
空気清浄機で高血圧改善?
血圧の高い人は、室内に空気清浄機を設置すると良いかもしれない。米コネチカット大学のDouglas Brugge氏らの研究によると、収縮期血圧(SBP)が120mmHg以上の人は空気清浄機の設置により血圧が有意に低下するという。詳細は、「Journal of the American College of Cardiology(JACC)」に8月6日掲載された。今回の研究は高速道路近くの居住民を対象に行われたが、研究者らによると、大気汚染レベルが比較的低い地域でも、空気清浄機により血圧が低下することも考えられるという。
論文の筆頭著者であるBrugge氏は、「高血圧は依然として、心血管疾患の最も重要な修正可能なリスク因子の一つである」と解説。そして、「家屋内に空気清浄機を設置するという簡単な対策が、心血管疾患リスクのある人の健康を守るのに役立つ可能性がこれまでにも示されてきているが、われわれの研究結果はその知見を支持する新たなエビデンスだ」と述べている。
Brugge氏らの研究には、高速道路に隣接している地域の住民から無作為に選ばれた成人154人(平均年齢41.1歳、女性59.7%、血圧118.8/76.5mmHg)が参加した。研究デザインは無作為化クロスオーバー法で、全体を2群に分け、1群には空気清浄機、他の1群はフィルターを取り除いた空気清浄機を家屋内に1カ月間設置してもらった。空気清浄機の外観はどちらも同じで、作動音や気流の速度なども同じであり、研究参加者が区別できないようにした。1カ月後、ウォッシュアウト期間(1カ月)をおいて割り付けを切り替え、再度1カ月間生活してもらった。
空気清浄機設置前後での血圧の変化を解析すると、ベースラインのSBPが120mmHg以上の参加者では、フィルターありの清浄機を設置した1カ月後のSBPが2.8mmHg有意に低下していた(P=0.03)。反対に、フィルターを取り除いた清浄機を設置した1カ月後のSBPは、非有意ながら0.2mmHg上昇し、両条件間のSBPの変動幅は3.0mmHgとなり有意差が示された(P=0.04)。なお、ベースラインのSBPが120mmHg未満の参加者では、条件間の有意差が認められなかった。また拡張期血圧に関しては、ベースライン値の高低にかかわらず条件間の有意差が認められなかった。
米ニューヨーク大学(NYU)グロスマン医学部のJonathan Newman氏が本論文に対する付随論評を寄せている。同氏は、「たとえ現在の米国の基準レベル以下の大気汚染であっても健康に有害であることは、膨大なエビデンスによって明らかにされている。われわれ医療従事者は、人々を啓発し、きれいな空気を守り、全ての国民の健康を向上させる政策を支持しなければならない」と述べている。
一方、JACCの編集長であるHarlan Krumholz氏は同誌発リリースの中で、「この研究は、室内の空気の質を少しでも改善すれば、一部の高血圧患者に好ましい影響を期待できることを示している。さらなる研究が必要ではあるが、これらの結果は、われわれが家庭内で吸う空気が心臓血管系の健康に影響を及ぼし得ることを示唆している」と記している。(HealthDay News 2025年8月12日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.jacc.org/doi/10.1016/j.jacc.2025.06.037
構成/DIME編集部
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