小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

筆と墨で妖怪を描く〝妖怪書家〟逢香さんが語る、止まらない妖怪愛

2025.08.31

古くから、日本の庶民文化として受容されてきた「妖怪」。

いまや、コミックやアニメが牽引役となって姿形を装い改め、お茶の間でも馴染み深い存在となっている。

他方、昔ながらの妖怪を書画で表現し、注目を集めているのが、奈良県在住の逢香(おうか)さんだ。

逢香さんは、自らを“妖怪書家”と称し、墨と筆で異形のモノを描く。ときにそれはユーモラスであり、ときにはスタイリッシュである。

多くの寺社・企業から依頼があり、多忙な日々を送っている逢香さんに、妖怪の魅力についてうかがった。

大学の授業で妖怪愛に覚醒

――そもそも、妖怪に興味を持ち始めたきっかけは何ですか?

実家が書道教室だったこともあり、書道は6歳から習い始めました。進学した教育大学の専攻も書道です。大学の授業で変体仮名を習った際、教材として『草双紙』が使われました。これは、江戸時代に出版された、挿絵入り読み物の総称です。

そのなかに、いろいろな妖怪の絵が載っているのを見て、惹き込まれました。「これはすごいな。しかも、すべて筆で描かれている」と、驚いたのがきっかけです。

当時、大学に行きながら、別のところで水墨画も学んでいて、「墨で妖怪を描いたらどうだろう」と思い、いろいろと描き始めました。

畑違いのテレビ局で活躍

――それで、妖怪の書画で身を立てようと考えたと?

いえ、まったく考えていなくて、卒業したらすぐに公立高校の書道教諭になりました。

ですが、1年ぐらいで辞めてしまいました。理由のひとつに、勤務先が特別支援学校で国語の授業を担当することとなり、筆を持つ機会があまりなかったからということがあります。

辞めてまもなく、テレビ局でグラフィックデザイナーとして雇われました。情報番組を担当して、コンピューターを使ってコーナーのタイトルを作ったりしました。生放送なので、時間に追われながら制作するのは、最初はきつかったですが、慣れてきたら楽しかったですね。

人生100年時代のトレンドにインスパイアされて描いた作品

妖怪たちの気持ちがわかる気がする

――妖怪をモチーフに描きたいという原動力はなんでしょうか?

妖怪は、実体のある生き物ではなくて、日本的な思想から派生したという点に魅力を感じています。

昔の人は、説明のつかない不思議なことを体験すると、「これは、こんな妖怪のせいだ」と心の中で具現化させました。また、災害に遭ったときに自然への畏怖を感じて、それを妖怪と結びつけました。

自分のもやもやした心を消化させるのに、妖怪はうってつけだったのです。

江戸時代に入ると妖怪はキャラ化して、神様になりきれなかった存在とか、社会ののけ者とか、表には出られないアンダーグラウンドの住人を表現するようになりました。それに、私は共感しました。私も、社会に馴染みきれない経験もあったりして、妖怪たちの気持ちもよくわかる気がして、励まされているような感じもあったのです。

江戸時代にも、そういう感情を持った人はいっぱいいたと思います。令和に生きる私も似た気持ちになっていることに何か意味があると思い、いろいろな創作をしようと考えたわけです。

ちなみに、幽霊は怖くて、実際にあったという怪談は聞けません。妖怪だったら大丈夫なのですけどね。

子ども向けのワークショップも開催

――依頼を受けて書画を描くだけでなく、一般社団法人モノモンを設立して、公共的な事業もなさっていますね。これはどのような活動でしょうか?

児童養護施設で墨アートの教室を定期的に開催し、墨を磨り、筆を使ってオリジナルの妖怪を生み出し書いてもらうワークショップを開いています。

しんどい気持ちのある人は、しんどい表情の妖怪を描く傾向があって、心情が絵に現れるのですね。でも、参加を重ねるうちに穏やかになってきて、柔和な表情の妖怪を描くようになるなど、変化があります。

内面の痛みを吐き出す、セラピー的な要素があるのではと思います。

子どもたちの描いた妖怪には名前や説明を考えてもらい、それを私が書き加えたコラボ作品を、東大寺などで展覧会を開催しオークション形式で販売しています。売れたら金額の半分は書いた子どもご本人に渡ります。展示をして多くの人に見てもらい、描いたものが売れるうれしさも、子どもたちに味わってもらいたいです。

ワークショップで描かれた妖怪たち

夢は、大人数が参画するアートプロジェクト

――毎日が多忙かと思いますが、今後の展望やチャレンジはありますか?

自分の作品の個展は、全国各地で開催したいと思っていますし、海外の方にも知っていただける機会もつくっていきたいですね。

それから、モノモンの活動を継続して妖怪や墨で描くことをテーマにして多くの人が参画する新しい墨アートプロジェクトを考えています。

■お話を伺った方:逢香(おうか)さん

奈良教育大学 書道科卒業後、しばらく教諭を務めたのちテレビ局へ転職。局内でグラフィックデザイナーを務めながら、書家としての活動を開始。妖怪ウォッチシリーズのキャラクターデザインや、寺社への揮毫の奉納など多彩に活躍。関西万博EXPOアリーナ・サテライトステージにて書画パフォーマンスも披露。NHK奈良の「逢香の華やぐ大和」にも出演。また、墨で書くこと面白さを広く伝えるため、一般社団法人モノモンを設立・運営している。
公式サイト:https://www.xxxouka.com
Instagram:https://www.instagram.com/ouka_yokai

取材・文/鈴木拓也

令和の日本は妖怪だらけ!?妖怪文化研究家が語る妖怪の最新事情

毎年夏がくると、納涼企画でお化け屋敷が開催されたり、怪談を特集した記事が組まれたりする。 そこに出てくるのは大半が、人間が死んで化けた「幽霊」だ。他方、古来より…

中高年の利用者も急増、仕事をしながら旅を満喫できるサービス「おてつたび」とは?

2019年に始まった「働き方改革」が契機となり、残業時間は減る一方、副業者数や有給取得率は増えるなど、1つの職場に縛られない働き方・生き方が定着しつつある。 こ…

生活費をもらいながらスキルアップ!?10月からスタートする「教育訓練休暇給付金」のおいしい話と落とし穴

厚生労働省は今年の10月、「教育訓練休暇給付金」を新設する。 既に「教育訓練給付金」という似た名称の制度があるが、新制度はどのような仕組みで、どんなメリット、注…

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2025年7月16日(水) 発売

DIME最新号は、誕生45周年のガンプラを大特集!歴史を振り返り、ガンプラが今後どのように進化していくのかを総力取材。プラモデル制作に役立つ〝赤い〟USBリューターの特別付録付き!

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第6091713号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。