
個人向け国債は、国が発行する元本保証付きの債券で、元本割れのリスクがなく最低金利保証がある、少額からの購入が可能といった点が魅力です。金利や満期までの期間に応じた3種類があります。安定運用を重視する人に適していますが、高いリターンは期待できません。
目次
「個人向け国債」という言葉は知っているものの、実際にどのようなものなのか、よくわからないという方も多いのではないでしょうか。個人向け国債とは、個人でも購入できる国が発行元の債券のことです。個人向け国債の特徴やメリット、向いている人のタイプを解説します。
個人向け国債とは

個人向け国債とは、国が発行し、原則として個人のみが購入できる債券のことです。少額から購入できることにくわえ、投資期間や金利変動リスクに応じて選べるなど、個人が購入しやすい点が魅力です。
参考:財務省「個人向け国債とは何ですか」
■そもそも国債とは
国債とは、国が発行元の債券のことです。債券は、国が必要な資金を得る目的で発行する「お金の借用書」であると考えるとよいでしょう。つまり債券を購入すると、国に資金を貸したことになります。
国へ預けた資金は、満期になれば元本が減ることなく戻り、その間には半年ごとに利息が支払われます。日本が経済的に安定している限り、元本が確実に戻る点が大きなメリットです。
■個人向け国債は3種類
個人向け国債は、以下のように3種類あります。
- 変動10年:半年ごとの利率見直し/10年満期
- 固定5年:利率が一定/5年満期
- 固定3年:利率が一定/3年満期
それぞれ満期までの期間と適用される利率が異なるため、自分の投資期間や金利変動への考え方に合わせて選択しましょう。
個人向け国債のメリット

個人向け国債の主なメリットは、以下の6点です。
- 元本割れのリスクがない
- 国が発行元だから安心
- 1万円から購入できる
- 換金しやすい
- 利息を年2回受け取れる
- 最低金利保証がある
各メリットについて解説します。
■元本割れのリスクがない
個人向け国債の大きな魅力として、満期まで保有した場合、元本割れのリスクがない点が挙げられます。たとえ経済環境や市場金利が変動しても、投資した金額は保証され、国が責任を持って元本を返還してくれるためです。
したがって、安定的に資産を運用したい人にとって、信頼性の高い金融商品といえるでしょう。
参考:財務省「個人向け国債とは??」
■国が発行元だから安心
国が発行元であるため、日本が破綻しない限り元本が保証されるという安心感の高さも、個人向け国債のメリットの1つです。元本や利子の支払いは国が責任を持って行うため、信頼できる投資先を探している方に適しています。
参考:財務省「個人向け国債とは??」
■1万円から購入できる
個人向け国債は、1万円から購入できる手軽さも魅力です。さらに1万円単位で増やせるため、自分のペースで無理なく始められます。まとまった資金がなくてもスタートできることから、はじめての資産運用にも向いています。
参考:財務省「個人向け国債とは??」
■換金しやすい
個人向け国債は、発行から1年以上経てば、1万円単位で中途換金が可能です。急な出費や環境の変化で資金が必要になった場合でも、国が買い取る形で換金できるため安心です。
市場で売却するわけではないため、元本割れの心配がほとんどありません。手続き後はおおむね3営業日程度で入金されるため、いざというときも、スムーズに資金を確保できる手段といえるでしょう。
参考:財務省「個人向け国債とは??」
■利息を年2回受け取れる
個人向け国債は、年2回、半年ごとに利息が支払われるのが特徴です。定期的に利息を受け取れることで、長期保有中も収益を実感しやすく、資産運用のモチベーション維持につながるでしょう。利息は国が責任を持って支払うため、安定した収入源として活用できます。
■最低金利保証がある
年率0.05%の最低金利が保証されることも、個人向け国債のメリットです。経済環境などの変化に伴い実勢金利が下がっても、利息がゼロになる心配はありません。
低金利時代でも確実に利息を得られる仕組みは、安定志向の投資家にとって大きな安心材料になるといえるでしょう。
参考:財務省「個人向け国債とは??」
個人向け国債のデメリット

多くのメリットがある個人向け国債ですが、いくつかのデメリットも存在します。主なデメリットは、以下のとおりです。
- 高いリターンは期待できない
- すぐに換金できない
- 中途換金すると受け取り利息が減る
それぞれの内容を解説します。
■高いリターンは期待できない
個人向け国債は安全性が高い反面、大きな利益は望みにくい商品です。日本は長い間、低金利政策を続けてきたため、国債の利率も低水準が続いています。
例えば100万円を利率0.05%で運用しても、年間の利息は税引前で約500円にとどまります。元本が多ければ利子も増えるものの、他の投資商品と比べると収益性は低めです。そのため、投資によって高いリターンを望む方には不向きといえるでしょう。
■すぐに換金できない
すぐに換金できない点も、個人向け国債のデメリットといえます。発行から1年間は原則として中途換金ができないため、とくに購入後1年未満のタイミングで急に資金が必要になっても、手元には戻ってこないことに注意しましょう。
購入する際は、少なくとも1年以上は使う予定のない余裕資金を充てることが重要です。
■中途換金すると受け取り利息が減る
個人向け国債は、中途換金すると受け取れる利息が減額されます。具体的には、「直近2回分の利子(税引前)×0.79685」を掛けた額が差し引かれる仕組みです。
もともと高い利回りではないため、中途換金するとほとんど資産が増えない結果になりかねません。
個人向け国債がおすすめな人

個人向け国債がおすすめな人の特徴は以下のとおりです。
- リスクを抑えて資産を運用したい人
- まずは低リスクで投資を始めてみたい人
- 将来的に資金が必要になる時期を把握できている人
- ペイオフで保護されない資金の安全な保管場所を探している人
個人向け国債は、元本保証や安定的な利息が魅力であるため、資産運用において安全性を重視する人や、低リスクで投資を始めてみたい人にとくにおすすめです。
また、購入後1年未満は換金できないことや、中途換金すると受け取り利息が減ることから、「資金が必要になるのはいつか」を予測できる人に適しています。
ペイオフとは、金融機関が破綻した場合に、預金保険機構が預金者に対して一定額の預金を払い戻す制度のことです。預金者1人あたり、元本1,000万円とその利息まで保護されます。
個人向け国債は元本が保証されていることから、ペイオフによって保護される1,000万円以外の資金の保管場所としても、検討する余地があるでしょう。
個人向け国債の選び方・購入方法

ここからは、個人向け国債の選び方と購入方法について解説します。これから購入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
■個人向け国債の選び方
3種類の個人向け国債からどれを購入しようか迷っている場合は、金利動向と自身の運用スタイルを基準に考えるとよいでしょう。
今後、金利が上昇すると考えているなら、半年ごとに利率が見直される「変動10年」がおすすめです。実勢金利が上がれば適用利息も上昇し、恩恵を受けられるでしょう。仮に金利が下がったとしても、最低0.05%は保証されます。
一方、「固定5年」「固定3年」は満期まで利率が一定のため、将来の収益を予測しやすいことが魅力です。リスク許容度や資金計画に合わせて選ぶと後悔せずに済むはずです。
個人向け国債を購入した際の利息額や中途換金した際の影響を具体的にイメージしたい方は、財務省が公開している「個人向け国債お試しシミュレーション」を活用してみましょう。
参考:財務省「2時限 「試す」個人向け国債お試しシミュレーション」
■個人向け国債の購入方法
個人向け国債の購入方法の流れは、以下のとおりです。
- 口座開設に必要な本人確認書類や印鑑を用意する
- 金融機関で口座を開設する
- 購入の申し込みを行う
購入できる金融機関は、証券会社・銀行・ゆうちょ銀行などさまざまです。はじめて国債を購入する場合は、国債専用口座を開設しなければなりません。口座の開設や維持に手数料が必要な金融機関もあるため、事前に問い合わせしておくとよいでしょう。
個人向け国債を活用して堅実な資産運用を始めよう

個人向け国債は、国が発行する元本保証つきの債券です。安全性が高く少額から購入できるため、投資経験が浅い方でも始めやすい点が魅力です。一方で高いリターンは期待しにくい点を押さえておく必要があるでしょう。
個人向け国債の仕組みを理解した上で、自分の資金計画に合った堅実な資産運用を始めましょう。
構成/河野 愛