗剤をむやみやたらにどこでも使うのは推奨できません。基本的には、手のひらや足の裏、脇や背中、前胸部など汗腺が多い部分に使用するアイテムだと思いましょう」
汗腺とくっついているのが皮脂腺だ。つまり、制汗剤を使って汗腺が抑えられるということは、皮脂の分泌も弱くなるという。皮脂の分泌が弱くなることを考えたうえでも、やはり制汗剤を使う部位は限定した方がいいそうだ。
「皮脂腺がそこまで多くない場所に使うと、乾燥を招きかねません。乾燥した肌というのは、外部からの影響でトラブルが起きやすい肌ということです。つまり、ちょっとした刺激で湿疹や痒みを起こしやすくなってしまいます。それこそ、乾燥した肌は、汗や皮脂の刺激でさえも痒くなるなんてこともあり得ます」
夏は肌トラブルが起きやすい!?

乾燥というと冬のイメージで、夏はピンとこないかもしれない。しかし、夏はシャワーの回数の多さや、クーラーの影響、ボディーシートなどで拭きすぎることによる刺激など、肌の乾燥に繋がる要因がたくさんあるのだ。
「実際に、夏場は湿疹や痒みで皮膚科を受診される方が増えます。制汗剤を使用した後、肌トラブルが起きたら遠慮なく医療機関を受診してください。少しピリピリして治まるレベルならば様子見でいいですが、痒みが出たり赤くなったりしてくるようであれば、その商品の使用は止め、皮膚科を受診してください」
含有する成分を細かくチェックして購入する人は少ないかもしれないが、もしなにかしら肌トラブルが起きたならば、同じ成分が入っている製品は形状が違っても使用するのは控えよう。
「周りの人がいいと薦めている商品でも、自分の肌に合わないことは考えられます。使うべき場所に適切なタイミングで使っていたとしても、含有する成分が合わないこともある。自分の肌と対話をしつつ、制汗剤を使用するようにしてください」
自分の汗や臭いに対する不安は、精神的なストレスにもなりかねない。そのため、対策をして心地よく過ごせることが一番だが、肌に負担がかかっていないかという視点を忘れないようにしたい。
【中村淑子先生プロフィール】
北朝霞メディカルクリニック院長。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。順天堂大学医学部附属順天堂医院などで研鑽を積み、現職。商品開発アドバイザリーなど、皮膚科領域で幅広く活動する。美容医療技術の進歩と普及に努め、地域社会への貢献を目指す。
文/田村菜津季