
大屋根リングの設計思想に触れる
『地球の景色』
著/藤本壮介 エーディーエー・エディタ・トーキョー 3190円

著者は、大阪・関西万博の「大屋根リング」の設計と会場全体のデザインプロデューサーも務め世界で活躍する建築家である。そんな彼の思考の原点をたどれる1冊。2014年からコロナ禍を経た8年間、建築誌に連載されたエッセイが収録されており、世界を旅しながら、建築や都市、人と空間、自然との関係を見つめ直す視点が詰まっている。
建築を〝ただの建物〟ではなく「景色の一部」として捉える感性や、「良い建築を理解するには、自分の感受性も育てる必要がある」といった内省的な気づきにも富む。著者の「建築とは、世界にたゆたう音をつなぎ、美しく響かせること」という言葉には、大屋根リングの思想の源泉が表れており、仕事や人生にも通じるヒントもある。
万博をきっかけに藤本壮介に興味を持った人には、ぜひ手に取ってほしい。
2つのパビリオンの設計背景や意図を知る
『永山祐子作品集 建築から物語を紡ぐ』
著者/永山祐子 グラフィック社 3960円

万博建築を楽しむには、永山祐子は外せない。大阪・関西万博では、「ウーマンズパビリオン」と「パナソニック館」(カバーの写真)の2つのパビリオンを手がけており、本書ではその設計背景や意図が語られている。
「ウーマンズパビリオン」には、彼女が設計を担当した2020年ドバイ国際博覧会日本館のファサードが再利用されている。万博をまたいで建築素材が転用されるのは初の試みで、建築に時間的な連続性をもたせている点が興味深い。
一方の「パナソニック館」は、アルファ世代の子供たちを対象にした体験型パビリオン。変化し続ける子供たちの姿を、ピンクの生地(オーガンジー)で表現しており、実際に訪れると、海風に揺れるその光景が印象に残る。
「建築を体験の束として捉えている」という著者の言葉どおり、ぜひ現地で確かめてみてほしい。
隈研吾の建築を独自の視点で分類
『隈研吾建築図鑑』
著/宮沢 洋 日経BP 2640円

万博でマレーシア、カタール、ポルトガル、EARTH MARTの4つのパビリオンを手がける隈研吾。2020年東京五輪の新国立競技場を設計し、世界50か国以上で400超のプロジェクトを進める、日本を代表する建築家だ。
本書『隈研吾建築図鑑』では、そんな隈の建築を、建築ジャーナリストでありイラストレーターの宮沢 洋が、自らの筆で〝空気感〟まで丁寧に図解する。「びっくり系」「しっとり系」など独自の4分類で作品を紹介し、建築に詳しくない人も楽しめる構成が魅力。特に、時代も見た目も全く違う、初期作『M2』と新国立競技場が同じ「びっくり系」に分類されている点に、隈の思想の一貫性が垣間見える。ほかの建築家との比較も随所にちりばめられ、自然と建築知識も深まる。パビリオンを前に「これは何系?」と考えてみるのも楽しいはずだ。

〈選者〉
一級建築士・間取りのセカンドオピニオン
船渡 亮さん
3500件以上間取り診断を行ない「カズレーザーと学ぶ」(日本テレビ)など複数メディアにも出演。YouTubeチャンネル『アキラ先生の住まいの間取り教室』を配信中。著書に『この間取り、ここが問題です!』(講談社)
撮影/黒石あみ(書籍) 編集/寺田剛治