
〝令和の米騒動〟といわれる米不足が続き、ついには外国米や古古古米と言われる備蓄米まで登場。一体日本の米はどうなってしまうのか?
高温耐性品種が続々と開発され、米不足は再来年秋に解消します
そもそもなぜこんなに米不足が解消しないのだろうか。米穀専門店「隅田屋商店」の片山真一さんはこう指摘する。
「米不足が引き起こされたのは複合的な要因があります。まずは近年の猛暑の影響によって収穫量に悪影響を及ぼしていること。それに加えて昨年8月に南海トラフ地震の臨時情報が出た影響により、消費者がお米をまとめ買いする〝家庭内備蓄〟が急増しました。その影響で一時的な米不足に陥り、さらに報道が過熱して〝パニックバイ〟の状態が現在までずっと続いている状況です」
パニックバイはいずれ収まるかもしれないが、この先も猛暑は続きそうだ。となれば、米の収穫量の不足は解消しないのか?
「現在、米農家は高温に耐性がある品種の開発に力を入れています。代表的なのは新潟の『新之助』ですが、この先こういったお米がどんどん流通すれば、収穫量は解消されるはずです。ですから消費者の方々はコシヒカリなどの人気銘柄だけではなく、いろいろなお米を購入してほしい。それが定着すれば、来年の秋には落ち着きますよ」
ちなみにコシヒカリは高温に弱く、猛暑の影響をモロに受けやすい。我々消費者も米への意識改革が求められそうだ。

隅田屋商店 片山真一さん
1905年創業の米穀専門店オーナー。五ツ星お米マイスターの資格を取得し、お米とご飯の理解力を高める活動を展開する。
Data1|20年前より14%減!
日本人は確実に米を食べなくなっている!
主食用米の需要量の推移

Data2|18年で約3割減少!
お米を食べなくなっている世代は若者ではなく高齢者だった!
年齢階級別の米・米加工品の1人・1日当たり摂取量

Data3|米を炊くのは面倒くさい!?
いつの間にか、高齢者の主食は〝パン〟になっていた!!
60代の主食の年間支出金額(2人以上の世帯)※

高齢になると何をするにも億劫になる傾向にあるが、お米と比較するとパンは手間なく食べられるし、調理パンならおかずもいらない。実は手軽な食材ともいえる。
※家計調査における項目名の内容例示 すし(弁当):飲食店以外の持ち帰りのもの。冷凍は除く(例:にぎりずし、まきずし、いなりずし等)。他の麺類:即席麺・中華麺・パスタ、うどん・そばに分類されない麺類(例:ワンタンの皮、シューマイの皮、ギョーザの皮、春巻の皮、焼ビーフン、ビーフン等)。他の穀類:穀類を粉化したもの及び「米」「パン」「麺類」の項目に分類されない穀類。 その他の主食的調理食品:弁当、すし(弁当)、おにぎり・その他、調理パンに分類されない主食的調理食品。冷凍も含む。
Data4|米不足って、本当!?令和5年(2023年)は米の大不作!
しかし令和6(2024)年は平年並みに回復していた!!
米の生産量

和6年は米の生産量は確かに平年並みに回復。だが令和4年と5年の不作による米不足がまだ影響していることに加え、米を買い占める人も増加。そう簡単には解消しないようだ。
無視できない〝夏の猛暑〟の影響
なぜ令和6年の米の生産量は回復しているのに、米が不足しているのか? Data4の水稲作況指数は水田10a当たり平年収量に対する10a当たり収量の比率を示したものだが、注意すべき点は精米していない原料玄米の状態である点。片山さんによると、これまでは原料玄米を精米すれば9割は製品になったが、近年の夏の猛暑の影響で米粒がもろくなり、7割しか製品にならないことも多いという。つまりデータから見れば収穫量は足りているが、実際は不足が続いているのが現状だ。

取材・文/高山 惠 イラスト/フジノマ 編集/寺田剛治