
価格の高騰が続くいま、新築マンションは手が届きにくくなり、多くの人が「中古マンション」に目を向けている。
けれど、中古には中古ならではの不安もある。「築年数だけで判断していいの?」「古くても大丈夫?」と迷ってしまう人も少なくないだろう。
そこで注目したいのが、「長く住み続けられる価値あるマンション」の見極め方だ。
書籍『本当に価値のあるマンションの見つけ方』では、集合住宅の設計を数多く手がけてきた建築士たちが、“プロが本当に見るべき3つの視点”を紹介している。
これは中古マンションはもちろん、新築を検討する人にも通じる、“本質的な良し悪し”を見抜くチェックポイントだ。
(1) 心地よさ = 開放感のある暮らしやすい間取り
まず、見るべきは「間取り」だ。ただの広さではなく、風が通り抜ける設計か、プライバシーが確保されているか、家具が置きやすい形か――こうした設計が施されているマンションは、毎日の暮らしを快適におくることができる。たとえば、玄関前や廊下の視線が気にならない配置か。部屋の形が歪ではなく、整った四角形であるか。そうした小さな差が、日常のストレスを大きく変える。
「心地よさ」は数字では測れない。だからこそ、内覧時に“肌で感じて”見極めてほしいポイントだ。
(2) 長持ち =リフォーム・メンテナンスのしやすさ
中古マンションを選ぶなら、「将来にわたって住み続けられるか」は大きな判断材料になる。
とくにポイントとなるのは、水回りと配管類の更新性。水まわりの位置が移動できるか、給排水管やガス管の交換がしやすい構造かなどは、あとからリフォームしやすいかどうかを左右する。
さらに、段差をなくすなどのバリアフリー化に対応できるかも見逃せない。
家族構成の変化や高齢化を見越して、フレキシブルに対応できる構造かどうかが、“長く住める”マンションか否かの分かれ道になる。
(3) つながり = 地域や住民同士の関係性
最後のチェックポイントは「人とのつながり」だ。
住戸の中だけで完結する住まいよりも、街に開かれた設計や、住民同士が自然につながる共用スペースがあるほうが、トラブルも少なく、安心して住み続けられる。
こうした“開かれた設計”が、トラブルの少ない、居心地のよい暮らしにつながるのだ。
たとえば、地域住民も通れる道や、誰でも使えるベンチのある公開空地など。こうした設計が施されているマンションは街の一部として親しまれ、「地域に愛される建物」へと育っていく。
ここでひとつ実例を紹介したい。神奈川県大和市の「セ・パルレ中央林間」は、地域との共生をコンセプトに建てられたマンションだ。
住民だけでなく、近隣住民も通り抜けできる道や、ベンチのある公開空地を備え、地域の人々の散歩道としても活用されている。建物の外観も周囲の街並みに調和しており、地域とのつながりが自然と生まれる設計となっている。
こうした“街との接点”があることで、住民満足度が高く、中古市場でも価値が安定している。
実際にこのマンションは、住民満足度が高く、中古市場でも価値が安定している。
資産価値とは、「どれだけ気持ちよく住めるか」によって決まるということを、「セ・パルレ中央林間」は教えてくれる。
「住んで満足」「手放すときも困らない」マンションの共通点
紹介してきた3つの視点──心地よさ・長持ち・つながりは、どれも数字に表れにくいが、実際に住んでからの満足度や将来的な資産価値に直結するものだ。
築年数や立地、価格だけでは見抜けない“本当に良いマンション”を選ぶために、ぜひこの3つのチェックポイントを頭に入れて内覧してほしい。
※本記事は、書籍『本当に価値のあるマンションの見つけ方』より、一部内容を抜粋・再構成したものです。
本書ではほかにも、住まい選びに役立つプロの視点や実例を多数紹介しています。
■著者
日建ハウジングシステムは、1970年に日建設計より分社・独立。大規模ニュータウンが誕生したマンション黎明期に設立されて以来、50年以上にわたり、集合住宅などの設計に豊富な知見を生かし、「暮らし」の仕組みづくりを通じて住関連分野で高い信頼を築いてきた。これまでに12万戸を超える集合住宅を手掛けており、都市集合住宅の企画・設計および調査研究に卓越した専門性を誇る。2025年4月には日建設計と合併し、より幅広い住宅提案を行っている。