
日本の最も重要な研究課題に取り組むことを可能にする「富岳NEXT」
2025年8月22日、東京で開催された「富岳NEXT」開発体制始動記念式において、日本を代表する研究機関である理化学研究所のリーダーたちは世界的に有名なスーパーコンピューター「富岳」の後継機、「富岳NEXT」の構築に向けて富士通および NVIDIAとの国際連携でコラボレーションを開始することを発表した。
この契約は、初期設計段階で締結され、パートナー各社が連携してシステムのアーキテクチャを構築。地球システムのモデリングや自然災害に対するレジリエンス、創薬、先端製造など、日本の最も重要な研究課題に取り組むことを可能にするものだ。
この取り組みは単なる既存システムのアップグレードにとどまらず、日本が今日のAIを精力的に取り入れていることを象徴するとともに、世界中の研究者や企業に日本発の技術革新を披露することになる。
この記念式典では、理化学研究所理事長の五神真氏、理化学研究所計算科学研究センター長で、HPCにおける国際的な第一人者である松岡聡氏が開発主体として挨拶を行なった。
また、富士通の執行役員副社長 CTO、システムプラットフォーム担当であるヴィヴェック マハジャン (Vivek Mahajan) 氏が登壇し、日本のコンピューティング能力の向上における同社の役割を紹介した。
NVIDIA のハイパースケールおよびハイパフォーマンス コンピューティング担当バイス プレジデントのイアン バック(Ian Buck)氏も出席。共同設計のアプローチと、その結果生まれるプラットフォームが今後10年以上にわたるイノベーションの基盤となる仕組みについて説明した。
昨年、NVIDIAの創業者/CEOであるジェンスン フアン (Jensen Huang)氏 が東京を訪れた際、日本にとって今が、自国のAIを自国の土壌で自国のインフラを使って構築する絶好の機会であり、NVIDIAの最新テクノロジがそれを後押しできる、と呼びかけた。
富岳NEXT は、量子シミュレーション用の NVIDIA cuQuantum、データサイエンス向けの RAPIDS、高速推論のための NVIDIA TensorRT、大規模言語モデル開発向けの NVIDIA NeMo などの NVIDIA CUDA-X ライブラリから、科学や産業向けにカスタマイズされたその他のドメイン固有のSDKまで、NVIDIA のソフトウェア スタック全体を活用して、この流れに応えていく。
富岳で先駆的に開発されたイノベーションは、世界の計算プラットフォームへの青写真となり得るはずだ。
■システムの内容
富岳NEXT はシミュレーションとAIワークロードを融合させる、ハイブリッドなAI – HPCシステムになる。
本システムでは、CPUとして富士通の FUJITSU-MONAKA-X が採用され、NVIDIA の最新テクノロジである NVLink Fusion によってCPUとNVIDIA アーキテクチャが、他の技術では達成できない高帯域幅で接続することを基本設計の中で検討していく。
さらに、このシステムは、スピード、スケール、効率性を重視して構築される。
システムの活用分野
富岳NEXT は、仮説の生成、コードの作成、実験のシミュレーションなどの自動化をはじめとする、以下のような幅広いアプリケーションをサポートする。
<科学研究>
代替モデルと物理情報に基づくニューラル ネットワークによるシミュレーションを高速化する。
<製造>
AI を使用してシミュレーションから学習し、最適な設計をより迅速に生成する。
<地球システム モデリング>
災害への備えと予測を支援して、気象予報の精度を高める。
理化学研究所は、混合精度計算、継続的なベンチマーク、パフォーマンス最適化のためのツールを含むソフトウェア開発を主導していく。
富岳NEXT は単なる技術的なアップグレードではなく、日本の未来への戦略的投資でもある。文部科学省の支援を受けて、全国の大学、政府機関、業界パートナーにサービスを提供する。
富岳NEXT は、主権的なインフラ、グローバルな連携、そして科学分野におけるリーダーシップへの取り組みを基盤とした、日本のスーパーコンピューティングの新たな時代の幕開けを象徴するものだ。
関連情報
https://www.nvidia.com/ja-jp/
構成/清水眞希