
2023年の〝生成AI元年〟から早2年。生成AIは研究段階から日常のツールへと移り変わる大きな転換期を迎えている。
東京都教育委員会が提供開始した生成AIサービス『都立AI』とは?
今年5月12日、東京都教育委員会は生成AIサービス『都立AI』の提供を開始。他自治体に先駆け、小・中・高等学校を含む全都立学校256校の児童生徒および教職員(約16万人)が生成AIを日常的に活用できる環境を整えたのだ。
生成AIを活用した教育現場における次世代型校務支援システムの導入は、2023年より文部科学省が旗振り役を務めてきた。そこで東京都教育庁は、両国高等学校など指定9校を皮切りに、授業や校務での効果的なAI活用方法を検証する「生成AI研究校事業」を実施。業務効率化や学習効果の向上が認められたことから本格導入へ踏み切ったという。コニカミノルタと提携した基盤構築で最重要視したのは、情報漏えいなどが生じない安心安全な専用環境だ。
「そのうえで『都立AI』を通して、専用メニューや有効なプロンプトといったノウハウなどを教師間で共有でき、かつ約16万人がストレスなく利用できること、AIモデルや機能を柔軟にグレードアップできることを開発要件としました」(東京都教育庁総務部デジタル推進課・中村伸也さん)
教師のスキルアップにも注力している。オンライン研修を月1回程度の頻度で開催し、講師陣にはコニカミノルタの開発チームも顔を揃えるという。他方で、今年度から大学入学共通テストに『情報Ⅰ』が追加され話題に。さらに今年1月、都は未来を生きる生徒が将来のキャリアの中で必要とする新分野のデジタル教材を開発するとした。都が見据える教育のビジョンは?
「学校の中で「生成AI」の取り扱いが高まると思いますが、次期学習指導要領は中央教育審議会で検討が始まったばかり。我々としては『都立AI』の成果と課題を分析しながら今後の手立てを検討する段階。まずはAI時代に必要な能力を必ず身に付けられるような環境づくりや授業を推進したいと考えています」(同)
【DIMEの読み】
『生成AI』は探求学習と相性がいい。いわゆる探究型入試は大学受験のトレンドだが、生徒ばかりではない。『生成AI』の積極的導入は、深刻な人材不足が叫ばれる教育現場でも一筋の光明となる。
国内企業のコニカミノルタが「都立AI」の生成AI基盤を構築
コニカノミルタはAI基盤構築・運用などの業務を一般入札で受注。最新のAI言語モデルに対応するほか、約16万人が円滑に利用できる大規模な専用環境を構築した。また『マイクロソフト 365』のアカウントとも連携しており、学校入学時に購入したタブレット端末を使えば、自宅でも「都立AI」を利用することができる。




取材・文・編集/渡辺和博