7年間積み上げたコンテンツを生かした付加価値の創造にも邁進!
そうやって日本と海外を渡り歩きながら、サッカーに関わるネットワークを作り、ユーチューブ活動以外のビジネスに活用できるようになれば一石二鳥である。そこが那須の考える3つ目のポイント。ユーチューブで配信したコンテンツを企業側に提示して、パッケージで活用してもらうなど、登録数や再生数以外の価値を生み出すべく、彼は精力的に取り組んでいるのだ。
「僕のユーチューブ活動は、サッカーがつなげてくれた縁で成り立っています。そういう人々に感謝しつつ、新たなネットワークを作り、ビジネスモデルを確立させていくことが重要になりますね。
欧州ビッグクラブに目を向けると、タイやインドネシア、中東の富裕層がクラブ経営に参画しています。日本も今、国を挙げてインバウンド施策を推進しているんですから、食・文化・観光をパッケージにして、その中にサッカーも組み込んで、富裕層を招待するような企画があってもいい。彼らが日本サッカー界に投資してくれるような形に持っていければ、業界全体にとってもプラスですし、僕自身もサッカー界への恩返しができると思います」
新たなマネタイズができなければ、ユーチューバーは生き残れない!
那須はこう語っていたが、ここまで積み重ねてきたコンテンツを生かし、新たなマネタイズの仕組みを構築していかなければ、さらなる成長は見込めない。今年10月で44歳になる彼自身、この先もずっと体当たりのチーム潜入や体験入部、練習参加をメインにしていくのは難しいだろう。
だからこそ、「サッカー×文化」「サッカー×海外」といった異業種とのコラボレーションやイベント企画、海外との懸け橋になる活動などをより積極的に行っていくことが肝要なのである。
「ユーチューブで登録者数を増やし、再生数を伸ばす」という成功モデルが未来永劫、続くわけではない。那須は先駆者であるがゆえに、誰よりも厳しさをよく理解している。その彼が、これまでの経験値を生かしながら、どんなアクションを起こしていくのか。それを楽しみに待ちたいものである。(本文中敬称略)
取材・文/元川悦子
長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。