今では希少になった見世物小屋の絵看板を展示
ここでようやく乾杯。「愛撫」と名付けられたアマレットジンジャーや、赤ワインにCBDカンナビジオールを配合した「女体列島改造」など、カクテルの名前もふるっている。下戸の真仲さんは、オレンジジュースにCBDカンナビジオールを入れたモクテル「未成熟」をチョイス。
世界的にも作品に囲まれて、お酒やお茶が飲める場はほとんどない。世界中の美術館を巡ってきた都築さんが、美術館を運営するなら絶対併設したかったのがバーだったという。
「茶と酒 わかめ」は様々な作品があるが、一番の大作は正面に飾られた見世物小屋の看板として使われていた絵だろう。
「見世物小屋の看板絵師として知られる志村静峯(せいほう)さんの手で、今から約70年前に描かれたものです。志村さんは全部想像、フリーハンドで描く。ゼロからここまで描けるのでアート的な価値は高いはずなのに、見下されている状況が今も続いています」(こんた女将)
見世物小屋は下世話な興行の印象が強いものの、見世物小屋があったからこそ、体に障がいを抱えている人や社会的弱者である女性が食べていけた側面もあると思う、とこんた女将は話す。
「旧優生保護法があった時代は障がいがあると、外出させてもらえないとか、施設に入れられたりだとかして、表に出られない。でも見世物小屋に入れば日本全国に行けたでしょうし、障がいのある人たち唯一の食い扶持だったようです。暮らしはひどかったかもしれないですが、選択肢はあったほうがいいですよね」(こんた女将)
「個人的によくないと思うのは、今の日本は、あったことをなかったことにするのが非常に多すぎること。国内でも時々春画展を開催していますけど、個人所蔵の作品を集めて行っていますよね。春画に関しては大英博物館の方がたくさん所蔵していたりする。春画や見世物小屋を価値のないものだと決めつけてアーカイブされてないっていうのは民族学的にも、損失じゃないですか」(こんた女将)
1972年のラブドール、ベルベットペインティングの絵画を飾るVIPルーム
1階にある、予約制・貸し切りのみで利用できるVIPルームで締めよう。
こちらは1500曲を収録したカラオケ設備があり、すべてがレーザーディスク。1980年~1990年代に隆盛を誇ったものの、現在では役割を終えてしまったレーザーディスクの、特にカラオケ映像は国立国会図書館にも収蔵されておらず、アーカイブがなされていない。そこで都築さんがワゴンセールなどで地道に買い集め、当時の映像を見ながら歌えるようになっている。
この部屋で最も気になるのは、奥の陳列棚にディスプレイされたラブドールだろう。
これは蝋人形の制作を手掛ける蝋プロの職人が1972年に手掛けたもの。老人に依頼されて作成したものの、老人が亡くなったあと、家族が引き取りを拒否したため、職人が引き取った経緯があるそうだ。
ここで少し気になっていたことを真仲さんに尋ねた。どうしてTENGA社に入社しようと思ったのか。
「子どもの頃は性に対するネガティブなイメージがあったんです。それが大学時代に雑誌で『iroha』というブランドを知り、おもしろそうな製品だな、と買いに走ったことがありました。実際に触ってみると、女性が女性のために作ったプロダクトだって伝わってきて。なぜか救われた気持ちになって、いつか『iroha』に関われたら嬉しいなって」(真仲さん)
愛社精神の強い真仲さんが紹介してくれたアイテムが「TENGA」と「iroha」のベストセラー「SVR(エスブイアーアール)」シリーズの「SVR+」。通常のSVRよりもパワーアップした振動が感じられる。
「1人でも2人でも使えるスマートバイブリングで、女性1人の時はワンハンドで持ち、女性器や胸元などのお好きなところに当てて振動を楽しみます。セックスの場合は男性器の根元にSVRを装着して女性器に挿入すると、女性側に振動が伝わっていつもと異なる刺激を感じられます」(真仲さん)
女性にもセルフプレジャーを楽しんでほしいと、提案してくれたのが「iroha petit(イロハ プチ)」。左の『CORAL』は水原希子さんがプロデュースしたことでも話題を呼んだ製品だ。
「ほぼ寒天のような素材で98%が水分の製品のためすごくみずみずしく、オーラルのような感覚が味わえます。夏は冷蔵庫で冷やしてから、冬はお風呂で温めながら使われる方もいらっしゃいます。燃えるゴミとして捨てられることもあって、女子会でのプレゼントで配っているという嬉しいお話を聞いたこともありますね」(真仲さん)
高齢者の性的欲求との向き合い方に関心があり、高齢者施設や病院で「TENGA」や「iroha」のプロダクトで何かお手伝いをしたいと話す真仲さんに「大道芸術館」の感想を求めた。
「無名の作家さんによる性的表現をしっかりと都築さんが掬い上げ、後世に伝えていくこととで見落とされがちだった性的文化の保存になっていますよね。こういった表現をされてきた方の積み重ねがあったからこそ、我々はプロダクトを作れているんだな、とセクシャルウェルネス業界に関わる者としてありがたかったです」(真仲さん)
2度、3度と何度も訪れたくなる不思議な魅力を放つ「大道芸術館」。埋もれてしまったアートを見に行ってはどうだろうか。
大道芸術館
https://museum-of-roadside-art.com/
住所/東京都墨田区向島5−28-4
営業時間/月~木曜17:00~23:00、金・土曜15:00~23:00
休館日/日曜、連休最終日
料金/月~木曜 見学のみの入館料¥2,000、席のチャージ代¥1,500+飲食代金(入館料含む)、金・土曜見学のみ入館料¥2,000、15:00~17:00入館料¥3,000(ドリンク¥1,000OFFチケット付き)、17:00~23:00お席のチャージ代¥1,500+飲食代金(入館料含む)
※「プレジャーアイテム」は株式会社TENGAの登録商標です
撮影/小倉雄一郎 取材・文/大柴悦子
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