アンダードッグ効果の基本的な概念や、定義について解説します。そのほか、バンドワゴン効果との違いや日常で目にする具体例、心理効果の活用方法も確認しましょう。
目次
アンダードッグ効果の基本概念と心理メカニズム
なぜ私たちは、劣勢なチームを自然と応援したくなるのでしょうか。この感情の背景には、『アンダードッグ効果』という心理現象が働いています。まずは、この効果の意味や心理メカニズムについて見ていきましょう。
■アンダードッグ効果の意味と定義
アンダードッグ効果とは、劣勢・不利な立場にある人物やチーム、組織などに対して、人々が同情・共感を抱き応援したくなる心理現象のことです。
例えば、スポーツで強いチームと弱いチームが試合をすることになったとき、皆が弱い側を応援したくなる現象を指します。
アンダードッグは、英語でも『劣勢な人物・チーム』を指す言葉です。アメリカでは、かつて闘犬用語としても使用されており、負けた闘犬を指す言葉としても知られています。
■人が弱者を応援したくなる心理的背景
困難な状況に置かれた人を応援したくなる心理の背後には、主に三つの要素が関係しています。
第一に、共感や同情の感情です。困難な状況にある人を見ると、過去の自分の体験を重ね、「その気持ちがよく分かる」「なんとか助けてあげたい」という感情が湧き上がります。
次に挙げられるのは、公平性を求める心理です。人間には、本能的に「不平等な状況を正したい」という心理が備わっています。強者に押される弱者を見て、その立場の改善を支援したくなるのです。
最後に、努力している姿勢への評価も重要です。弱い立場であっても懸命に挑戦を続けている様子は、アンダードッグ効果をより強め、多くの人の応援を集めます。
バンドワゴン効果との違いと対比関係

アンダードッグ効果を理解する上で欠かせないのが、まったく正反対の心理現象である『バンドワゴン効果』との関係性です。この二つの効果がどのような条件で発動し、どんな場面で使い分けられているのか、比較しながら解説していきます。
■バンドワゴン効果の基本概念
バンドワゴン効果とは、多数の人が選んでいる選択肢に対して、さらに多くの人が同調していく現象です。
経済学者ハーヴェイ・ライベンシュタインが名付けたこの効果は、『勝ち馬に乗る』『流行に乗る』という意味を持つバンドワゴン(楽隊車)が語源とされています。
皆が使っている・行列ができるといった状況は、消費者の購買意欲や信頼感を高めるバンドワゴン効果の典型的事例です。
選挙でも、支持率が高い候補に投票が集中する現象が見られます。これは、失敗回避と集団帰属欲求から生まれる自然な心理反応です。
■二つの効果の根本的な違い
アンダードッグ効果とバンドワゴン効果は、対極的な心理現象です。アンダードッグ効果は弱者への共感や応援、バンドワゴン効果は強者・多数派への安心感から選択が集中します。
両効果の違いは、「弱者を守る」「公平を保ちたい」といった道徳的欲求と、「失敗せず安心したい」「集団になじみたい」という自己保身欲求によるものです。
感情がどちらに傾くかは、場面や対象、個人の価値観によって大きく異なります。
身近な場面で見るアンダードッグ効果の具体例

アンダードッグ効果は、日常生活でどのように現れているのでしょうか。ここでは、主な具体例を三つ紹介します。
■スポーツ観戦での応援行動
スポーツ観戦では、アンダードッグ効果が分かりやすく現れる場面が多く見られます。
例えば、大相撲で大きな力士と小柄な力士が対戦したとき、観客が小柄な力士に声援を送るのは、アンダードッグ効果の一種です。
この現象が起こる背景には、観客の『一生懸命な姿への共感』があります。体格差や資金力の差といった、明らかなハンディキャップがありながらも、諦めずに立ち向かう選手・チームの姿勢が人々の心を動かすわけです。
また、学校の運動会で、転んでも最後まで走り切る子どもに拍手が起こるのも、アンダードッグ効果によるものといえます。
■選挙や政治における逆転現象
選挙では、劣勢と報道された候補者に対し、有権者が同情・共感から投票する、アンダードッグ効果が現れることがあります。
例えば、2016年のアメリカ大統領選挙では、ドナルド・トランプが自らをアンダードッグと位置付け、2024年にはカマラ・ハリスがアンダードッグと称して支持者にアピールをしました。
選挙においては報道や本人の発言、世論の雰囲気などの要素が、支持の集まり方に影響します。劣勢を強調することでアンダードッグ効果が発揮され、支持が増える場合もあります。
■ビジネスでの応用事例
ビジネスの現場では、企業が困難な状況を正直に公表することで、顧客からの応援を得るケースが増えています。
例えば、コロナ禍で客足が途絶えた飲食店が、SNSで現状を正直に発信すると、応援来店が増えたというケースがあります。
また、発注ミスで商品が大量に余ってしまった店舗が、その事実を素直に明かして支援を求めたところ、普段以上の売り上げを記録した事例もありました。
マーケティングでは、新人社員があえて『未熟さ』を前面に出し、成長プロセスを発信することで、消費者の「見守りたい」「応援したい」といった感情を引き出すことができます。
アンダードッグ効果の活用方法と注意点

アンダードッグ効果を理解できたところで、実際にどのように活用すればよいのでしょうか。最後に、アンダードッグ効果を正しく活用するための具体的な方法と、悪用についての注意点について解説していきます。
■アンダードッグ効果が働く条件と限界
アンダードッグ効果が最大限に発揮されるためには、いくつかの条件が必要です。
まず、対象者が単なる弱者ではなく、実力や魅力を兼ね備えていることが不可欠です。そうでなければ、人は応援したいとは思いません。
次に、物語性のあるシチュエーションも大切です。予算不足で戦う弱小チーム、いつも僅差で2位の候補者など、物語性やドラマチックな状況があると感情移入しやすくなり、アンダードッグ効果も高まります。
しかし、圧倒的な優勢候補や多数派支持が明白な状況ではバンドワゴン効果が強く、アンダードッグ効果は働きにくくなります。
■アンダードッグ効果を高める表現技法もある
アンダードッグ効果を意識的に引き出すには、弱さや困難を正直に語り、それを物語として発信する表現技法が非常に大切です。
創業時の挫折や競争での苦労など、普段は隠しがちな事実を開示することで、人間らしい魅力が伝わります。ポイントは、『努力する姿勢』を分かりやすく見せることです。
新商品開発の裏側をSNSで公開したり、失敗から学ぶ改善ストーリーを継続的に発信したりすることで、消費者の応援したくなる気持ちを呼び起こすことができます。
クラウドファンディングでも単に製品を売るのではなく、プロジェクトへの想いや背景を丁寧に伝えることが、支援者の心を動かします。
■悪用事例と倫理的な配慮
アンダードッグ効果を詐欺・不正で悪用する事例は、実際に社会問題として報道されています。
例えば、クラウドファンディングでは、虚偽の困窮状況を演出して支援金を騙し取るケースや、実際には発生していない危機を偽って宣伝に利用する行為がありました。
しかし、政治やビジネスでアンダードッグ効果をわざと演出すると、たとえ虚偽でなくても、演出が露呈すれば支援者や顧客からの信頼を失うリスクがあります。
意図的なアンダードッグ演出は多くはありませんが、詐欺や犯罪に悪用される事例もあるため注意が求められます。
アンダードッグ効果は応援や同情などから生まれる心理効果

弱者を応援したくなる心理現象であるアンダードッグ効果は、バンドワゴン効果とは正反対の性質を持ちます。スポーツや選挙、ビジネスシーンなど、身近な場面で頻繁に見られる現象です。
適切な条件と表現技法を理解すれば、効果的に活用できるでしょう。関連する心理効果と併せて理解することで、より深い洞察が得られます。
構成/編集部







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