
物価高や将来不安により個人消費の落ち込みが続いている昨今、50代以上の女性はどのようにお金と向き合っているのだろうか。
ハルメク 生きかた上手研究所は、55~79歳のハルトモ(ハルメクのモニター組織)の女性510名を対象に「お金に関する意識・実態調査」をWEBアンケートにて実施したので、結果を紹介しよう。
「お金の使い方」への満足度は昨年より9ポイント低下!節約したい費目の上位も軒並み下落
「お金の使い方」の満足度は48.2%と24年に比べ9.3ポイント低下。特に60-64歳と70-74歳が大きく低下していた。
「これから節約・削減したい費目」の1位は昨年と同様「衣類・アクセサリー」だが、9.1ポイント低下。「お菓子・お酒などの嗜好品」「食料品」も低下し、「特にない」が増加している。
最近「無駄遣い」だと感じた支出では、ファッションアイテムの衝動買いのほか、似たようなものの購入、ネット通販やクレジットカードでの支払いで財布の紐がゆるむなどの声が挙がった。
■最近「無駄遣い」だと感じた支出(自由回答抜粋)
ファッションアイテムを衝動買い
・バーゲンで18万円位の洋服をお得だと思って購入したが、後でバーゲンという言葉に乗ってしまったなと思った(62歳)
・洋服が好きでかわいいデザインがあると買ってしまう。もう少し手持ちを考えて賢くお買い物をしなきゃと68歳になって反省(68歳)
似たようなもの・同じものを購入
・かごのバッグ。夏になると欲しくなるが、購入後同じようなものを持っていたことに気づいた(58歳)
・本が好きでよく買うが、同じものを二冊買ってしまい、しまったと思った(67歳)
ネット通販やクレジットカード払い
・週末の夜、ライブハウスに行くので派手なアロハシャツが着たくなり、ネットをあちこち見ているうちに3枚購入。着て行ったのは最初に気に入ってポチッとした商品。あとの2枚はメルカリ行きかも(64歳)
・クレジットカード支払いなので、つい余計なものを買ってしまう(70歳)
子や孫のため
・孫のためのおもちゃや洋服など、ちょっと使いすぎたかな(5万円)。与えすぎるのも良くないと反省。まだ1才7ヵ月で可愛い盛りなのでつい(65歳)
・冬物のバーゲンセールの服(2万円)。着るかどうか分からない娘のため(68歳)
本来不要だった支出
・iPadが故障したが、最初からAppleに持ち込まなかったため修理費が無駄払いになった(69歳)
・観劇チケット購入時、時間を間違えて多く支払うことになった(76歳)
現在の年金制度への満足度は、受給前に比べ受給中の方が約2倍高い
現在の年金制度への満足度を回答者全員に聞いたところ、受給中32.8%、受給前15.6%と約2倍の開きが見られた。「十分食べていける」などの実感が満足度につながっているようだ。
■年金制度への満足度の理由(受給者の自由回答抜粋)
・受給できるようになり、定期的に決まった額がもらえることのありがたみを感じる(69歳)
・若い時には、老後年金だけでは食べていけないのではないかと思っていた。現在年金だけで十分食べていけるし、3割ほど貯金もできている。その分決めた金額以上は使わないように気を付けている(77歳)
シニア世代も現金離れ!メインの決済手段は「クレジットカード」がトップで
普段お店で支払う際のメインの決済手段は「クレジットカード」が46.4%で最多。「現金」27.9%を大きく上回った。
普段意識して貯めているポイントの1位は「楽天ポイント」で、唯一4割を超えた。9割以上が何らかのポイントを貯めている。
ポイントを貯めるためにしていることとして、「現金ではなくクレジットカードなどで支払う」が半数を超えたほか、「できるだけ同じ店で買い物する」「ポイントが多く貯まる日・期間に買い物する」などが挙がっていた。
「お金の守り方・増やし方」の満足度は32.7%と昨年から5.1ポイント低下した。特に70代以上の低下が大きい。
回答者のうち、投資をしているのは約6割で昨年と同程度。運用・保有している商品は「NISA」が最も高く、昨年から10.8ポイント増加。一方、「国内株式」「投資信託」は5ポイント前後低下していた。
■50代以上女性の揺れる消費と投資、ハルメク 生きかた上手研究所 所長 梅津 順江氏の見解
お金の使い方に対する満足度が、前年比で9ポイント落ち込みました。背景には、物価高や将来不安といった構造的な課題の他、「節約疲れ」という心理的な要因も浮かび上がります。
「我慢の限界」「自分へのご褒美」といった声に象徴されるように、反動でつい無駄遣いしてしまう様子が見受けられました。
無駄遣いの領域は幅広く、アパレルや化粧品、食料品や日用雑貨、サプリメントや健康器具、家電、寝具、本などのモノ消費から、おでかけ先でのぜいたくな外食やタクシー代、孫や娘へのギフトなど、コト消費にまで及びます。
特に印象的だったのは、ネット通販やキャッシュレス決済の普及による「お金感覚のゆるみ」を指摘する声。自由記述には「ネット通販で似た服を買った」「クレカ払いだと、つい余計なものを買ってしまう」など、後悔や失敗談が数多く寄せられました。
こうした無駄遣いの裏には、節約一辺倒では息が詰まるというマインドや、自分のために使いたいという欲求が垣間見えます。その一方で、資産形成への関心も確実に高まっています。
新NISAの利用率は11ポイント増、iDeCoも現役世代で伸びており、堅実な長期投資志向が50代以上女性にも根づき始めているようです。
年金制度に関しても、受給者の満足度が高く、「実際に受け取ってみると、案外やっていける」といった生活実感がうかがえました。
加えて、キャッシュレス決済ではクレジットカードが現金を大きく上回り、9割以上が実践する「ポイ活」は生活の一部となりました。賢く使う工夫が当たり前になりつつあることを示しています。
節約の限界と、お金への自覚のあいだで揺れる50代以上の女性たち。彼女たちは今、倹約よりも「知恵」と「ちょっとした後悔」から学びつつ、自分らしいお金との付き合い方を模索しています。
調査概要
調査方法:WEBアンケート
調査対象・有効回答者数:55~79歳の全国のハルトモ(ハルメクのモニター組織)の女性510名
調査実施日:2025年6月24日(火)~6月30日(月)
出典:ハルメク 生きかた上手研究所調べ
※ 2024年調査は6月に実施、55~79歳の全国のハルトモの女性536名
※ 25年・24年調査とも、年齢5歳刻みで回答者数が均等になるよう補正している
調査主体:株式会社ハルメク・エイジマーケティング ハルメク 生きかた上手研究所
※ 調査結果のパーセンテージは、小数点以下第2位を四捨五入したため、総数と内訳の合計が一致しないことがある。
関連情報
https://biz.halmek.co.jp/column/
構成/Ara